疲労
文化祭…
リア充どもが盛り上がるイベント…
ま、リア充以外でも盛り上がる奴はいる。
しかし、今年の文化祭は最悪だ。
いや、実際はまだ迎えてない。
いや、迎えることはもうない。
俺のクラスが動画とステージをやることは早々と決めてあった。
内容も少しではあったが決まりだした。
その時の俺は考えが甘かった。
きっと、なんとかなる…
だって1ヶ月もある。
そう呑気に構えていた。
しかし、中間考査という大きなモンスターがいた。
文化部も他生徒もそして俺自身も文化祭どころでは無くなった。
進路も確定はしていたが、赤点だけは避けたい。
そんなこんなで文化祭のことは頭の隅っこに押しつぶされていったのだった。
そして、中間考査も終わり現実がやってくる。
動画と撮る上で必要なことを決める必要があった。
オープニングはどうするか?
じゃあ、エンディングは?
からの本編は?
内容は?
撮影日は?
編集方法は?
誰が出るの?
そういうことを決めていく必要があった。
そこで俺は文化部の人に相談をする。
「とりあえず、面白く…」
返ってきた言葉は予想通りだった。
その後、本編で何をやるのかを軽く説明をしてくれたがあまりにもつまらなく殆ど頭には残らなかった。
俺は愚痴った。
いつものメンバーに。
後は、担任や関わりのある先生にも…
そして、後輩にも…
さらにはTwitterでも暴走した。
そうでもしないとムカムカしてしまい、ヤバイことになりそうだった。
お陰で、周囲の人が本気で心配した。
それから、数日間は進展がなかった。
毎日、掃除の後には文化祭の準備時間が設けられているが誰も動こうとはしない。
俺といつメンの数人で作った編集部(主に動画編集を担当)でオープニングとエンディングの構成を考える。
しかし、そう簡単には意見はまとまらない。
そして、準備時間がすぎればそそくさと帰路につく生徒が殆ど。
編集部と数人だけ残るった。
もちろん、文化部も帰宅した。
そういう光景を見ると俺のイライラは増す一方だ。
最初っから期待はしていなかったがそれ以上に酷くてやはりイライラしてしまった。
時間が無駄に過ぎていくのを見ているとだんだんとやる気が無くなっていく。
動画編集を頼まれた時は、俺のスキルを活かすことができる絶好のチャンスだと思い正直うれしくて燃えていた。
これが、一人空ぶかし状態と気付いた。
そして、一気に冷めてしまいそうだ。
「このままじゃ…」
俺は一番星を見つめながらため息をついた。
何度も担任と掛け合い、なんとか動画撮影が前に進みだした。
とは言っても、文化祭まで後1周間しかない。
でも、前進しただけましかと自分に言い聞かせて作業にとりかかる。
俺ができるのは動画編集と撮影。
企画とかそういうのは得意じゃない。
俺は上の指示で動くしかできない。
しかし、撮影もグダグダだった。
文化部の連中がどういうふうに撮るかを考えているかと思っていた。
しかし、その期待は裏切られ全く考えていない。
お陰で撮影前に話し合い。
無駄な時間だ。
無駄すぎる時間だ。
そのせいで、1日に撮れたのは全体の10%にも満たない。
そして、時間が来るとすぐにみんな帰る。
部屋に残るのはいつメンのみ。
「どうなる…これ?」
俺は苦笑した。
もちろん、余裕などない。
土日に集まるという話もなく、俺は部活へ行く。
好きな卓球をすることと後輩をいじってストレス発散。
ヒドくてクズで最低な先輩だ。
でも、今はそうでもしないと俺がおかしくなりそう。
俺は思いっきり楽しみ、少しだけだがストレス発散につながった。
土日は編集はなんにもしなかった。
まず、素材がないから何もできないのだ。
また、月曜日がやってきた。
今週末には本番がある。
なのに全然終わっていない。
「今日からはガチらないと…」
俺は気を引き締めた。
さすがにみんなも危機感を持ちだしたのか動くようになった。
先週とはヤル気が違った。
俺もテンションが上がってきた。
ようやく文化祭らしくなってきた。
しかし、その全員のヤル気は文化部の連中が崩した。
奴らが何もしない。
話しあおうともしない。
なんか、仕事を放棄した感じだ。
「次どうすればいい?」
俺が聞く。
「さぁ。」
これの一点張り。
まるで、俺が何かをやらかして拗ねられてるかのように…
これじゃ、動画が間に合わないと思い俺が独断でどんどん進めた。
撮影ができる時間は限られているから学校ではとにかく編集。
撮影限界時間が来ると俺たちは帰路につく。
みんなは帰宅すれば終わり。
しかし、俺は違った。
どんどん撮るに連れて溜まった動画を編集していく。
4時に寝れればいいほうで、殆どが徹夜に近かった。
翌日の学校はもちろん死にそうなくらいに眠い。
でも、授業はまじめに受けないといけない。
キツイ…
無理だ…
限界だ…
死ぬ……
俺は心身共に限界が近づいていた。
その限界の中でも、徹夜で編集をした。
必死にがむしゃらに編集をこなす。
しかし、限界は限界。
俺は編集中の画面の映ったパソコンを付けたまま意識を失った。
目が覚めたのは文化祭当日の午前5時。
編集は終わっていない。
「あははぁ…ごめんねみんな…」
俺は泣きながら家を出た。
そのまま電車に乗り学校へと向かう。
ふらふらとはしていたが、なんとか着いた。
そのまま屋上に出向く。
朝の肌寒い風が俺を包む。
「完成できなかった…みんなに合わせる顔がない……。」
俺は涙が止まらない。
ドボドボと流れ出る。
いくら、そいつらのせいで撮影が進まなかったとしても未完成は未完成。
俺は悔しさと申し訳無さで押しつぶされる。
「もう…無理だ。」
俺は
ふらふらとした足取りで
屋上の端の方に
足を運び
足裏の半分ほどが地面を踏まなくなる。
下を見ると、いつもは車が止まっている場所が見える。
「あ、最後にラブライブしたかったな。」
刹那、俺は重力に逆らうことなく地面へと近づく。
そして、周囲に鈍い音が広がった。
その音を聞いたものは誰も居ない。
その後の文化祭がどうなったかは知らない。
知る気もない。




