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6.赤い薔薇のブーケと花婿のタキシード

ドレスを着終えたとき、使用人がブーケを運んできた。赤い薔薇。彼女が好きな色。彼女が机の隅で育て始めた、あの“急がせても咲かない時間”の色。

アラクネアはブーケを受け取った。香りが先に胸に入る。赤い薔薇の香りは、言葉より確実だった。

彼女は思った。

——私はこの花を、誰かに“見せるため”に持つんじゃない。守るために持つ。

ブーケのリボンは深い赤。結び目がきっちりしている。適当に結ばれたものではない。アレックスの“段取り”の匂いがした。


挿絵(By みてみん)


一方アレックスは紺のタキシードに身を包んでいた。華美ではない。だが線が正確で、無駄がない。


彼の同僚が言った。

「……お前、そんな顔できたんだな」


アレックスは短く答える。

「仕事じゃないからだ」


冗談ではない。彼は本当にそう思っている。

胸元には、赤とオレンジの薔薇の小さなブートニア。情熱と、信頼。

二つの色は、これから先の象徴になる。まだ会社は存在しない。だが未来は、もうここに置かれていた。


挿絵(By みてみん)

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