4.破壊神域
生成された大鎌は鮮血をそのまま固めたように紅く、宿る破壊の概念はこれまでの比にならない程であった。
「それは───」
「───『血壊鎌』」
魔法による武器生成。それは『宵の星剣』と同じ類のものだ。
「……わたくしは間接的に見ていただけに過ぎませんが、星闇神ガロンが使用した『宵の星剣』も、これと同じ存在───」
神々が己の権能を武具として具現化させたもの。
「これこそが『擬似神装』───界律神装であるその武器よりは劣った存在ですが、それでもなお強大な力を秘めている神々の武器ですわ」
「神々の……?」
他の神も所持しているのかとノアは考えるが、その思考はすぐに破棄する。
そんなことは今考えていても仕方ないのだから。
(血壊鎌か───)
ノアは現状、白雪の力を完全に引き出すことはできない。
世界の長い歴史で唯一の使用者といっても現段階ではまだ武器そのものの強さに対してノア本人が弱すぎるのが原因だ。
故に、今はまだノアの扱う白雪よりもリオエスタの扱う血壊鎌の方が強力だろう。
この空間が破壊を強化するというのもあり、破壊の力そのものを内包した血壊鎌の力が有利に働くことは言うまでもない。
それは今までノアに傾いていた武器のアドバンテージが完全に消失したことを意味していた。
(今の俺に勝てる部分があるとするなら、それは魔力や魔法を度外視した剣技、そして───虚無の権能)
まだ試してはいない。
破壊神相手に通用するかは未知数だが、三つの権能を合成した斬撃は第二界滅爪を切断してのけたのだ。
あの攻撃ならいくらリオエスタであろうとも簡単には防げまい。
なら何故ノアはそれを使わないのか。
(使わないんじゃない……使えないんだ。あの時は怒りと絶望で無我夢中に放った。今の心持ちじゃ全く同じものは再現できない)
できるとするならあれの劣化版。
「この空間は破壊を強化する───なら、破壊を使うのは効率的に考えて必須。そしてあれを使うなら虚無がなければ話にならない」
「一体何を……」
リオエスタはその斬撃を見ていない。
理の改変やグラエムの守護とタイミングが重なっていたため、それを知らない。
「お前は見てなかったみたいだが、俺だってまだ切り札はある。十全に使えるかどうかは……また別の話だがな」
ノアは『光の剣戟』を使った時よりもなお集中する。
違うのはその対象が白雪ではなく、己の魂の根幹だということ。
「ただ同時に使うだけでは再現できない。組み合わせろ……」
「……」
興味が湧いたのか、リオエスタはノアの準備を静かに待った。
そして───
「虚無、破壊、合牙───」
底の見えない虚無と圧倒的な破壊が同時に白雪に宿り、力の塊が渦を巻く。
爆発的な力に時空が歪み、ノアとリオエスタの間には修復不可能なレベルの亀裂が生じた。
それでも、ノアはその力を緩めることはない。
そしてその中心には───先程よりもなお強い光が見えた。
(───そうだ、この技、覚えている)
ノアは引き伸ばされた時空間の中で前世の記憶の一部を再度想起させる。
これは、かつてのノアが使っていた剣技に破壊の権能を宿らせた、今世のノアが改良した技。
「ッ!?『絶壊崩滅血流覇』ッ!」
ノアの放つ異質な覇気に、リオエスタの本能は警鐘を鳴らす。
故に彼女も本気でそれに対抗するために空中に鮮血を霧散させ、それを連鎖的に爆発させつつ破壊の覇気を放った。
己自身だけでなく、空間全域の攻撃を防ぐリオエスタ最強の防御。
それが『絶壊崩滅血流覇』なのだ。
そしてノアはそれを一瞥し───
「───『壊獄之太刀』」
その斬撃を放った。
不可視の刃は『絶壊崩滅血流覇』すら斬り裂き、光速に近い速度でリオエスタに迫る。
だがリオエスタもそれを予測しており、血壊鎌で左腕を斬り裂いて流血。
その血を前方で渦巻かせ、鮮血で盾を生成した。
「『鮮血壊盾』!」
