第百十三話:首から下が埋まっている身長二十メートルのロボットの話
とある田舎町。
草原がどこまでも続いている。
金網でできた柵から百メートルほど内側に入った所に、数メートルの大きさのあるロボットの顔が二つ地面にあった。
頭のある周囲数メートルだけ、草がなく土がむきだしになっている。
「何あれ? 土からロボットの頭が生えてるの?」
近くを通りかかったレッカーの助手席から、マオが見ながら尋ねる。
「あれは昔々、遠くの海に浮かぶ島にあった石像を模した、ロボットの頭みたいね」
運転席に座るユキが、観光パンフレットをペラペラめくりながら言った。
「頭長いね。あ、そういえばさっきジュース買ったお店に、頭の長い人いたよ。そっくりさん?」
「……多分ちがうと思うから、次会ったとしても、そのことは言っちゃダメよ」
念のために、釘を刺しておく。
〈この町の観光名所なんだろ? 何で金網で近づけないようにしているんだろうな〉
レッカーが、金網の外側に設置されている、あのロボットの頭についての説明が書かれた石板を見る。
「この敷地が、軍が管理している所だからみたい」
〈軍? あれって戦闘用ロボットなのか?〉
「それは分からないけど、子供向けの説明には、『町の方をいつも見ているロボット二体は、夜な夜な地面から出てきて、町で悪いことをしている子がいないか、パトロールしているかもしれないぞ!』って書かれているわ」
すると、お姉ちゃんの言葉にマオが反応して、
「え、あのロボット、出てくるの?」
「夜になったら、悪い子を捕まえに行くようよ」
「じゃあ、悪いことする! そしたら出てきてくれるんでしょ?」
「え、そこは普通、悪いことするのはやめておこうってなるんじゃないの?」
「でっかいロボットに会いたいもん。お姉ちゃんも会いたい?」
「ううん、わたしは、ロボットに踏み潰されたらイヤだから、やめておく」
えー、とマオは口をとがらせた。
〈俺も遠慮しておこう。頭の大きさから計算して、身長は二十メートルほどありそうだから、踏まれたらひとたまりもないだろうからな〉
レッカーの車体が、少しだけブルルッと震えた。
そうして、ユキたちは次の町へと出発した。
その日の夜中、誰もいなくなって静まりかえった草原で、頭の周りの地面が動いて収納され、身長二十メートルほどのロボットがエレベーターでせりだしてきた。
頑強な造りの二体のロボットは、それぞれ反対の方角を向く。
金網が地面に仕舞われ、ロボットはその上を進み、町の外側をゆっくりと歩いていく。
次話をお楽しみに。




