20. FBI見学と「ごっこ」の時間
子どもたちが四歳と二歳、あるいは五歳と三歳になった頃。
夫妻は何度か、子どもたちをFBIの職場に連れてきていた。
正式な見学ではない。
事件現場を見せるわけでもない。
ただ、「ここが、私たちの働く場所だよ」と、隠さずに見せるためだった。
ジェイムズは目が輝いた。
廊下の長さ、扉の重さ、人が静かに行き交う様子。
建物そのものが、彼にとって“物語”だった。
「ここで、なにしてるの?」
「考えたり、調べたり、守ったりする」
「ぼくも?」
「大きくなったら、選べる」
マックは少し違った。
床を見る。椅子の脚を見る。
人がどこで立ち止まり、どこで視線が切れるかを見る。
「ここ、あぶない?」
「よく気づいたな」
ジェイムズは“憧れる”。
マックは“確かめる”。
家に帰ると、二人は自然に遊び始めた。
FBIごっこ。
ジェイムズは指示を出す。
「こっちだよ」
「まもるんだ」
マックは椅子を動かす。
「ここ、かくれる」
「だいじょうぶ」
夫妻はそれを止めない。煽りもしない。
子どもの憧れを、仕事の誇示に変えない。
アラクネアが、ぽつりと言う。
「……憧れさせすぎていない?」
アレックスは首を振る。
「憧れはいい。縛らなければ」
その言葉は、子どもだけではなく、
自分たちにも向けられていた。
――では、次はどうする。
結婚という“区切り”から、家族という“現実”へ。
第2章は、ここで終わる。
次に来るのは、静かな地下駐車場から始まる、
もっと大きな区切りだ。
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