8.獣の成れの果て
ユキが滅ぶ少し前。
穿界の魔手の上では超光速の戦闘が繰り広げられていた。
「流石、だなッ!だが───『鏖殺せし雷電』!」
終末獣ガロンが咥えた星剣が光速の数倍の速さでヴァディアの胴体に浅い傷をつける。
同時にヴァディアの雷電魔法がガロンの両前足を撃ち抜いた。
その火力は凄まじく、撃ち抜かれた両前足からガロンの身体そのものが焼き滅んでいく。
「───」
だが、滅ぼされた足は瞬間的に再生した。
「チッ……」
アルファルドの壊滅でない限り、今のガロンを完全に消し去ることは不可能に近い。
雷電程度ではガロンの常闇を完全には覆せないのだ。
そして、それと同時に───
「我も卿も、適応しつつあるようだなッ!」
ガロンの再生力は雷電を上回り、ヴァディアは触れればただでは済まないガロンの星剣に斬られても傷口を雷電で上から焼くことで侵食を食い止めていた。
互いに互いの攻略法を着実に見つけていっている。
ガロンは自我がないが、本能のみでそれを行っていた。
二人……否、一人と一体は一度距離を取り、睨み合う。
それがヴァディアにとってのミスだった。
「───」
「……なに?」
ガロンの影から黒い何かが伸びる。
その数は異常に増え、たった数秒で数千本にまで増加した。
「これは……触手か?」
それらは光速よりも格段に速く蠢き、歪曲しながらヴァディア向かう。
ヴァディアも当然の如く周囲に雷撃を放つことで黒い触手を撃ち落とすが───
「……なるほど、これは厄介だな」
その触手の性質は星剣と同じ。
つまり、まともに当たれば滅びる。
そんなものが数千本。更に、撃ち落としてもガロンの影から永遠に再生してくる。
(獣となってからというもの、全ての要素が強くなっているな。攻撃力、再生力、機動力……どれをとっても先程より大幅に強化されているようだ)
そして当然、その攻撃手段も増えている。
魔法こそ使っていないが、それは獣となる前のガロンも同じ。魔法はそれ程使っていなかったので変わりはない。
それどころか───
(獣となったからか、異様に攻撃の先を読まれる……獣の本能としての力ならば、かなり面倒だ)
獣は人間よりも本能が鋭い。それは誰もが知っている、当然のこと。
だがそれ故に厄介。獣の本能を侮ってはならない。
ヴァディアが思考している間にもガロンの影から伸びる触手は数を増していく。
流石のヴァディアでもこれを雷鳴の太刀一本で受けきるのは自殺行為でしかない。
なら一体どうするか。
「───触手に対抗するなら、こちらも似たような手を使うのが手っ取り早い。打ち消せ、『連爆の雷鎖』」
雷鳴の太刀から伸びるのは実体を持たぬ雷鎖。
触手と衝突した雷鎖は大きく爆ぜ、その爆発は莫大なエネルギーを生む。
ヴァディアは即座にそのエネルギーを暗雲に変換。
「───落ちろ」
降り注ぐのは有り得ない程の量の雷。
轟音が鳴り響き、雷が着弾した地点は焼け焦げる。
量、そして何よりもその威力。どう考えても普通の雷ではなかった。
ただの雷如きでは穿界の魔手を焼くことなど絶対に不可能だ。
それなのにこの雷は焼くどころか穿界の魔手を破壊していっている。
ヴァディアの魔力が大幅に込められているのだろう。
魔法ではないものの、雷を複数束ねればその威力は『鏖殺せし雷電』を軽く上回る。
そんなものが毎秒数千はくだらない数落ちてきているのだ。
「───」
だが、ガロンは被弾しない。
それすらも全て躱す。
終末獣となったおかげか反応速度は数倍にまで跳ね上がっている。
空間を縦横無尽に駆け回り、雷を使ってヴァディアの死角にまで回り込む。
終末獣ガロンの戦闘センスは異次元だ。それはかつての比ではない。
虚無の権能に覚醒したノアですら手も足も出ないレベルの強さ。
そしてそれを完全に受けきるヴァディア。
この世界の中にいる存在で、この戦いに干渉できるのはきっとアルファルドぐらいなのだろう。
