前へ目次 次へ 51/93 10.辞表提出の朝――いつも通りの朝食 やがて、辞表を提出する朝が来る。アダソン宮殿の食卓には、いつもと同じ朝食が並んでいた。ジェイムズとマックは、まだ「今日」が何の日かを知らない。 アレックスはネクタイを整えながら言った。 「今日は、少し早く帰れるかもしれない」 ジェイムズが顔を上げる。 「ほんと?」 「うん」 それ以上は言わなかった。この日は親としてではなく、職務として区切る日だった。 “最後の日”という言葉を子どもに渡さない。 子どもに渡すのは、安心だけだ。 それが二人の家庭のルールだった。