表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正法眼蔵  作者: Eliphas1810
84/94

正法眼蔵 発菩提心

おおよそ、心、三種あり。

一、者、質多心。此方、称、慮知心。

二、者、汗栗多心。此方、称、草木心。

三、者、矣栗多心。此方、称、積聚精要心。

このなかに、菩提心をおこすこと、かならず、慮知心をもちいる。

菩提は、天竺の音、ここには、道という。

質多は、天竺の音、ここには、慮知心という。

この慮知心にあらざれば、菩提心をおこすこと、あたわず。

この慮知心を、すなわち、菩提心とするにはあらず。

この慮知心をもって菩提心をおこすなり。

菩提心をおこす、というは、おのれ、いまだ、わたらざる、さきに、一切衆生をわたさんと発願し、いとなむなり。

そのかたち、いやしというとも、この心をおこせば、すでに、一切衆生の導師なり。

この心、もとより、あるにあらず。

いま、あらたに、たちまち、起するにあらず。

一にあらず。多にあらず。

自然にあらず。

凝然にあらず。

わが身のなかに、あるにあらず。

わが身は、心のなかに、あるにあらず。

この心は、法界に周遍せるにあらず。

前にあらず。後にあらず。

なきにあらず。

自性にあらず。他性にあらず。

共性にあらず。

無因性にあらず。

しかあれども、感応道交するところに、発菩提心するなり。

諸仏、菩薩の所授にあらず。

みずからが所能にあらず。

感応道交するに、発心するゆえに、自然にあらず。

この発菩提心、おおくは、南閻浮の人身に発心すべきなり。

八難所、等にも、すこしきは、あり。おおからず。

菩提心をおこしてのち、三阿僧祇劫、一百大劫、修行す。

あるいは、無量劫、おこないて、ほとけになる。

あるいは、無量劫、おこないて、衆生をさきにわたして、みずからは、ついに、ほとけにならず。

ただし衆生をわたし、衆生を利益するも、あり。

菩薩の意、ねがうに、したがう。

おおよそ、菩提心は、いかがして一切衆生をして菩提心をおこさしめ仏道に引導せまし、と、ひまなく三業に、いとなむなり。

いたずらに世間の欲楽をあたうるを利益、衆生とするにはあらず。

この発心、この修、証、はるかに迷悟の辺表を超越せり。

三界に勝出し、一切に抜群せり。

なお、声聞、辟支仏のおよぶところにあらず。


迦葉菩薩、偈をもって釈迦牟尼仏をほめたてまつるに、いわく、

発心、畢竟、二、無別。

如是二心、先心、難。

自、未得度、先、度、他。

是故、我、礼、初発心。

初発、已、為、天人師。

勝出、声聞、及、縁覚。

如是発心、過、三界。

是故、得、名、最無上。


発心とは、はじめて、自、未得度、先、度、他の心をおこすなり。

これを初発菩提心という。

この心をおこすよりのち、さらに、そこばくの諸仏にあいたてまつり供養したてまつるに、見仏聞法し、さらに、菩提心をおこす。

霜上加霜なり。

いわゆる、畢竟とは、仏果菩提なり。

阿耨多羅三藐三菩提と初発菩提心と、格量せば、劫火、蛍火のごとくなるべしといえども、自、未得度、先、度、他のこころをおこせば、二、無別なり。


毎、自、作、是念、

以、何、令、衆生、得入、無上道、速、成就、仏身。


これ、すなわち、如来の寿量なり。

ほとけは、発心、修行、証果、みな、かくのごとし。

衆生を利益す、というは、衆生をして自、未得度、先、度、他のこころをおこさしむるなり。

自、未得度、先、度、他の心をおこせるちからによりて、われ、ほとけにならん、とおもうべからず。

たとえ、ほとけになるべき功徳、熟して円満すべし、というとも、なお、めぐらして衆生の成仏、得道に回向するなり。

この心、われにあらず、他にあらず、きたるにあらずといえども、この発心よりのち、大地を挙すれば、みな、黄金となり、大海をかけば、たちまちに甘露となる。

これよりのち、土石、砂礫をとる、すなわち、菩提心を拈来するなり。

水沫、泡、焔を参ずる、したしく菩提心を担来するなり。

しかあれば、すなわち、国、城、妻子、七宝、男女、頭、目、髄、脳、身肉、手足をほどこす、みな、菩提心の鬧聒聒なり、菩提心の活鱍鱍なり。

いまの質多、慮知の心、ちかきにあらず、とおきにあらず、みずからにあらず、他にあらず、といえども、この心をもって、自、未得度、先、度、他の道理にめぐらすこと不退転なれば、発菩提心なり。

しかあれば、いま、一切衆生の、我有と執せる草木、瓦礫、金、銀、珍宝をもって菩提心にほどこす、また、発菩提心ならざらめや?