簡易的ではあるものの、局所的な防御なら神の使う大魔法ですら完全に防御してのける鮮血の盾だ。
いくらノアの『壊獄之太刀』ですらそう易々と切断できるものではない。
『壊獄之太刀』と『鮮血壊盾』が接触し、破壊を増長させる空間が半壊する。
これ以上戦闘が長引けば空間が完全に壊れてしまうだろう。
「───ッ!」
衝突するのは破壊と破壊。
そこに込められた概念は衝突によって指数関数的に増大し、半壊したこの空間では許容できない程の力がリオエスタの眼前で渦巻いていた。
だが現状力は拮抗している。
概念としての強さが同等なのだ。
このままでは空間が崩壊しようとも決着はつかない。
「───お前、俺を忘れてないか?」
「なッ!?」
───そう、『壊獄之太刀』と『鮮血壊盾』だけなら。
ノアは今なお『壊獄之太刀』と衝突しているリオエスタに近づき、左腕を振り上げる。
「『光の剣戟』───」
再度、ノアは記憶を辿る。
追憶の権能まで行使し、己の魂の深層を視る。
そうして、そうして、そうして。
その刹那にも満たない僅かな時間で───
「───『黄昏之刃』」
かつての技を、放った。
「───ぁ」
ギリギリで拮抗していた『壊獄之太刀』と『鮮血壊盾』。
だがそれはほんの少しの要因で簡単に形勢が傾くということ。
そんな中『黄昏之刃』という圧倒的な剣の極みを受け、拮抗は一瞬にして崩れ去った。
光とも闇ともつかない色彩の刃は決して速くはない速度で迫るが、それでもそれは避けようがなかった。
魔法も権能も使ってはいないのに、神もその斬撃を躱すことができない。
色彩は認識できるし、刃が迫ってくることも解る。
それなのに、どうしても避けられない不可思議な一撃。
そしてそれは───リオエスタの左腕を斬り飛ばし、上半身と下半身を完全に切断した。
「───」
半壊した空間でどさりという身体が崩れ落ちる音が響く。
「───今のが、そうなのか」
『黄昏之刃』───それを使えたことに、ノアですら不思議に思った。
そもそも『光の剣戟』というのは単体の技ではなく、あくまでもその系統を指す。
魔法も権能もないのに刃に光が宿る。その現象とそれを引き起こす技の総称が『光の剣戟』なのだ。
そして『黄昏之刃』はその技の一つ。
単純な斬撃なのに、不可避の剣閃。
場合によっては空間や世界すら断ち斬ってしまう混沌の刃。
光どころか闇すら纏うそれは頑丈な神体ですら無抵抗に斬り裂いてしまう。
「ふふっ、ふふふふっ……」
だがやはりその程度で神は死なない。
「……どうせそうだとは思っていたが……こう見ると不気味なもんだな」
「わたくし達を人間の尺度で当てはめるのは大いに間違っていますわ」
今のリオエスタは左腕と下半身がない。
しかしそれでも生きている。
(今の俺にそんなことができるか……?)
否、できないだろう。
どれだけ強くなろうともノアはまだ人間。しかも傷を癒す手段は再生の権能ぐらいしかない。
死にはしないかもしれないが、すぐに戦える程度まで治療するというのは実質的に不可能であった。
「傷を破壊する───貴方様なら可能なはずですわ」
「……まさか」
よく見ればもうすでに血は流れていない。
上半身と下半身が切断されたのだ。そう簡単に塞がる傷ではない。
それなのに───
「傷を破壊、か……」
それは以前、ノアがガロンとの戦いでやった芸当に似ている。
『朱き終の呪い』で傷ついた身体を再生させるために、呪いに対して終焉の権能を使用したあれと根本的な使い方は同じなのだろう。
だが、決定的に違う点がある。
リオエスタは傷を破壊するどころか、失った左腕と下半身を再生させていっているのだ。
それもノアの持つ再生の権能を使うよりも、なお速く。
(破壊の権能しか持たないのにこの再生速度……まさかとは思うが、『斬られた』という事象そのものを破壊して……?)
