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15.外の世界へ――初期顧客と協力者、そして仕組み
数か月が過ぎる頃、二人の作業は「紙の中」から「外の世界」へ伸び始める。
初期顧客。技術協力先。信頼できるパートナー。
情報セキュリティとインフラは、単独では成立しない。
導入され、運用され、責任の所在が明確でなければならない。
アレックスは慎重に人を選び、アラクネアは慎重に約束の言葉を選んだ。
それと同時に、将来の世界展開を見据えた組織とガバナンスの設計が始まる。
会社が大きくなったとき、理念が“語られるだけの飾り”にならない構造が必要だった。
誰が判断し、誰が止め、誰が監査し、誰が説明するのか。
最初の規模のときには過剰に見えるほどの仕組みを、彼らは最初から置いた。
後で足すと、必ず歪むからだ。最初に置くしかない。
それは会社を大きくするためではなく、会社を歪ませないための設計だった。
そしてこの時点ではまだ、
「制度があれば人は止まる」という前提そのものが、
最大の誤算になることを、二人は知らなかった。




