王国のお姫様
ある王国のお姫様のお話です
昔むかし、あるところに、大きな大きな王国がありました。
その王国には、女は皆、十五の歳になると、
森を挟んで向かいにある国へ嫁に行かねばならないという
古くからの決まりごとがありました。
そんな中、王国に生まれた一人娘のお姫様は、
王様や国中の民に大層可愛がられていましたが、
お姫様にとってそれは、気持ちのいいものではありませんでした。
それというのも、
城内でお姫様を見つけると、
国の民はすぐさま近寄ってきてお姫様の頬を撫でるのです。
小さな剣のおけいこも毎日まいにちありました。
外に出してもらえる事なども多くありませんでした
食事のしかたですら、誰かが見張っていたのです。
まいにちがたいくつで同じように思えたのでした。
それから幾年が過ぎ、
剣の稽古も、城から出す向かいの国の騎士団への伝令も、そして食事も、
一人でほとんど出来るまでに成長していました。
それでも、お姫様はやることは変わっていても、
毎日が同じことの繰り返しに思えたのでした。
それから更に月日は経っていきました。
そしてある日の朝、
部屋の窓から、空を見てはため息をつき、
川を見てはため息をつくお姫様の姿がありましたがその背後では、
嫁ぎの式の準備が着々と進められていました。
そう、そんなお姫様も明日には十五の歳を迎えるのです。
お姫様は、なにか思いついたように近くに居た兵士に言いました。
. もし、私が式に出なかったらどうなるの?と。
兵士はその問いに対して静かに囁きました。
.もし姫様が式にお出になられなければ、王様が悲しまれることでしょう。
それを聞いたお姫様に一つ考えが浮かんだのです。
それは、この王国を出て、自分の意思で生きてみたいという考えでした。
今の今まで父親である王様の言うとおりにしてきたお姫様は、
王国内をじっくり歩き回ったことも、
民がどんなものを食べているのかさえ分かってはいませんでした
なればこそ、父親が哀しむ顔などまったく想像出来なかったのです。
考えをまとめたお姫様は凛とした顔で兵士へ一言いいました。
.少しお花を摘みに行って来るので、私が良いと言うまでココを動かぬように。
伝令を送る顔と同じく凛としていたので、
兵士は命令を聞くべきだと判断し、
ハッと小さな声を出して敬礼をしたまま待機の体制になりました。
それを見たお姫様は、城をゆっくりと出ていき、
穏やかな風と静かな川の音を聞きながら川沿いを静かに歩いて行ったのでした
その後、お姫様が王国から居なくなったことで向かいの国との状態が悪くなり、
戦争へと発展することになるのは…また別のお話。
王国のお姫様を読んで頂きありがとうございます。