心、および、諸法、ともに、自、他、共、無因にあらざるがゆえに、もし一刹那この菩提心をおこすより、万法、みな、増上縁となる。

おおよそ、発心、得道、みな、刹那、生滅するによるものなり。

もし刹那、生滅せずば、前刹那の悪、さるべからず。

前刹那の悪、いまだ、さらざれば、後刹那の善、いま、現、生すべからず。

この刹那の量は、ただ如来ひとり、あきらかに、しらせたまう。

一刹那心、能、起、一語。

一刹那語、能、説、一字。

も、ひとり如来のみなり。

余聖、不能なり。

おおよそ、壮士の一弾指のあいだに、六十五の刹那ありて、五蘊、生滅すれども、凡夫、かつて不覚不知なり。

怛刹那の量よりは、凡夫も、これをしれり。

一日一夜をふるあいだに、六十四億九万九千九百八十の刹那ありて、五蘊、ともに、生滅す。

しかあれども、凡夫、かつて覚知せず。

覚知せざるがゆえに、菩提心をおこさず。

仏法をしらず、仏法を信ぜざるものは、刹那、生滅の道理を信ぜざるなり。

もし如来の正法眼蔵、涅槃妙心をあきらむるがごときは、かならず、この刹那、生滅の道理を信ずるなり。

いま、われら、如来の説教にあうたてまつりて、暁了するに、にたれども、わずかに怛刹那より、これをしり、その道理、しかあるべし、と信受するのみなり。

世尊、所説の一切の法、あきらめず、しらざることも、刹那量をしらざるがごとし。

学者、みだりに貢高することなかれ。

極小をしらざるのみにあらず。極大をも、また、しらざるなり。

もし如来の道力によるときは、衆生、また、三千界をみる。

おおよそ、本有より中有にいたり、中有より当本有にいたる、みな、一刹那、一刹那に、うつりゆくなり。

かくのごとくして、わがこころにあらず、業にひかれて流転、生死すること、一刹那も、とどまらざるなり。

かくのごとく流転、生死する身心をもって、たちまちに自、未得度、先、度、他の菩提心をおこすべきなり。

たとえ発菩提心のみちに身心をおしむとも、生老病死して、ついに、我有なるべからず。

衆生の寿行、生滅して、とどまらず、すみやかなること、

世尊、在世、有、一比丘、来詣、仏所、頂礼双足、却、住、一面、白、世尊、言、

衆生、寿行、云何、速疾、生滅?


仏、言、

我、能、宣説、

汝、不能、知。


比丘、言、

頗、有、譬喩、能、顕示? 不?


仏、言、

有。

今、為、汝、説。

譬、如、四善射夫、各、執、弓箭、相背、あつまる、立、欲、射、四方、

有、一捷夫、来、語、之、曰、

汝等、今、可、一時、放、箭、

我、能、遍、接、倶、令、不堕。


於、意、云何?

此、捷疾? 不?


比丘、白、仏、言、

甚疾。

世尊。


仏、言、

彼人、捷疾、不及、地行夜叉。

地行夜叉、捷疾、不及、空行夜叉。

空行夜叉、捷疾、不及、四天王天、捷疾。

彼天、捷疾、不及、日、月、二輪、捷疾。

日、月、二輪、捷疾、不及、堅行天子、捷疾。此、是、導引日月輪車者。

此等、諸天、展転、捷疾。

寿行、生滅、捷疾、於、彼。

刹那、流転。

無有、暫、停。


われらが寿行、生滅、刹那、流転、捷疾なること、かくのごとし。

念念のあいだ、行者、この道理をわするることなかれ。

この刹那、生滅、流転、捷疾にありながら、もし自、未得度、先、度、他の一念をおこすごときは、久遠の寿量、たちまちに現在前するなり。

三世十方の諸仏、ならびに、七仏世尊、および、西天二十八祖、東地六祖、乃至、伝、仏、正法眼蔵、涅槃妙心の祖師、みな、ともに、菩提心を保任せり。

いまだ菩提心をおこさざるは、祖師にあらず。


禅苑清規、一百二十問、云、

発、悟、菩提心? 否?


