小さなアフリカ
なし
「ツル マサキ 素敵でしょ」
そういって、
氷見さんは、突然話し出した。
何を男の名。意味がわからない、そう思った。
まあ、私には彼がいる。
だからあんたなんか相手にしないのよ。
そういう防衛線が見え始めた。
しかしながら、
その発言を
くだらないと思いながらも
あざやかな手さばきに見とれる
そして、
それからものの5分もしないうちに
白と黄色のブーケが完成した
「この草はツルマサキっていうの
こうして、黄色と白のグラデーションに
まとまりをつけるのよ」
ツルマサキ
小さな葉、赤い茎。
つるのような草。
なんだこの事か。
何を言うのかと思いきや・・
ツルマサキ、寄せ植えの引き立てとして
いい味を出しているけなげなその草
葉の小さなアフリカの形をみながら
自分のようだな。そう思った。
氷見さんが作業が終わり
こちらに視線をよこす。
「さて、あなたのお名前は
何と言うのかしら?」
私の顔を見ても何も動じず
返答を待っている
そんな姿にこちらがかえってどぎまぎした。
小さな声で、
「上 武男です」
それしか言えなかった。
氷見さん、「えっなんですって」と
聞き直してから
「じゃあ、かみさんでいいのよね。
(氷見さん、ふと考えて)
しかしそれじゃあ、かみにさまをつけたら
かみさまねえ。
素敵じゃない。」
そういって、快活に笑った。
笑う姿をみながら
みんな今まで私のことをうえさまと
勘違いして呼んでいたのに
はじめて
自分の名前の言い方を
わかってくれたと思った。
しかしまあ、この教室
あの講師といい、このアシスタントといい
性別が逆転している。
なし