再生の権能を持つ神は再生神レイシェルのみ。当然、失った肉体を再生させることができるのは彼女だけだ。
創造神アスティリアは創造の権能で欠損した肉体を創り直すことで似たような芸当は可能だが、それは厳密には再生というわけではない。
故に、破壊神であるリオエスタが肉体の再生をしている現状がおかしいのである。
「事象の破壊……半分しかない権能でどうやったらそんなことできるんだよ……」
「破壊の理解と技量、あとは慣れですわね」
たったそれだけで片付けてしまうリオエスタにノアは冷や汗をかく。
今のノアはリオエスタとほぼ同等と言ってもいい権限の破壊の権能を持っている。
故にリオエスタの使う技は全てノアにも可能であるはずなのだ。
だがノアにはそんなことをできるビジョンが見えなかった。
「……三億年だったか。お前が破壊神として生きてきた年数は」
「ええ」
それだけあればノアにも事象の破壊ができるようになるのだろうか。
「さて、今度はこちらから往きますわ」
その言葉と共に、リオエスタは血壊鎌を構えた。
(───来る!)
ノアがそう思った瞬間には、血壊鎌の切っ先がノアの真横にまで迫っていた。
「なッ!?」
どうにか『光の剣戟』を発動させた白雪でそれを振り払うが、ノアは想定外の動きに大きく焦っていた。
ノアはリオエスタを見ていた。
彼女がどう動くかを注視していたのだ。
故に、その攻撃が見えなかった。
(まさか……血の鎖で大鎌の持ち手と刃部分を繋げているのか!?)
攻撃した瞬間のリオエスタの持つ血壊鎌には刃部分が存在しておらず、鎌の持ち手部分、刃のついていない棒状のものしか持っていなかった。
そしてそこから細く繋がる紅い鮮血。
それはノアの右横にまで伸びており、そこに鎌の刃が存在していた。
その事実にノアは度肝を抜かれたが、ノアが本当に注意しなければならないのは───
(『光の剣戟』があってもこの衝撃……あいつは今、魔法を使ってもいないのに!)
血壊鎌には『壊撃』や『崩壊神撃』などの魔法は使用されていなかった。
それなのに『光の剣戟』を使用した白雪と同等の威力。
『光の剣戟』を発動させていなければたった一撃で押し切られた挙句、ノアの身体は破壊されていただろう。
(これが、本気の神の実力……!これでも俺に権能を与えたせいで弱体化しているはずなのに……!)
衝撃により僅かに体制が崩れたノアに、リオエスタは更に猛攻を仕掛ける。
「チィッ……!」
鎌の刃による斬撃、鎖部分を掴んでの持ち手部分による打撃、鎖そのものによる破壊の力を込められた拘束。
弱体化してもなお攻撃の一撃一撃が即死級。
しかも相殺するには最低でも『光の剣戟』が必要というおまけつき。
攻撃方法が切り替わり範囲も劇的に増加しただけでなく、卓越した技術によるトリッキーな攻撃方法による攻撃速度は素手に魔法を使用した状態よりも大幅に速い。
更に言うなら、ここから魔法を併用することで威力を上げることも可能だ。
(何だ……何なんだ、この攻撃はッ!?)
リオエスタの攻撃速度が加速し続ける。
当然それも厄介なのだが、ノアにとって一番の脅威はまた別にある。
(この攻撃……あまりにも先が読めない!)
攻撃方法は刃と持ち手、鎖の三種類。
それらがまるで触手のように空間を縦横無尽に駆け回り、攻撃が全てノアに収束していく。
更に血壊鎌は血で錬成された武器というのもまた厄介だ。
白雪のように絶対的な形状を持つのではなく、その本質はあくまでも血液。
そう、液体なのだ。
故に───
(持ち手、鎖、刃……その全てが連動しながら常にその形状や長さを変えながら刹那に数百以上もの攻撃。左腕と白雪一本じゃとても捌ききれない!)
