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第四十五話:とある話1/とある話2

   『とある話1』

「わたしって生きているか死んでいるか、どっちかしら」

〈さあな。ロボットなんだから生きてはいない。ただ、動いているから死んでもいない〉

「答えになってないわ」

〈仕方ないだろ。ロボットに生き死にを求める方がおかしい〉

「そうね。わたし、どうかしちゃったみたい」

〈ああ、さっさと寝て頭をリセットするんだ〉

「ええ……」

〈……〉

「……」

〈ただ、マオのためなら俺は生きていると主張したい〉

「え?」

〈この子の家族である自分が死んだ存在だなんて思わない〉

「よく分からない」

〈お前はマオのために生きるのか、それとも違うのか〉

「それだけじゃないけど、そういう側面はあるわね」

〈じゃ、ユキはある意味生きていることになる〉

「わたしって、抽象的?」

〈その通りだ。だがお前だけじゃなく、だいたいの人間は人生にあいまいな指標を持って生きているものだ〉

「あなた、そういう考え方はどこで身につけたの? 本当にただのクレーン車?」

〈さあて、そいつはどうかな。もう夜も更けた。寝るぞ〉

「ええ、おやすみ」

〈ああ、おやすみ〉

「……」

〈……〉




   『とある話2』

「マオ―、行くよー」

 知らない女性の声で呼ばれ、マオは道端で振り返った。

 その女性は、マオとは別の方向にいる少女に顔を向けていた。

 すると、少女は女性の後を追って駆けていく。

「どうしたの、マオ?」

 手をつないでいた妹が立ち止まったため、ユキは尋ねる。

「呼ばれたのに、別の子が行っちゃった」

 マオは困惑した表情だ。

「あの子もあなたと同じ名前なのよ」

 ユキはそっと微笑む。

「同じ……名前……?」

「そうよ。同じ名前の子に会ったことないの?」

「マオって、あたしだけじゃない?」

「もちろん」

 うーんとうなりながら、マオは考えこむ。

 やがて、

「マオってすごい!」

 街の真ん中で、大声で言った。

「何がすごいの?」

 ユキはそっと尋ねる。

「だって、あたしの名前が広まってるってことでしょ? すごいよ」

 マオは鼻をふくらませ、顔を上気させている。

「いや、違うと思うけど……」

 さっきの少女は十歳くらいに見えた。

 ユキの声は聞こえていないらしく、マオはクスクスと笑っている。

「お姉ちゃん!」

「何?」

「あたしと同じ名前の人、探しに行こう!」

 マオはお姉ちゃんの手を引っ張って、先に歩き出した。

四十六話をお楽しみに

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