「フッ!」
ヴァディアの斬撃が周囲の雷を全て切断し、ガロンの姿が露になる。
「そこかッ!」
ヴァディアの後ろ右斜め上。ヴァディアの位置からは太陽と重なる地点。
ガロンはそこから星剣を大きく振りかぶる。
ヴァディアも星剣に適応しつつあるとはいえ、まともに食らえば一撃で滅びる。
故に星剣は躱すか、雷鳴の太刀で受けるしかない。
だが相手は終末獣ガロン。その速度はヴァディアにも匹敵するため、躱したり太刀で受けたりしているようではガロンに引く隙を与えてしまう。
そうなればヴァディアにとってはジリ貧だ。雷鳴の太刀での攻撃を与える隙がないならガロンを滅ぼせるだけの攻撃はできない。
魔法攻撃も効かないわけではないが、滅ぼすとなれば話は別。
今のガロン相手では牽制程度にしかならないだろう。
そしてジリ貧なのはガロンもまた同じ。
今、ガロンには明確な意識がない。
信念は魂に刻まれているとはいえ、意識がないのだから本能以外で魔法を使うことができないのだ。
そして何よりもその速度。
ガロンも光速を遥かに上回る程速くなったとはいえ、まだヴァディアよりは遅い。
その差が明確であるが故に、一撃の必殺能力で上回っていても現状だと拮抗しているのである。
速度はヴァディア。
力は互角。
魔力はガロン。
必殺能力もガロン。
ガロンは攻撃に込める魔力量でもヴァディアを超えているが、魔法を殆ど使えないのが原因で差をつけられていない。
勝負全体では……完全に拮抗していた。
(このままでは勝ちきることができない……何とか隙を作ることができれば可能性はあるのだが)
ヴァディアが勝つにはガロンの攻撃を上回る斬撃を当てる必要がある。
「『金色の雷閃』」
「───」
周囲に雷を展開しつつ放つ一閃。
雷を躱すことに集中していたガロンは、雷の数倍の速さで迫ってきたヴァディアに懐に入られる。
だがその程度で攻撃を受けるガロンではない。
「───これも通らんか」
ガロンはその太刀を星剣で受け止めていた。
終末獣になる前、星闇神だったガロンなら不可能だった芸当だ。
(これを容易く止められるとなると……他の手もほぼ意味を成さないだろうな。となればあの魔法だが……)
ヴァディアにはガロンを倒せるだけの術はある。
しかしその魔法は表裏一体。自身が滅ぼされる可能性もまた甚大であった。
(隙さえあれば使うことはできるのだがな……行使する時間を与えてはくれなさそうだ)
ヴァディアの攻撃が止めば、ガロンはすぐに触手を展開して攻撃するため、隙がない。
そして攻撃のどれもが当然の如く光速を上回る速度を持つ。
そんなものを捌きながらその魔法を使うのはあまりにも無謀だった。
「ふふっ───」
そんな状況に、ヴァディアは笑う。
「面白いくらいに手がないな。それも、互いに」
その速度からか、ガロンの攻撃はヴァディアには殆ど当たっていない。精々かする程度だ。
互いに手詰まりであることに間違いはない。
だがそれでも───
「相打ちの可能性?ハハッ!上等だッ!」
ヴァディアは大量の雷を自身に向かって降らせ、その全てを身に纏う。
それはさながら雷の鎧。
それはこの世界の常軌を逸しており、星剣相手ですら一瞬程度は拮抗できるレベルのものだった。
(この状態ですらあの攻撃を無傷で使えるとは思えん。それ程までに、今のガロンは強い)
現状、優勢なのはどちらかといえばガロンであることはヴァディアとて理解している。
「だが───その上で勝つ。それができてこそ、我の心は満たされる!」
その姿は完全に戦闘狂だ。
戦いに悦楽を見出し、たとえそれで自分が滅んでも構わないという考えを持つ。
それがヴァディアという戦闘狂なのである。
その気迫にあてられたのか、ガロンの常闇はより一層深く、強くなっていく。
この場で二人を止める存在はいない。
誰も二人を止められない。
