異変
アルムの冒険者ギルドには酒場が併設されており、日中でも夜通しのクエストから帰ってきた冒険者達に酒を提供していた。
そんな中
血だらけになった冒険者がギルドに駆け込んできた。
「おい!お前一体どうしたってんだ!!」
酒場で飲んでいた冒険者達が騒然とする。
「北部の湖で…大型の…蛇の魔物が出現…民間人にも被害…至急増援を頼む」
そこまで言い切るとばたりと冒険者は倒れた。
俺達は冒険者ギルドに向かっていた。
「お父さんがもうギルドマスターに話を通しているみたい。多分ランクは特例でCランク位になるんじゃないかなぁ」
「そのCランクは凄いのか?」
そうだなとアネッテ
「Cといえば1人で中型の魔物と戦えるくらいの強さで、高ランク冒険者の玄関口というところだ」
中央市場を横切り少し歩くと、周りより立派な2階建ての建物が見えてきた。
「お兄ちゃん、ここが冒険者ギルドだよ」
スティナが指を指し教えてくれる。
「マスター」
アクアが怪訝そうに眉をひそめた。
「ああ。血の匂いがする」
よく見れば門扉の地面に血が少量落ちている。
ギルドに入ると倒れている男が一人と、その周りに人が集まっていた。
「どうしたんだ?」
近くの男に声をかける。
「どうも北の蒼月湖に大型の魔物がでたらしい。この男がたった今駆け込んできて伝えてくれたんだ」
かなり血を流している。
「アクア」
「はい、マスター。ウォーターヒール」
倒れている男の出血が止まり、顔色が幾分かよくなってきた。
「これは一体何の騒ぎですか?」
犬耳…いや、狼耳の落ち着いた感じのする30代くらいの女性が冒険者を掻き分けてこちらに向かってくる。
「実は蒼月湖で大型の魔物がでたようなのです」
応急手当をしていたギルドの受付嬢か?狼耳の女性に報告する。
「貴方たちは?…レオンが言ってた子達ね?」
仮にも国王を呼び捨てにするこの女性は一体何者だろう?ギルドの受付嬢の上役ということは…
「あなたはここのギルドマスターさんですか?」
「ええ、私はセルマ。アルム冒険者ギルドのギルドマスターをしているわ」
「マスター、処置がおわりました」
アクアが治療を終え立ち上がる。
「あなたがアクアさん?この人を治療してくれたのね。ありがとうございます」
そう言い軽く頭を下げた。
「いえ、当然のことをしただけです」
アクアはそう言い、一歩身を引いた。
「アウロラ。緊急クエストの発行をお願い。内容は蒼月湖の調査と脅威の排除、受注制限はランクB以上のパーティ限定で」
セルマはアウロラという名らしい受付嬢にクエストの発行を命じた。
「さてと、ショウさん達に少し話があるの。上の私の執務室に来てくれる?」
そういい狼耳の女性は俺たちを先導するのだった。
「そこのソファに座ってくれる?」
「失礼します」
俺達はそう言いソファに腰かけた。
「レオンから話を聞いているわ。冒険者として登録しに来たのね?」
「はい。俺とここにいるアクア、アネッテ、スティナの全員分をお願いします」
俺がそう言うと既に用意していたのであろうカードを手渡してきた。
ショウ=アルム 暫定Bランク
アクア=アルム 暫定Bランク
アネッテ=アルム Cランク
スティナ=アルム Dランク
暫定B?暫定?それにBランクだと?
「ショウさん、アクアさん貴方達は特例としてBランクの権限を与えます」
「Bランクだと…ショウ、それはギルドの主力戦力として数えられるランクだぞ」
「でも暫定ってどういうことだろう」
スティナは首を傾げていた。
「それはいくらレオンが国王でも、実績のない貴方たちをギルドの高ランクするのは難しかったということよ。だから私が折衷案として提案したの。暫定Bランクとして扱い、実力が認められればBランクとして認めるとね」
「なるほどそれは最もだな。こちらとしてもいきなり高ランクっていうのは戸惑うしな」
「えっと、セルマさん?お父さんとどういう関係なの?」
それは俺も気になっていた。
「私?私はレオンのそうね…師匠みたいなものかしらねえ」
ちょっと待て。
あのライオンキングの年齢は知らないが40位だろう、それがこんな20代後半で通じそうな妙齢の師匠がいるとは思えないのだが…
「ふふっありがとね。私みたいなおばさんをそんなに若く見てくれて」
何歳なんだこの狼耳。
「まぁそんなことは置いておいて」
セルマさんの雰囲気が変わる。
「貴方達に指名依頼を出します」




