リゾート④ 魔力の味
「これからのことだけど怪我が治ったら大和に来て一緒に暮らさない?」
食事が終わり食後のお茶を楽しんでいたときに葵さんがそう切り出した。
「いつまでも無人島にいるわけにもいきませんし、むしろこちらからお願いするところでした。イグニスさんとの契約が終わってからでいいですか?」
「イグニスとの契約?なにそれ??」
「怪我が治るまで泊めて貰う代わりに魔力をイグニスさんに分け与えるという契約です」
「ショーと契約した。そういえば今日まだ貰ってない」
イグニスさんは立ち上がり僕の背後まで来ると上着を捲り上げた。
「え?」
何かに刺されたような傷をなぞるようにイグニスさんの舌が這い回る。
「「??!!」」
イレーネさんと葵さんは目を大きく見開き、固まってしまっていた。
「あの?こんなところでやるんですか?んぅ、ちょっとくすぐったいです」
「れー、ちゅっ、れーじゅるる。治療も兼ねてるから我慢する」
前にもおんなじようなやり取りをしたけれど、やっぱり恥ずかしいしくすぐったい。
「はぁっ、ちゅ、はあぁっ、美味しい、れー」
今美味しいって言った?本当にこれ治療になっているのだろうか?
「ちょっとぉぉおおおお!?なんてうらやま…駄目です!!イグニス離れなさい!!」
「ちゅ、ちゅ、れー、これは正当な対価であり治療行為。何も後ろめたいことなんかない。れー。ほら、もう傷が塞がりかけてる。これも治療の結果。れー」
「…精霊の貴方が夢中になるのが分かります。ちょっと失礼しますね」
イグニスさんが舐めまわして少しだけ傷から滲んだ血をぺろりとイレーネさんが舐めた。
「んっ、凄いっ魔力ぅぅ、はぁっ、これ、私たちの様な亜人にとってはっ甘露以外の何物ではないわっ、はあ、ここまでとは、ふぅ。特に私の様な龍人には…ふう、血に酔ってっ!しまうわ」
全身を真っ赤にさせて椅子に深く座りこみ息を整えている。
そんなに僕の魔力って美味しいのだろうか?
「そんなに?…ペロ、…お、お?!!!!!?ふぅ、ふぅっ。これは駄目よ駄目なのよ?沈まれ私っ!!
禁止!これ絶対禁止!!!!」
葵さんはイグニスさんを僕から引きはがした。
「けぷ、もうお腹一杯。もう一度寝るぅ~すうすう」
「寝ちゃった。イグニスあんたどれだけ吸って?うわ、お腹ぽんぽんになってるじゃない…それに比べ翔君は殆ど消耗していないわね…どこから突っ込めばいいのやら…傷は後…一週間もあれば全快するでしょう。一週間後に大和に向かいましょうか」
「一週間でいいのですか?ここには確か…バカンスで来たのでしょう?」
「元々この島には一週間程度しか滞在しない予定だったのよ。本来ならここから友好国のアルム精霊王国を視察して帰るつもりだったけど今回は見送るわ。さ、温泉に浸かったらお昼寝にしましょう?今日くらいはごろごろしてもいいんじゃないかしら」
次ちょっと時間とびます。




