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機甲魔術師の異世界転移  作者: タングステン風味
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夜があけて

俺は体に掛けられていたシーツを体の上からどかすと、大きく伸びをした。


テントを見回すと昨日のアクアとの酒盛りなど無かったのかの様に片付けられ、テントとシーツを片付ければ、すぐにでも出発できるようになっていた。


昨日の記憶を辿っていると、俺が起きたのに気づいたのかアクアがテントの中に入ってくる。


「おはようごさいます、マスター」


「ああ、おはよう」


よくみるとアクアは小さな包みを持っていた。


「その包みは?」


俺はアクアに問いかけると


「朝食をマスターと一緒に食べようと思って」


アクアは何故か微妙に固い雰囲気を漂わせながら、俺の対面に座る。


俺が昨日寝落ちしたのを怒っているのかと、戦々恐々としながら、アクアと一緒に朝食であるサンドイッチを静かに食べ始めた。


「彼女らは、あと1時間位したらこの国の王都アルムに出発するらしいです」


アクア急に今日の予定について説明しだした。


「アルムねぇ」


まだ頭が起ききっておらず適当に返事をする。


「今後の行動方針はどうなさるのですか?」


少し考えて俺は言った。


「とりあえず彼女らについていってこの世界のことを調べる」


どのような危険があるのかわからないまま、ドラゴンの様な魔物がいる世界を歩きまわるのは自殺行為だろう。


「彼女らは信用できそうですし、それで良いかと思います」


アクアが同意する。


「そのあと、生活基盤の確保と、弾薬を作るために必要な魔石の(パウダー)の確保」


俺が使っている銃器の弾薬は、ケースレス弾で弾頭くらいしか金属パーツを使っていない。


その弾頭すらも、燃費が少しばかり悪くなるなどの多少のデメリットに目をつむれば、排することができる。


魔石とは自然に存在しているマナが結晶化したもので、マナが濃い場所(自然が一杯ある場所)にできやすい。


この世界は地球と同じく大気にマナを含んでいるため、魔石がないこということは考えられない。


そういえばゴブリンやワイバーンなど魔物が大量にいるこの世界では、その死骸から魔石がとれるな。


「…元の世界に帰る方法は探さないのですか?」


「来れたのだから帰れる様な気がするが、恐らく1年2年の研究では無理だろうな」


俺は既に地球に帰ることをほとんど諦めていた。


「そうですか…」


アクアは少し俯く。


「で最後に狐耳と尻尾をモフモフ…」


アクアの背後にまたしても般若の面が浮かび上がりかけていた。


「食事中すみません、アクアさんはいらっしゃいますか?」


突然の来客に俺は言葉を切り、アクアは般若を引っ込める。


「どうぞ」


アクアが入室を許可した。


アネッテがテントの中に入ってきた。


「ショウさんとアクアさんを姫様がお呼びになっておられます」


俺は自然に彼女に答えた。


「すぐに行く」


アネッテが訝しげにこちらを見ながら


「いつ私の言葉がわかる様になったのですか?」


…………?


俺は自分が古代精霊語を喋っていることに今更ながらに気づいた。


アクアが何故かハッとしてこちらを見る。


「……不思議なこともあるものだな、現実は小説より奇なりともいうしな」


俺はアクアが「教授」の魔術を使った可能性に気がつきながらもそう答える。


「そうですか…まあコミュニケーションがとれるのは大変助かります」


アネッテはそう言いながら、俺とアクアを猫耳(お姫様らしい)のテントに案内するのだった。










俺たちはテントから這い出すと「送還」の魔術で私物のテントをしまう。


「いつみても便利な魔術ですね」


アネッテは評価した。


「色々制約も多いし、2畳分くらいしか容量もないからそこまででもないよ」


「ニジョウ?話の流れから察するに、そんなに物が入らないということですね」


アネッテは続ける


「そういえば昨日貸していただいた、細い剣は素晴らしい切れ味でしたね、東方にも同じような物があると聞いた覚えがあります」


少し興奮しながらアネッテが言った。


この人、刀剣フェチか?


「あれは太刀っていう切ることに特化した剣で、昨日の貸した剣の名前は凪っていう」


「ナギですか…不思議な響きですね」


そんな会話をしていると、周りより一際大きい天幕の前でアネッテが立ち止まる。


「姫様、ショウ様とアクア様をお連れしました」


「入って」


天幕の中から入室を促す言葉が聞こえた。


ついに猫耳とご対面だ失礼のないようにしないと。


俺はそう考え気合いをいれる。


アネッテが天幕を開いてくれる。







「騎士さまぁ!!」


瞬間、俺は合気の要領で弾丸のように飛び付いてきた猫耳を投げ飛ばすのであった。

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