目覚め
フレームについて一通り説明と簡単なメンテナンスを終えると途端にやることがなくなった。
体の調子もそこそこ復調しているので動きたくなってくる。
「昼食がてら外を散歩しないか?」
「いいけど、あんた体は大丈夫なの?」
俺は立ち上がり軽く跳ねてみせる。
「激しく動かなければ大丈夫そうだ」
「そう?じゃあお弁当をちゃちゃっと作っちゃうから30分後に家を出るわよ。着替えておきなさい」
「ああ。着替えておく」
俺はアクセリナが着せてくれていた寝間着を脱ぎ捨て、アクアが買って来た服を虚数庫から取り出し着替えた。
30分後…
アクセリナがキッチンからバスケットを抱えて出て来た。
「いっ行くわよ///」
恥ずかしそうに俺の腕に抱き付いてきた。
「お、おう」
腕!腕にふにゃわんとした感覚が!!
「お熱いわね二人とも!」「おっ、アクセリナ遂に番を見つけたか!」「あの男の子顔赤くなっちゃってかわいい~!」
道行くドリアード達ひやかされつつ精霊郷を歩く。
外は日の光で仄かに明るく、道端には光るキノコが胞子を振りまき道を照らしている。
「取りあえず公園広場に行って昼食にしましょう」
公園までの道のりを歩いていると
「アクセリナだー」「アクセリナ!」
と小さい精霊達が集まってきている。
暫くすると、いつしか大名行列のようになっていた。
「お前、大人気だな」
「いつもはこうではないのよ?人間と契りを結ぶっていうのは、木精霊にとってそれだけ大事で憧れなのよ。だから皆祝福してくれてるの」
アクセリナが幸せの絶頂みたいな雰囲気を醸し出しながら言う。
「さ、ついたわよ。ここで食べましょう?」
まわりには木が立ち並び、清浄な湖の畔という、かなりロマンチックなシチュエーションだが
「この衆人環視の中食べるのか?落ち着かないぞ」
「仕方ないじゃない。皆娯楽に飢えているのよ。とりあえず、はいあーん」
アクセリナがバスケットからサンドイッチを取りだし、俺に差し出してきた。
「おい、この状態でそれはきついぞ」
「おい兄ちゃんそれはねぇわ。よしアクセリナ任しとけ」
外野のやたら厳ついオヤッサンが何故か魔術を唱え始めた。
「大地に根を張るもの達よ 彼の者を戒めよ バインド」
えっ?なんか俺縛られているのですが?
オヤッサンがキランと歯を煌めかせながら、身を翻し立ち去っていった。
「ありがとオヤッサン!なんかあなた卑猥な縛り方されてない?まあいいわ口を開けなさい」
あれ俺、よく見ると亀っぽく縛られてね?回りの奥様方も頬を赤らめていらっしゃいますが?今晩は縄ね…ってやめたげて旦那さん病んじゃう。
くっかくなる上は魔術で脱出!!
「仄かなる火!」…?あれ発動しない。
「魔術は発動できないわよ。あなたまだ私が力を貸さないと、魔術が使えるような状態じゃないから。さ、大人しく口を開けなさい」
なんかアクセリナちゃんノリノリで肉食獣な感じの女王様みたいなんだけど。
アクセリナが再度食べろと催促してくる。
「あーん」
ぐ、一時だけだ我慢して食べて早く終わらせる。
「あーんっ、むぐむぐ」
「それでいいのよ」
アクセリナちゃん凄くいい笑顔してる。
何だこの敗北感?でもくやしい感じちゃうっ。
そうして奥様方にきゃーきゃー言われながら、ようやくサンドイッチを食べ終わった。winner俺!!
「次はアムリタね」
俺、敗者
「それは流石にやめて。恥ずかしくて死んじゃう」
俺、懇願
「しょうがないわねぇ。目隠ししてあげるからこれで恥ずかしくないでしょ?」
草の束が俺の目を覆い隠す。
もうお婿に行けない。
奥様方は何が始まるの?ときゃーきゃー騒ぎ立てている。
アクセリナが口にアムリタを含んだのだろう。外野が一気にヒートアップした。
そして、きゃーと死の宣告が響きわたる。
俺の唇を強引に舌で割り裂きアムリタを流しこんでくる。
あっあっだめぇーーー!
俺汚されちゃった…
その日は何故か店頭から荒縄が消え、夜の闇に男達の悲鳴が響きわたったという。