第七十六話 俺かもしくは俺以外
90万体を超えた辺りから何体殺したか数えてない。
もう数えきれなかった。万まで頑張った僕を褒めてもらいたい。
肩で息をして、最後の1体を首を絞めて殺す。
全身が痛い。第六段階に身体が耐えられなかった。全身の骨という骨が折れていく感覚がある。痛い! 痛い! 痛い! 痛い! 痛い!
ダメだ、甘えるなジャリィ・〝ホープ〟・シルクゴッド!
お前はこの世界で現時点において誰よりも強い!
助けを乞うて甘えるな! いままでも気合いでなんとかなった!
どんな困難があっても気合いでなんとか乗りきった!
「ハァー……ハァー……」
立てる。まだ立てる。立てるなら歩けるか。
ああ、ダメだ。倒れてしまう。
右脚がもう蛇腹みたいになってしまった。
「…………なんなんだこの世界……」
この間からすこしずつ思うことがあるんだ。
例えば自分がもっと賢い人間だったらって。
例えばもっと賢ければ知略で戦える人間になれる。
でも僕は馬鹿だ。察しは悪いし、間が悪い。それに何て言っても卑屈野郎。
もっと賢く生きられる人間だったら、またなにか変わったのかも。
『無理でしょ』
幽霊クロノだ。
…………無理とか言うなよ。できたかもしれないって話なのに。
『無理だよ。あんたは、賢くてもきっと察しが悪くて間も悪い卑屈野郎』
どういう事だよ。僕めちゃくちゃ頑張ったのにめちゃくちゃ罵倒されてます。これもうイジメと言っても過言ではないな。
訴えれば勝てそう。幽霊って訴えられるかな?
どうだろ? もともと人間な訳だから、できなくもないかも。
『あなたは何処でも馬鹿野郎』
ひど過ぎるだろ。
『ほら、ナタナエルちゃん来たよ』
「おん……?」
顔をあげて見てみれば、ナタナエルが走ってきていた。
駆け寄るとかじゃなくて、マジの長距離走のフォーム。
おもしろ。シュール過ぎる。
「シルクゴッド!」
「あいつらめちゃくちゃ雑魚っしたよ」
「生きててよかった」
「なんとか、だけどね……痛いからあまり触らないで」
「どうして頼ってくれなかったの」
「どうしてって……戦えないだろ」
「たしかに……」
納得してて面白い。
「これから戦えるようになる。なんせ私たちは若いから。何処までも成長できる」
「若くない人に怒られちゃうよ~」
「勝手に老けたその人が悪い」
老けるのは仕方ないだろ。
「課題だな」
ロジオさんの声。
その声の方を向くと、ロジオさんがユダさんに肩を貸されていた。
「あれ、治ってない」
「あまり治癒できなかった。もうかなり進行してる」
「あ、ああ……」
なんか、ようやく見つけた自分の死はクラウチングスタートですぐに死ねる状況にあるとか考えただけで悲しすぎる。しなないでほしい。
「なんとか治せないんですか。ロジオさんのやつ」
「いや、無理だった。悪神ならまだしも……俺、概念に嫌われちゃったから、生きてる限り付き纏って来るやつだよ、これ」
「そうなんですか。……じゃあこれからどうなるんです? もう目的達成しましたよね」
「目的?」
「仲間との再開。半身とも会ったし。ほら、僕のこと」
「たしかに」
「コクっちゃえよ!」
「なんだこのこ……っていうか、はやく治してやってくれ。脚がストローみたいになってる」
ひどい例え方だ。
ユダさんは僕の怪我を治してくれた。しかし、問題が発生。
「……魂が欠けてる」
「魂が……?」
「なんか悪いことあるんすか?」
シモンがマシューとやってきた。パンと水を持ってる。
「脚は治らない……」
「えぇ……」
「シルクゴッド……! 海上でレストランやろう!」
「馬鹿にされてる? やらないよ、僕は冒険者として生きたいんだ!」
「脚以外のすべてをとりあえず治そう。治癒薬が必要なレベルの怪我だぞお前~!」
「すいません、すいません、殴んないで。痛すぎる」
「あ!」
「今度はなんすか」
「治癒薬がない」
「あのさ~」
「ここにあるよ」
あ、トマスさんだ。
「おはようございます」
「うん。おはよう。これで間に合うかな、ジョーヌくん」
「ありがとう。でも、用意周到だなあ」
「アンデレくんが持ってきてくれた」
「アンデレ?」
「君はまだ見ぬ俺の仲間だ」
ロジオさんが悪戯のように笑った。
「とりあえず治れ!」
治った。
「痛くないから抱き着いていいよ」
抱き着かれた。
「くるしーい」
「義足作れる奴いねーかなー」
「あ、シモン。義足に銃仕込みたい」
「馬鹿お前。剣にしとけ」
「剣とか近距離専用武器ダサダサだよ」
「お? ウンコかお前。もう片方も潰すぞ腐れウンコ!」
「キレ過ぎじゃね?」
「…………」




