プロローグ
(;^_^A 初めましての人、久方ぶりの人、閲覧ありがとうございます。ひっそりこっそりお恥ずかしいですが、ご興味のある人は読んでいただけたら嬉しいです。
月・水・金曜日の日付変わる0時に投稿できるように頑張る予定です…予定は未定(涙…
orz 今回登場人物が多く初期メモの名無し設定の名残で、役職だけ、爵位だけ、役職と爵位つけたままと、修正が把握しきれない箇所がそのままとか錯綜したらごめんなさい。
それと、数字の扱いを気をつける様にしました。漢数字の一、マイナスー、ナンバー←の伸ばし棒、横棒─を見間違うので、気付いたとこだけできるだけ1や数字混じりの文章にするようにします。
一括とか、一同、なんかはそのままなんだけどね。見にくかったらごめんなさい(汗。
◆序話
な~ろっぱ異世界のダームスタチュム王国の王女の1人として、セレンは生まれた。
魔獣はいないけれど、聖獣がいるらしい。人間は魔法を使えなくなったが、特殊な生物の中には魔法を使える物がいるらしい。ただ、人間でも特殊能力を使える者はいるらしい、そんな世界でのお話。
ダームスタチュム王国は、森や木が多い山や丘に囲まれた盆地みたいな国で、資源のほとんどは輸入に頼らざるを得なかった。
一方、隣接する国の一つ、マイトネリュム帝国は資源も人材も豊富で、ここ何年かは相次ぐ皇帝の病死と、後継者である皇太子の事故死により、若くして皇位を継ぐことになった現皇帝だったが、執政は思うように事が運ばず、帝国内は混乱の域を出なかった。
特に前皇帝の弟の大公や貴族派閥の牽制が激しく、皇帝は貴族派だけでも抑えようと、とりあえず貴族派筆頭の公爵家の令嬢を側妃に召し上げた。
しかし、では正妃は? となると、国内のどの貴族でもバランスの関係で納得させられない。そこで、政略結婚と国内の混乱を抑える間の和平同盟のために、資源を巡って小競り合いをしていた隣接する王国の王女に、白羽の矢が当たったのである。
セレン・フレロビュム・ダームスタチュムが「王女」と呼ばれていた日々は、名ばかりのものだと言えよう。
愛妾の娘として生まれた時から、彼女の存在は王国にとっては「不吉な存在」と言われ、「恥」だと蔑まれ続けていたから。
庶民たちには普通の存在とされているはずの漆黒の髪と深紅の瞳のはずが ── この王国の王族や貴族たちの間では、不吉とされる色の組み合わせと噂されたがために、彼女がドアマットとして扱われる運命を決められてしまったようなものだ。
セレンが黒いベールを授かったのは、1歳の誕生日の時だったらしい。
とは、乳母だったウラン・リチュム・ネプツニュムから聞かされた。
それは祝福ではなく、呪いのような贈り物だったが。ベールの向こうから見える世界は、すべてがぼやけ、色を失っていた。まるで彼女自身の人生のように。
「不吉な色の髪と瞳を見せなければ、夫に見捨てられずに済むかもな?」
王妃である継母の言葉は、セレンが物心ついて以来、耳にたこができるほど聞かされてきた。
漆黒の髪とルビーのような赤い瞳 ── ダームスタチュム王国では、それは悪魔の血を引く証だとさえ言われてきた。
父である国王ハイドラジェン・ハフニュム・ダームスタチュムからも。もちろん継母であるアリシジェン・ルビジュム・ダームスタチュム王妃からも。そして、異母姉ナイトラジェンを始めとする王太子や他の異母姉妹の王女たちからも。宮廷の誰からも愛されることはなかった。
だからこそ、この政略結婚はセレンにとって救いとなるはずだと。
マイトネリュム帝国への花嫁として送り出される前夜、彼女は粗末な部屋の窓辺に立ち、星のない空を見つめた。
護衛騎士となった乳姉でもあり幼馴染のアーサニク・セリュム・ネプツニュムがそっと肩に手を置く。
「心配しないで、セレン。私がついているから」
焦茶色の髪を短く切りそろえたアーサニクは、王国にいる時から、セレンの愛人として知られていた。
しかし実はアーサニクは、王家から雇用されている護衛騎士ではない。セレンの為の専属の侍女も騎士もいないから。アーサニクは、幼少の頃から母親のウランの傍にいて、そのままセレンの自称騎士となってくれた物好きでもある。
しかしセレンにとっては、愛人を連れ歩いていると言う悪評と共にではあったが。しかし、男好きだと噂されるセレンの身辺警護のため、セレンもアーサニクも、あえてその悪評を放っておいた。
それに、消しても消しても消えない悪評に辟易としていたことと、自分達よりも権力も人材も多い人間が流し続けている噂を消すことを、すっかり諦めていたせいもある。
そのアーサニクと母親の乳母だけが、ベールの下のセレンの素顔を知っている、王国で唯一の味方であった。