あきらかに、しるべし、仏祖の学道、かならず、菩提心を発、悟するをさきとせり、ということ。

これ、すなわち、仏祖の常法なり。

発、悟す、というは、暁了なり。

これ、大覚にはあらず。

たとえ十地を頓、証せるも、なお、これ、菩薩なり。

西天二十八祖、唐土六祖、等、および、諸大祖師は、これ、菩薩なり。

ほとけにあらず。

声聞、辟支仏、等にあらず。

いまのよにある参学のともがら、菩薩なり、声聞にあらずということ、あきらめ、しれるともがら、一人もなし。

ただ、みだりに衲僧、衲子と自称して、その真実をしらざるによりて、みだりがわしくせり。

あわれむべし、澆季、祖道、廃せることを。

しかあれば、すなわち、たとえ在家にもあれ、たとえ出家にもあれ、あるいは、天上にもあれ、あるいは、人間にもあれ、苦にありというとも、楽にありというとも、はやく自、未得度、先、度、他の心をおこすべし。

衆生界は、有辺、無辺にあらざれども、先、度、一切衆生の心をおこすなり。

これ、すなわち、菩提心なり。

一生補処菩薩、まさに、閻浮提に、くだらんとするとき、覩史多天の諸天のために、最後の教をほどこすに、いわく、

菩提心、是、法明門。

不断、三宝、故。


あきらかに、しりぬ、三宝の不断は、菩提心のちからなり、ということを。

菩提心をおこしてのち、かたく守護し、退転なかるべし。


仏、言、

云何、菩薩、守護、一事?

謂、

菩提心。

菩薩摩訶薩、常、勤、守護、是菩提心。

猶、如、世人、守護、一子。

亦、如、瞎者、護、余一目。

如、行、曠野、守護、導者。

菩薩、守護、菩提心、亦復、如是。

因、護、如是、菩提心、故、得、阿耨多羅三藐三菩提。

因、得、阿耨多羅三藐三菩提、故、常楽我浄、具足、而、有。即是、無上、大般涅槃。

是故、菩薩、守護、一法。


菩提心をまもらんこと、仏、語、あきらかに、かくのごとし。

守護して退転なからしむる、ゆえは、

世間の常法に、いわく、

たとえ生ずれども、熟せざるもの、三種あり。

いわく、

魚子。

菴羅果。

発心、菩薩。

なり。

おおよそ、退失するもの、おおきがゆえに、われも退失とならんことをかねてより、おそるるなり。

このゆえに、菩提心を守護するなり。

菩薩の初心のとき、菩提心を退転すること、おおくは、正師にあわざるによる。

正師にあわざれば、正法をきかず。

正法をきかざれば、おそらくは、因果を撥無し、解脱を撥無し、三宝を撥無し、三世、等の諸法を撥無す。

いたずらに現在の五欲に貪著して、前途、菩提の功徳を失す。

あるいは、天魔波旬、等、行者をさまたげんがために、仏形に化し、父、母、師匠、乃至、親族、諸天等のかたちを現じて、きたり、ちかづきて、菩薩にむかいて、こしらえ、すすめて、いわく、

仏道、長遠。

久、受、諸苦。

もっとも、うれうべし。

しかじ、まず、われ、生死を解脱し、のちに、衆生をわたさんには。


行者、このかたらいをききて、菩提心を退し、菩薩の行を退す。

まさに、しるべし。

かくのごとくの説は、すなわち、これ、魔説なり。

菩薩、しりて、したがうことなかれ。

もっぱら自、未得度、先、度、他の行願を退転せざるべし。

自、未得度、先、度、他の行願にそむかんがごときは、これ、魔説、としるべし、外道説としるべし、悪友としるべし。

さらに、したがうことなかれ。


魔、有、四種。

一、煩悩魔。

二、五衆魔。

三、死魔。

四、天子魔。


煩悩魔、者、

所謂、百八煩悩、等。

分別、八万四千、諸煩悩。


五衆魔、者、

是、煩悩、和合、因縁。

得、是身、四大、及、四大、造、色、眼根、等、色、是、名、色衆。

百八煩悩、等、諸、受、和合、名、為、受衆。

大小、無量所有、想、分別、和合、名、為、想衆。

因、好醜心、発、能、起、貪欲、瞋恚、等、心、相応、不相応、法、名、為、行衆。

六情、六塵、和合、故、生、六識。是六識、分別、和合、無量、無辺心、是、名、識衆。


死魔、者、

無常因縁、故、破、相続五衆寿命、尽、離、三法、識熱寿、故、名、為、死魔。


天子魔、者、

欲界主、深、著、世楽、用有所得、故、生、邪見、憎、嫉、一切賢聖涅槃道法、是、名、天子魔。


魔、是、天竺語。

秦言、能奪命者。

唯、死魔、実、能、奪、命。

余者、亦、能、作、奪命因縁、亦、奪智慧命。

是故、名、殺者。


問、曰、

一、五衆魔、摂、三種魔。

何以故、別、説、四?


答、曰、

実、是、一魔。

分別、其義、故、有、四。


上来、これ、龍樹祖師の施設なり。

行者、しりて勤学すべし。

いたずらに魔嬈をこうむりて、菩提心を退転せざれ。

これ、守護、菩提心なり。


正法眼蔵 発菩提心

爾時、寛元二年甲辰、二月十四日、在、越州、吉田県、吉峰精舎、示、衆。

建長七年乙卯、四月九日、以、御草案、書写、了。    懐弉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