液体であるが故に、一定の形状を持たない。
つまり、形や長さはリオエスタの意思次第。
思考を読むことができるわけではないノアにとって、それは厄介などという次元を通り越して最早死を与えるための処刑器具のようなものだった。
この攻撃頻度では『光の剣戟』ですらも百回に一度使えれば良い程度。
それ以外は全て躱さなければ死は目前だ。
この分では右腕があり、魂が万全の状態だったとしても結果は変わらなかっただろう。
それだけ、ノアとリオエスタの実力は乖離している。
そして───
(ガロンは……これ以上の化け物と戦っていたのか)
これまで神々が殺せていないということは、ヴァディアはそれ以上に強いはずだ。
何せヴァディアはデュランのように存在を隠蔽していたり、ラフィナのように表に出てこなかったわけではないのだから。
もし神々がヴァディアよりも強かったなら、きっとすでに倒しているはずだ。
しかしそんなことは起きていない。
単純に神々よりもヴァディアの方が強かったから。
そしてそんなヴァディアと互角に戦っていたガロンは……
「まだまだ、上げますわよ!」
「ぐッ!?」
元々速かった攻撃速度が更に上がる。
そしてそれと同時に起きる変化。
(まさか、概念までも───?)
ノアは死がより近くなったことを感じる。
更に『光の剣戟』で弾いた攻撃が重くなっていることにも。
『光の剣戟』は物質全てを斬り裂き、時には概念すらも切断する究極の剣技だ。
それによる手応えが大きくなったということ、それはつまり相対する概念が爆発的に上昇したことを意味する。
どうにかしてノアはリオエスタに近づこうとするが、近づけば近づいた分だけ血壊鎌による猛攻は激しくなる。
ある一定以上までなら今のノアでも耐え切れるが、リオエスタの全力の速度にはついていけなかった。
(これが破壊神の全力……!だが、だとするなら……!)
───まだ勝ち目がなくなったわけではない。
超高速かつ変則的な動きをする血壊鎌だが、それだけだ。
要は血壊鎌の攻撃しか、今のリオエスタはしていない。
瞬間的に懐に入り込めばどうとでもなる。
そして───ノアはそれができる。
「たとえ弱まろうとも、使えないわけじゃねぇからなッ!」
ノアは再度近づき、リオエスタはそれに対応して攻撃の速度を数倍単位で上げ始める。
「───『置いて行かれた世界』」
その瞬間にノアが行使するのは追憶の権能による魔法。
魔法を行使した存在はそのままに、術者以外の世界の全ての時を数分から数時間巻き戻す魔法だ。
場合によっては世界に起きた史実の改変すら容易にできてしまう追憶魔法の一つ。
しかし権能を半分しか所持しておらず、破壊を増長させる空間においてとなるとその効果はかなり限定的になる。
世界そのものではなく、この空間限定に。
数分ではなく、たった数秒に。
それでも極限であったこの戦闘でその数秒はあまりにも大きすぎる。
「な───ッ!?」
リオエスタからすれば遠くにいたノアが突然瞬間移動でもしたように見えただろう。
『空間転移』なら魔力や魔法陣が見えるはずだし、破壊魔法には転移の類の力はない。
故に別の権能によるものだという判断をする。
そして、それを思考する刹那の時間、それがこの二人の間では命取りになる。
「ッ!このッ!」
「がぁッ!」
リオエスタは咄嗟に持ち手による打撃をするが、ノアはそれを妥協してその身で受ける。
鎖による拘束は厄介だし、その状態で破壊の概念を叩きつけられるので捕まるのは非常に危険だ。
刃による斬撃は言うまでもない。触れれば即終了の力がある。
故に、せめて受けるなら打撃だろうとノアはずっと考えていたのだ。
(とんでもなく痛いし、破壊が込められてるのが解る……だが、これならまだ耐えられる!)
むしろノアはその攻撃を利用して持ち手から繋がる血の鎖を強引に掴んだ。
「───ッ!?」
そう、ノアはその左手に白雪を持っていなかったのだ。
(いつの間に武器を!?白雪は、一体何処に───!?)
