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5.帰宅――寝顔を確かめる
車を降り、冷えた空気の中を静かに歩き、屋敷の扉を開ける。中は暖かく、薄暗い。廊下の奥から、子どもたちの寝息が聞こえる気がした。
二人は寝室へ行く前に、子ども部屋を覗いた。ベッドの毛布はきちんとかけられ、ジェイムズの腕は枕の上に投げ出され、マックは小さな手を握ったまま眠っている。使用人が残していった夜灯が、壁に柔らかな影を落としていた。
その寝顔を見た瞬間、二人の中で決意が別の重さを持つ。
これは理想ではない。責任だ。
そしてその責任は、誰かに分けられない。
だから起業になる。
転職では足りない。最後の判断が自分たちにない場所では、また“ねじ曲げ”が混ざる。ならば最初から、全部引き受ける。
二人は多くを語らなかった。語れば、決意が言葉に追い越されて崩れる気がした。ただ、短い眠りにつく。眠りは浅く、夢は見なかった。




