表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
3/93

代表取締役社長挨拶・プロローグ・第1章 あらすじ「全ての始まりと出会い」

【起】静けさの中で、世界に入る

物語は、フィラデルフィア郊外の公文書保管施設から始まる。廃墟となったサイバーサイジング社アメリカ本社を窓越しに望みながら、元内部関係者ダニエル・ロウは、散逸しかけた記録を整理している。

そこに残されているのは、創業者アダソン夫妻の歩みと、のちに世界を揺るがすことになる「サイバーサイジング・ショック」の断片である。

資料の中には、黄金期と後継準備期に実際に使われていた企業の公式の夫妻の連名による代表取締役社長挨拶も含まれている。「最高のITビジネスサービスをお届けする」という理念のもと、FBIでの経験を出発点に、技術と倫理を両立させながら企業を築いてきた軌跡が、整った言葉で記されている。

だが、ダニエルがここでたどろうとしているのは、その成功の記録ではない。正しかったはずの企業が、なぜ引き継げない形のまま完成して終わってしまったのか。その始まりを確かめるために、記録は一九八九年へとさかのぼっていく。


【承】同じ速度で立ち止まれる人間との出会い

地方支局からFBI本部へ転勤してきたアラクネア・ベネットは、成果と速度が求められる組織の中で、結論を急がず、記録と精度を優先する姿勢を崩さずにいた。

彼女の机の隅には、小さな赤い薔薇の苗が置かれている。特別な意味を与えられることもなく、ただ育てられている途中の命として、そこにある。

そんな静かな日々の中で、アラクネアはアレックス・アダソンと出会う。彼はその薔薇に気づき、過剰に踏み込むことなく、しかし確かに同じものを見ていた。

言葉を交わさなくても、アラクネアは、本部に来て初めて、自分と同じ速度で世界を見る人間がいることを知る。

やがて二人は、内部監査に関わる曖昧な案件を共有することになる。


【転】判断が試され、信頼が生まれる

その案件は、誰か一人を疑えば、早く終わるはずのものだった。組織にとって都合のよい結論も、すでに見えかけていた。

だがアラクネアは、記録があまりにも整いすぎていることに違和感を覚える。個人の悪意ではなく、構造そのものに歪みがあるのではないか。

その指摘は小さく、流れの中で消えても不思議ではなかった。

しかしアレックスは、結論を急ぐ流れを止める。彼は彼女を利用せず、成果のために切り捨てることもしなかった。判断を保留し、精度を優先するという選択を取る。

結果として、犯人は作られず、誰の人生も壊れなかった。

そのとき、二人のあいだに残ったものは、言葉ではなく、同じ判断を選び取ったという事実だった。


【結】恋になる前に、人生を共にできる判断が揃う

その後の関係は、静かに続いていく。急がず、飾らず、互いの孤独を無理に変えようとしない距離の中で、アラクネアは、アレックスが権威ではなく責任で生きている人間であることを知っていく。

世界はまだ大きくは変わっていない。だが、力だけでは守れない時代の気配が、少しずつ現れ始めていた。

やがてアレックスは、一〇八本の赤い薔薇とともにプロポーズする。それは感情を押し出すものではなく、これからも判断を共にするという、静かな誓約だった。

机の上で育てられていた薔薇は、ここで初めて意味を持つ。だがそれは象徴としてではなく、積み重ねられてきた時間の延長として、そこにある。


第1章は、まだ何も背負っていなかった二人が、同じ判断を選び取ることのできる関係になった、その瞬間の記録として、静かに閉じられる。

【修正版全体あらすじ字数 1388字】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