リゾート③ 真実
元々適当だったタイトルがさらに適当に。
お腹いっぱいまで料理を詰め込まれ宴もたけなわ、聞きたかった事を聞くことにした。
「皆さん聞きたいことがあります」
「ん~何でも聞いてよ~んふふー♪」
「ここは僕の居た世界ではないのですね」
「「「「…」」」」
葵さんの腕に力がこもる。
「やっぱりそうでしたか…いえ、予想はついていましたから。皆さんもそんなに構えないでください。ちょ、ちょっと眠くなってきたのでお布団をお借りします。おやすみなさい」
皆が寝静まったであろう深夜の…2時くらいか、僕は浅瀬に足を付け寄せては引く波を見ていた。
多分、皆の表情を考えると、僕はもう帰ることができないのだろう。
「うっ」
眼の端に涙が浮かんでいるのを自覚して涙をこらえる。
「僕は泣かないんだ。相羽家の男は泣かないんだっ」
でも、もうお母さんにも、お父さんにも、お爺ちゃんにも一生会えないと思うとっ。
「つっ!!」
海水で顔を打ちぽろりと零れ落ちてしまった涙を洗い流す。
「ん、すーぅはぁー。ぐっうぅ」
洗い流しても洗い流しても零れ落ちてくる涙は僕の意志では留めることが出来なかった。
「すっぅうう、え?」
そっと僕を包み込む暖かな感覚。
「堪えなくてもいいのよ?思いっきり泣きなさい」
葵さんが僕を胸に抱きいれてくれていた。
よくよく気配を探ってみるとあちこちに魔力の反応がある。
どうやら皆が僕を心配して探しに来てくれていたみたいだ。
「いえっ、僕はっ、ぅううっ、うわあぁぁぁああああ!!!」
涙腺が決壊したように涙を生み出し続け、葵さんの着物を濡らしてしまう。
「すみませんすみません」
「いいのよほら一杯泣いちゃいなさい」
翔君が泣き疲れて寝てしまったので私はそっと彼を抱きかかえコテージの寝室に運び込み、ベッドに寝かしつける。
皆と翔君のことで話がしたかったのでベッドから離れようとすると、小さな手が私に行かないでと着物の端を掴んだ。
「ま、当然よね。まだこんなにも小さな子供が急に親から引き離されたら…ね。イグニス、アオイそれでどうするの?」
ルイザの言う通りだろう。翔君が何でもできて桁外れの存在だったとしても、まだほんの小さな子どもなのだ。
「私はショーを守る」
「守る…ね。ショウをずっとここで面倒を見るつもり?彼、人間の子よ?」
翔君にとって何が一番最善かを考える。
ここで一生を過ごすことが彼にとって一番良い事なのか…。いや多分違うでしょう。なら、人と私達が共生している大和になら居場所を作ってあげられるかもしれない。私にはその力がある。
「そうね。大和に連れて帰るというのはどうかしら?イグニスも来るわよね。まあ、翔君がここで暮らすのがいいっていうなら翔君の意志に従うけれど」
「行く」
「ま、それがベストかしらね。私とイレーネは立場上ヤマトに長期間居られないけど、しっかり面倒を見るのよ」
「当然、わかっているわ」
私とイグニスは空が白み始めるまでずっと翔くんの頭をなで続け、彼が起きたときに寂しくないようにイグニスと二人で翔君を守るようにそっと抱きしめた。
そして完全に無視されるアクア達の明日はどっちだ。