「アーサ、私は……自由になりたいの。3年間、静かに過ごして、円満に離婚できたら……」
「そうね。きっとうまくいくわ」
しかし、アーサニクの声には微かな不安がのっていた。アーサニクだけが知っていた ── セレンがこの十数年間、密かに毒草を口にし、身体に塗り続けていたことを。
*****
マイトネリュム帝国の皇宮は、ダームスタチュム王国のそれとは比較にならないほど壮大な建物に見える。大理石の柱が天を衝き、ステンドグラスから差し込む光が床に虹を描いている。
しかしセレンにとって、それは豪華な牢獄にすぎなかった。
宰相のリード・パラシュム・タリュム公爵は、桃金色の髪を整えながら、新たに嫁いできた皇妃の到着を待っていた。眼鏡の奥の桃色の瞳には、軽い嫌悪の色が浮かんでいる。彼の手には、皇帝シルバー・テクネチュム・マイトネリュムからの和平・同盟に必要な書類である羊皮紙があった。
『どうせ、癒着の絡んだ政略結婚だ。わざわざ私自らが出向く必要はあるまい』
皇帝の言葉が耳に残っていた。
24歳の若き皇帝は、5年前に兄と父を相次いで失い、不本意ながら帝位につくしかなかった。
周囲の期待と貴族たちの野心に挟まれ、彼は傀儡として操られることも侮られることも許さないと政治に全てを注ぎ込むしかなかった。ましてや婚姻など、単なる外交上の手続きに過ぎないのだからと後回しにせざるを得ないのは当然のことだろう。
やがて、質素な馬車が宮殿の門をくぐった。
リードが目にしたのは、流行遅れのドレスをまとった小さな人影だ。生地は粗末で、所々にほつれが見える。そして何よりも目を引いたのは、頭から首元までを覆う真っ黒なベールだ。きっちりとまとめて結い上げられた髪はもちろん、顔も、一切見えない。
「ダームスタチュム王国より、王女殿下が到着しました」
護衛を名乗る1人の騎士が報告した。焦茶色の髪を短く切った騎士は、皇妃のすぐ脇に立っていた。橙色の瞳には鋭い警戒の色が宿っている。
リードは軽くため息をつき、皇妃に近づいた。
リードは皇妃の左手を取ると、黄金の腕輪を確認した。ダームスタチュム王家の紋章が刻まれている。これで身元は確認できた。
*****
婚姻の儀式は、驚くほど簡素なものとなった。
結局、皇帝シルバーは、ついに姿を見せず、代わりに宰相のリード公爵が黒いベールの花嫁に言葉を投げかけた。
「陛下からの伝言です」
リード宰相は、羊皮紙の書類を手に淡々と読み上げて告げた。冷たい言葉が大理石の廊下に響く。
「『其方を愛するつもりも子作りをするつもりもない、むろん正妃を伴わねばならない対外的な場合の外交や行事以外だろうとも、パーティやお茶会や観劇などの私的な趣味に関係する付き合いも、させるつもりもする必要もない』
ということでございます」
ベールの向こうから、かすかに息をのむ音が聞こえた。
「……つまり……」
セレンのベールの下で、唇がほころんだ。
「……つまりそれは……」
彼女は小声で呟いた。
「……煩わしい社交も行事も顔を出さなくて良いし、外交も執務も政治の書類仕事すらもする必要がないってことですよね! なんて素晴らしい贅沢! 自由にスローライフを謳歌できるってことですよね」
アーサニクがそっと肘でつついた。
セレンは咳払いをして姿勢を正した。
リード宰相は一瞬、眉をひそめたが、続けた。
「此度の婚姻は国と国同士との和平を成すためと、皇妃殿下のご実家である王国の資源の貿易を円滑にするためだけの政略結婚なのですからね」
資源 ── 主に鉱山の採掘権。
セレンはそれを知っていた。
彼女はただの駒であり、交換可能な道具にすぎない。
しかし、それでいい。3年後には自由になれるのだから。
儀式が終わると、女官がやってきて、セレンはリード宰相から言い渡された離宮と呼ばれる建物に案内されることになった。
そう。今回の婚姻は、正にただの政略結婚だ。
皇帝は、自ら会うと情がわいてしまうかもしれないので、最初から会おうともせず、宰相にだけ用件を一方的に告げさせて、セレンと陛下との契約結婚生活が始まるのだと。
しかしそれはセレンにとっては渡りに船の、煩わしい生活をせずに済むという喜ばしいことだらけだったのだが。
「皇妃殿下としての居室は準備してあります。女官がご案内いたします」
そう言うと、リードは背を向けた。彼の頭の中は、すでに次の会議のことでいっぱいだったようだ。
この皇妃は、単なる政略の駒に過ぎない。5年後、帝国が王国との関係を整理する時が来れば、離縁される運命にあるのだから。
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