「さあ、最後の衝突だ」
互いに睨み合い、起きる衝撃。
存在する余波で空間が崩壊し、自動的に様々な神の権能が発動する。
創造と再生の権能は破壊された世界を再構築、再生させ、破壊と終焉の権能は世界の破壊を破壊する。
しかしそれでもなお、世界を破壊する力が神々の権能を上回る。
その証拠に第四界滅爪付近、周囲数百キロメートル内の世界が消滅した。
ガロンとヴァディアはただ、そこにいるだけ。
だが発する力は災害など比べ物にならないレベル。
そんな状態の中、動くのは二つの存在。
当然、ガロンとヴァディアだ。
壊れた空間の中、二つの影は光を置き去りにする速度で移動する。
その速さは最低でも光速の5倍以上。刹那が永遠にも感じる程の短時間で互いの剣の間に入った。
星剣と雷鳴の太刀が衝突する。
「『雷神衝』」
「───」
ヴァディアは太刀に魔法の威力を上乗せし、ガロンは魔力をより一層深化させることでそれに対抗する。
それにより互いの剣は弾かれ、それによって生じた衝撃は穿界の魔手ごと破壊された空間を消し飛ばした。
それを刹那の間に何万回と繰り返す。
鳴り響く剣戟と発生する衝撃波は止むことはなく、第四界滅爪は完全に滅び去った。
そしてそれと同時に───
遙か遠くで、第二界滅爪が切断された。
「───なに?」
ヴァディアとてノアの存在を知らないわけではない。
何ならノアの前世のことを知る人物の一人である。
だが報告からはそれ程の力があるとは聞いていなかった。
つまり、界滅爪を切断できる程の力はないと、そう思っていたのだ。
それは間違いではない。
別の要因があったが故だからだ。
一度死ななければ力を得ることはできず、死んだところで本来はここまでの力を発揮できるはずがない。
それでも、ノアはそれをやってのけた。
「チッ」
何かあったのだと察したヴァディアは救援に向かうためにギアを更に上げる。
【───ヴァディア】
【陛下!?】
そんな時に響く『念話』。
相手はアルファルドだ。
【ラフィナがやられた可能性が高いが、奴のことは放っておけ。そちらに気を取られて貴様が負けるという事態は必ず避けろ】
【……承知】
それだけの言葉を交わし、通信は途切れる。
超光速の戦闘を繰り広げながら通信を終えたヴァディアは先程のギアはそのままに、挑発するようにガロンに対し嘲笑を浮かべた。
「奴は着実に強くなっている……いずれは我々など軽く凌駕するであろう……それなのに、貴様はその程度の力しかない。自我を捨ててまでも、まだ我の命には届かない」
「───」
相変わらずガロンに意思はない。
だがそれでも、その魂は言葉を訴えていた。
ガロンの獣の魂とヴァディアの魂が共鳴したのだ。
それによってガロンの意志が、願いがヴァディアに流れ込んでくる。
「───」
「ほう?それでもいい、と?」
ガロンにとってガロンという存在は一つの駒でしかない。
世界を救うために、その手段は選べない。それがガロンという存在だ。
───最終的に世界が救われるならそれでいい。願わくば、そこに笑い合うノアとユキの姿があれば、私はそれで───
「フッ、良いだろう」
雷電の出力が爆発的に上昇する。
「もう出し惜しみはしない。この攻撃を受けてなお滅ばないのなら、卿の意志を尊重し、この場は手を引こう」
ヴァディアは雷電に込める魔力を数倍単位に圧縮する。
そして、雷電は概念を内包した。
神を滅ぼす───神滅の概念を。
「受けてみろ。これが───我の本気だ」
今までとは比べ物にならない程の暴雷が雷鳴の太刀へ集う。
その余波に耐えきれず穿界の魔手が崩れ落ち、世界は軋むように悲鳴を上げた。
そしてそれに対抗するように───
「─────」
ガロンの宵の星剣にもこれまでにない程深い常闇と朱き魔力が集った。
ガロンとヴァディアは───その力を同じタイミングで解放する。
