リゾート④ ブランチ
暖かかく柔らかな感覚を感じて目が覚めた。
目の前には一面の肌色、というか葵さんの豊かな胸が押し付けられていた。
そして、僕の背中には魔力の気配からしてイグニスさんが抱きついているようだ。
昨夜は、確か…葵さんに泣くのを堪えていたところを見つかって…泣いちゃったんだっけか。
とくとくという、葵さんの心音と、呼吸音が僕の気持ちを落ち着かせる。
息を吸い込むと、ゼラニウムの優雅でいてどこか優しいような匂いが香り、胸のつかえが溶けて無くなるような感じがした。
「んぅ?、翔君起きた?」
「はい。昨夜はすみませんでした。その、泣いてしまって」
「いいのよ?葵さんはお姉ちゃんなんだから、翔君を一杯甘やかしていい権利があるの。ほら、ぎゅーー♪」
抱き締める力が少し強くなり、葵さんに密着するような体勢になる。
「あのっ?!」
「アオイ、ショーが困ってる」
騒がしさに目を覚ましたのか、イグニスさんがそうは言い…つつも、背中からの引き寄せる力が強くなる。
「ショー、安心する。私達が一緒にいるから寂しくない」
回転するような力が加えられ体が反転し、今度はイグニスさんの胸に迎え入れられた。
「あの、あ、ありがとうございます。その、本当に嬉しいです。あれ?っ…」
悲しくないのに涙が滲み出てきて今度はイグニスさんの服を濡らす。
「本当に嬉しいだけなんです。でも、もう少しだけっ…」
「今は泣き虫でもいい。安心して泣く」
お昼頃ようやく僕の泣き虫が引っ込み、ベッドから這い出すことができるようになった。
「あら、ショウ君起きたの?ご飯出来ているから食べてね」
どうやらイレーネさんが食事を作ってくれていたみたいだ。
食卓を見るとご飯に味噌汁、焼き魚に青物の小鉢と何処か日本の朝食を思わせるような献立であった。
それと端の方には謎のダークマターが入ったお皿がのってある。
僕の目線の先に気づいたイレーネさんがその正体を明かしてくれる。
「ああ、それ?それは…卵焼きでちょっと失敗しちゃってね。まあ、ほら、座ってね」
イレーネさんが、椅子を引いてくれた。
「すみません、ありがとうございます」
「ほらアオイさん達も食べましょう?ルイザさんは、もう外に出てしまっていますから」
いただきますをして、まずは味噌汁を箸でくるくるとかき混ぜ一口啜った。
お腹の中がポカリと暖まりほっと息をつく。
「イレーネさんのお料理とても美味しいです」
「そ、そう?じゃあ一杯食べてね」
次は…あの、卵焼きかな。
「あっ!それ…」
食感は、殻が入っているのかザリザリしていて、焼きすぎて真っ黒になっていたけど、味は砂糖が入っているのか甘口で美味しかった。
「うん、美味しいです」
「え?無理してない?美味しくなかったら出していいのよ?」
イレーネさんが心配しているけど、本当に美味しく感じられた。
「それ、イレーネが作ったんじゃないわよね?どうみても見た目がルイザのダークマターだもの」
「実はそうなのですけれど、…もぐ、あら、本当に美味しい。見た目と食感があれですけれど」
「多分ショーのことを思って作った。だから美味しい」
イレーネさんとルイザさんが作ってくれたご飯は、本当に美味しくて、嬉しかった。
モフが足りないぃ~




