表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/93

8-8 エリック・サーティーンは、サイバーサイジング社のことを――あまりにも、よく知りすぎていた。

社内の意思決定の流れ。

どの部署が何を担当し、どこで情報が滞り、誰の判断が最終的に通るのか。


警備体制の癖。

リムジンの運行時間。

「例外」として扱われている日常の動線。


そして何より――

アダソン夫妻が、どこまでを「人の判断」に任せ、どこからを「制度」に委ねようとしていたか。


それを、彼は理解していた。


いや、理解しようとしていた、というより、執着するほど観察していたと言った方が近い。


彼は“外側から眺めた者”ではない。

会社の内部構造を、自分のものにするように読み解いていた。

だからこそ、意思決定の癖も、情報が滞る場所も、誰の判断が最後に通るのかも――不自然なほど正確に把握していた。


その背景には、彼自身の仕事があった。


スマートサーティーン社の工場では、印刷機そのものは複数メーカー製だった。

だが、工程管理・進捗制御・承認フロー――

それらを束ねていたのは、サイバーサイジング社製のシステムだった。


✔ 基幹システム

✔ 制御ソフト

✔ 管理・承認フロー


それらはすべて、サイバーサイジング社の設計思想の上にあった。


重要なのは、そこだった。


エリックは、機械を支配したかったわけではない。

彼が欲しかったのは、「判断の流れ」だった。


印刷業務、梱包・発送業務、経理・売上管理の完全自動化――

彼の言う“自動化”とは、機械化のことではない。


❌ 印刷機をすべてサイバーサイジング社製にすること

⭕ 意思決定のルートを一本化すること


彼が求めていたのは、


・どの機械を使うか → 問題ではない

・誰が判断するか → そこがすべて


という世界だった。


だからこそ、彼は知っていた。


・制度化が進めば、自分の意見は通らなくなること

・兄弟への継承が完了すれば、交渉の余地は消えること

・そして、夫妻が“最後の緩衝材”であること


彼にとって夫妻は、尊敬の対象であると同時に、最後に説得できる存在でもあった。


だからこそ、彼は「交渉」という形を取った。

だがそれは、対話ではなかった。


彼の言葉は、次第に強さを帯びていった。

理解を求める口調ではなく、

正しさを押し通す口調へと変わっていった。


その時点で、彼の中ではすでに――

「譲る」という選択肢が消えかけていた。


それは対話ではなく、“自分の考えが正しいと証明される未来”を要求する言葉だった。


制度とは、誰かの正しさを保証しない。

だからこそ、彼は制度を嫌った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