「───『神を滅する万雷の太刀』」
「─────」
万雷の金色の光と常闇の深き闇は互いに全く劣ることのない力を内包し、世界に解き放たれて荒れ狂う。
穿界の魔手に限らず世界を蹂躙し尽くし、その影響は世界の端から端まで及んだ。
最終都市グラエムにも抗えない程の滅びが到達する。
だがそれは許さない。
───そう、神々が。
「あー……やらなきゃならんことがあったのにな」
「でも仕方ないですよ。この滅び……私達が力を合わせるしか、生物を護ることができません」
「解っていますわ、アスティリア様」
「ん、理の改変は後回し」
「まーその辺は後の四人に任せておこうぜ」
グラエムの前、上空に顕現したのは創造神アスティリア、破壊神リオエスタ、再生神レイシェル、終焉神ヴェレイドの四人の神。
世界への影響を考えるなら、滅びを食い止めるのはこの四人が最適なのだ。
「それにしても───ガロン、か」
「黙っていたことは謝罪します。ですが今はそれどころではない」
「そうですわよ、ヴェレイド様」
「……あまりアスティリアをいじめるのは良くない」
「いやいじめてねーって」
何とも騒がしいが、これでもこの世界の理を司る神々だ。その力は同じ分野では他の追随を許さない程の力を持つ。
「それでは───護りますよ」
四人の神が己の権能を最大限に発揮し、グラエムまで到達する力の奔流を堰き止める。
「リオエスタ、ヴェレイド、頼みます!」
「お任せあれ!『血壊流破』!」
「了解だ!『終の相剋』!」
圧倒的なまでの雷電と常闇。それに真っ向から対抗するのは破壊神と終焉神。
雷電と常闇が混ざり合った衝撃を、破壊と終焉が覆い尽くす。
「中心部では歯が立たなくともッ───!」
「この位置なら打ち勝てるぜッ───!」
破壊と終焉は衝撃を完全に殺し、背後にあるグラエムへの被害をゼロにする。
だが力が衝突する位置である神々の眼前は世界が崩壊し、その位置から大地は真っ二つに割れていた。
そう、世界そのものが分断されたのだ。
「……ここからは私達の出番」
「そうですね。いきますよ、レイシェル」
「ん、『天甦の再臨』」
蒼き光が世界の裂傷を覆う。
再生の権能───その真髄によって分断された世界が逆再生されるかのように元に戻っていった。
しかし完全に戻すことはできない。
莫大な力の衝突はまだその場で巻き起こっているのだから。
「……これ以上は厳しいかも」
「いえ、よくやりました。後は任せてください」
険しい顔をするレイシェルに、アスティリアは労いながら前に出る。
その両手には純白の光が集っており、そこに込められた力はさながら世界創造の如き秩序を持っていた。
「───『聖界創造』」
その光は───ユキの魔力と酷似している。
否、ユキがアスティリアに似たのだろう。
アスティリアが生誕し、世界を創造した。そしてユキは界律神装として世界創造と同時にこの世界に産まれ落ちたのだから。
純白の光が蒼き光を飲み込み、周囲の力の奔流すらも糧として世界を再構築する。
アスティリアがやってのけたのは先刻、ガロンが行った魔法の簒奪に近い。
この世界の創造神である彼女ならそれすらも可能なのだ。
「魔法を止めないでください。現在は拮抗していますが、あちらの力が上回れば全てが瓦解します」
「当然ですわ!」
「当然オーケーだぜ」
「……了解」
神々はグラエムにいる1000万の生命を護りつつ、世界が崩壊しないようにその魔法を行使し続ける。
「───ガロン。神々を超える力を持った、貴方ならきっと───」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
神々が世界の崩壊を食い止めている中、その原因となる二つの存在は───
「───」
「ぐッ───!」
あまりにも莫大すぎる力を撒き散らしながら鍔迫り合いをしていた。
(奥の手を使ってもこれかッ!?)
