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1.ヒロインが絡んでくるんですが。





「いったい、どういうことなの……?」



 アタシは教室の最後尾席で、頭を抱えて悶々としていた。

 このゲームをプレイしている際の視点は、基本的にシルヴィアのもの。そのため彼女の行動はある程度の予測ができるはずだった。エレオノーラの立場や行動を変えてしまえば、運命なんて容易に変えることができる、と。

 それなのに、さっきのアレはまったくの想定外だった。





「あ、あ……貴方は、シル――」

「はい、シルヴィアです! 嬉しいです、私を存じていただけるなんて!!」

「そ、そうね。貴方はたしかに、有名人ですもの」



 思わぬ接触にアタシはあからさまな動揺をしてしまうが、極力それを悟られないように咳払い一つ。わざとらしいほどに余裕綽々の態度を取って、そのように返答した。

 するとシルヴィアは、まさに太陽のような笑顔でこう続ける。



「そうなのですか!? 私なんてそんな、まだまだ未熟で……!」



 そのように謙遜しながらも、彼女はどこか嬉しそうだった。

 愛らしく照れてみせ、少し視線を逸らしながら軽く頬を掻いている。思わずそんなシルヴィアに見惚れてしまうが、アタシは必死に思考を巡らせて状況を整理した。

 まず、これは原作には存在しないイベント、ということ。

 どのルートを通ったとしても、そもそも現時点で二人が接触することはあり得なかった。それにもかかわらず何故か、彼女の方から接近してきたわけで。

 そうなったら、次に確かめるべきは『目的』だと思った。



「そ、それで? シルヴィアさんは、アタシに何の用かしら」



 口元を手で隠しながら、そのように訊ねる。

 すると彼女は、ハッとした様子になってこう言うのだった。



「あ、そうです! えっと、私はその、エレオノーラ様に伝えたいことがあって!」

「……伝えたい、こと?」

「そうです!」



 それにこちらが首を傾げると、シルヴィアは深呼吸を一つ。

 そして何やら、覚悟を決めた表情でこう言うのだった。



「私、その……エレオノーラ様のことを――」



 まさに、アタシの想定していない言葉を。



「――お、お慕い申し上げております!!」



 大勢の生徒が見守る講堂のど真ん中で。

 アタシはそんな彼女の『告白』を受けて、頭の中が真っ白になった。







 ――で、いまに至るわけなのだけど。



「いったい、何が起こっているのよ」



 改めて状況を確認して、アタシは頭をまた抱えてしまった。

 たしかにファーストコンタクトは違う形になったけど、だからといって『お慕い』なんて言葉が飛びだすなんて何事なの。ゲームのシルヴィアは入学三日目まで、エレオノーラの存在すら知らないはずだった。それだというのに、この世界の彼女はアタシを知っている……?



「い、いえ……まだ、慌てるような時間ではないわ」



 そう考えてアタシは一度、作戦を練り直そうと肩の力を抜いた。

 時刻はちょうどお昼ということもあるので、食事をしながらでも考えることにしよう。そう思っておもむろに席を立つと、何やら教室の外が騒がしい。

 クラスメイトたちが揃って廊下を見ており、口々になにか言っていた。

 いったい、何事だろう。

 そう思ったので、アタシも顔だけ出して廊下の様子を確認すると、



「………………」



 そこには、頬を赤らめたシルヴィアが立っていた。

 まさに待ち人きたらず、といった雰囲気。多くの生徒がその姿の異様さに、あれやこれやと憶測を立てていた。ある人は「好きな殿方を待っている」と言い、またある人は「友人を待っているのでは」と言っている。しかしアタシには、それが違うと思うに足る理由があった。


 彼女は間違いなく、アタシことエレオノーラを待っている。

 そして、手にしているのは――。



「……あっ、エレオノーラ様!」

「げ……!」



 ――と、そこに注目した直後。

 シルヴィアはアタシの視線に気付いたらしく、満面の笑みを浮かべるのだ。そして他の生徒には目もくれず、視線すらもまったく気にせず、こちらへ駆け寄ってくる。

 その上で、上目遣いにこう訊いてくるのだった。



「あ、あの……お昼、ご一緒してもよろしいですか……?」




 大抵の男性なら落とせるであろう、そんな表情で。



 


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