90年代が近づくにつれ、二人ははっきり気づき始めていた。
犯人はもう、現場に来ない。
情報は国境を越え、ひとりで国家を揺らす。
犯罪と事故とミスの境界は曖昧になり、
銃や力だけでは守れない世界へ進んでいる。
ならば、どこで止めるべきか。
“事件になる前”だ。
設計段階で。
情報の流れで。
人の判断と、組織の構造の中で。
だが、その「どこで」「どうやって」を、
彼らはまだ言葉にしていない。
ただ一つ、確かな感覚があった。
このまま同じ場所に立ち続けていては、
いずれ、守りたいものと守り方が噛み合わなくなる。
それはまだ決断ではない。
視線が、少し先へ伸び始めただけだった。