ヴァディアの完全なる本気、それが『神を滅する万雷の太刀』だった。
だがガロンの星剣、そして常闇はそれすらも飲み込んでいく。
完全に相殺することは互いにできていない。
その証拠に余波によって互いの魂はすでに瀕死だ。
この局面において、ガロンとヴァディアは全ての要素で完全に互角だった。
この一撃に全てを込めているため、もう速度は関係ない。
ならこの勝負を決するのは純粋な力と魔力、魔法、それらの深さによって決まる。
自我と意識を捨て、力のみの獣となったガロン。
自身のアドバンテージである速さを捨て、最後の一撃に全てを賭けたヴァディア。
どちらももう後には引けない。どちらかが滅びるまで、この鍔迫り合いは終わらない。
「───!」
「はぁあああッ!」
ガロンも、ヴァディアも、気迫は十分。
力の衝突が起こっているのは元々第四界滅爪があった場所。
そしてこれ程の衝撃がその程度の被害で済むはずがなく、第三、第五界滅爪まで消し飛んだ。
穿界の魔手の中心にはきっとアルファルドがいるのだろう。
この事態のことは確実に察しているはずだが、今アルファルドは非常事態により手が離せない。
故にヴァディアに加勢することもない。
神々やノアとてそれは同じ。
もう誰も干渉できない最後の一撃。
それを互いが確信したその瞬間───
「───かかったなッ!」
「───!」
ヴァディアの雷鳴の太刀を持つ力が、一瞬だけ緩んだ。
だがそれは衝撃に耐えきれずに起こった事態ではなく、ヴァディアが意図的に起こしたもの。
ガロンの星剣は、雷鳴の太刀によって受け流されたのだ。
両者はギリギリのところですれ違い、瞬きの数万分の一程度だけガロンに隙が生まれた。
その間にガロンの星剣は力を押し付ける方向を失い、常闇の力が減衰する。
だがヴァディアにはそれは起こっていない。
意図的に、そして強制的に力を太刀に留めていたからだ。
当然ヴァディア本人でさえもその力には耐えきれず、両腕の骨と筋繊維が修復不可能なまでにボロボロになる。
だがそれでも───太刀を振る手を止めることはない。
「意識を捨てたことが───卿の敗因だッ!」
強制的に押し込められていた『神を滅する万雷の太刀』が解放され、その斬撃は隙だらけのガロンを背後から蹂躙し尽くす。
一度減衰してしまった常闇では、この万雷を覆すことはできない。
神々が顕現し、魔法を行使していなければ世界という概念そのものが消え去っていたかもしれない程の威力。
そんな万雷の中、たった一つだけ存在する黒い影。
ガロンだ。
もう、ガロンは動かない。
万雷にその身体を蹂躙され、魂が───完全に滅び去っていた。
「我の───勝ちだ」
時間が経過し、万雷が止む。
そしてそれと同時に、ボロボロになったヴァディアが倒れた。
「ぐ……」
ヴァディアももう立つことはできない。しばらくは穿界の魔手の上で倒れたままになるだろう。
そんなヴァディアから少し離れた位置に、黒い何かが落ちてくる。
「……はは、驚いた……あれをまともに食らってなお原型があるとは……」
黒い物体はガロンだった。
だがガロンは終末獣から星闇神の状態へと戻っている。
つまり、獣ではなく黒甲冑としてのガロンの亡骸がそこにはあった。
甲冑の手足や兜は部位によって全てバラバラになっており、もう二度とガロンとして動くことはない。
それが、世界を守ろうとして神獣にまでなったガロンの───成れの果てだった。
ガロンの亡骸は───