リオエスタはその事実に驚愕する。
ノアは自身の虚無によって幻影を作り出したり、相手に幻覚を見せたりすることができる。
ノアが握っていたのは白雪の幻影。
魔力もろくに込められていない張りぼてというのも烏滸がましい偽物だったのだ。
リオエスタもよく見ればそれが白雪ではないことに気がついただろう。
だがノアが突如として近づいてきたことに対する驚愕でそこを注視していなかった。
つまり、ノアが白雪を手放したのはその時。
『置いて行かれた世界』を行使したタイミングだった。
効果範囲や時間を極端に狭めたこともあり、本来なら自身のみにしか有効でない『巻き戻らない対象』を一つ増やすことに成功したのである。
これは神が自身の持つ権能でやる分には可能だが、半分しか持たない権能で他者がやってもそう簡単にいくものではない。
故に現段階でのノアなら不可能であるはずの技。
権能という力そのものに対する理解が深くなければできないもの。
だからこそ、リオエスタも見逃したのだ。
「これは───!」
リオエスタもこのままではいけないと悟る。
だが、もう遅い。
ノアは鎖ごと強引に持ち手部分を掴み、そこに自身の血を垂れ流す。
もうすでに流血量は致死クラス。
だがそれでもなおノアの腕と魔力は活性化する。
「『崩壊───』」
更にリオエスタの背後からも同じ魔力反応。
「まさか───」
そこにはノアの血で紅く染められた白雪が存在しており、その切っ先をリオエスタに向けていた。
ノアの持つ血壊鎌の持ち手と、リオエスタの背後にある白雪が瞬時にリオエスタへと迫る。
「『───神撃』ッ!」
破壊魔法、『崩壊神撃』による挟み撃ち。
これなら破壊神とて絶対に無事では済まない。
血壊鎌の刃もまだ遠い。二つの『崩壊神撃』が衝突するまでには間に合わない。
(ああ───よく、よくここまで練り上げましたわね……この短い攻防の中で、貴方様はわたくしに勝つだけの力を手に入れた───貴方様の勝ちですわ、ノア様───)
その瞬間、リオエスタは敗北を痛感する。
(───そう、第一回戦は)
血壊鎌の持ち手と白雪の刃がリオエスタに吸い込まれる直前。
リオエスタは───一言を呟いた。
「───破壊神域、『死海』」
破壊に耐性を持っているはずの空間が、為す術もなく破壊される。
そして、ノアは突如として浮遊感に襲われた。
(───は?)
ノアは落下していたのだ。
一体何処へ?
(これ、は───?)
瞬間的に切り替わったノアの視界。
そこに映し出されるのは鮮血よりもなお濃い紅、紅、紅。
「───ッ!」
そんな中たった一箇所だけごく僅かに純白を放つ物質があった。
そう、白雪だ。
ノアは白雪を見つけると咄嗟に我に返り、左手で白雪を掴みながら空中でバランスを取り、浮遊する。
そして、ノアは眼前に映る光景を見た。
「何だ、これは」
空、海、空、海、空、海。
紅、破壊、紅、破壊、紅、破壊。
紅く染まった空と海。その全てに宿る破壊。
「───何なんだ、この場所は?」
濃密すぎる破壊の概念がこの空間、否、この世界に飽和している。
普通の世界なら絶対に有り得ない、有り得てはならない破壊。
こんな規模の破壊が許されるのはこの世界でたった一箇所。
「これではまるで、破壊神の魂の内部にでもいるようではないか───」
「それで概ね正解ですわ」
「───」
ノアは声がした方向を見上げる。
そこにいるのは当然、破壊神リオエスタだ。
「───ここは、何だ」
「ふふふっ」
何か可笑しいのか、リオエスタは愉快そうに口角を上げる。
そして、次に放った言葉。
それはノアの常識を根底から覆した。
「ここは、わたくしが生み出した世界。神々が持つ力であり、わたくしの奥の手の一つ───破壊神域、『死海』ですわ」
これが、神の力の真髄───




