第七十二話 特別な経験値を
「どうした? ジャリィ」
「いや、なんでも……なんでもないです」
「休憩しようか」
「あっ、やっ、時間もない筈なのでいいです」
「ダメだ。休憩しよう。身が入ってないじゃないか。あんな話をした俺も悪かったが……強くなるには良いタイミングで休むことだよ。たまたまそのタイミングだったんだ。そういうことにしよう」
ロジオさんは悪戯っ子みたいな笑みを浮かべて、弁当箱を出した。マツエユウイチ殺人事件でなにがあったのだろう。
「ロジオさんは」
「ん?」
「強いですよね」
「そうだぜ。俺は最強なんだ」
「どうしてそんなに大きくなれたんですか?」
「なんでだろうなぁ……」
ロジオさんは困った様に言う。
「誰にも負けないくらい強くならなきゃいけなかったからなあ」
あまり深く追求してはいけないんだろう、と思った。
僕は察しが悪いらしいからこんなことを理解するのに時間がかかってしまった。
「ジャリィ」
「なんです?」
「君の強み、教えてあげようか」
「括約筋ですか?」
「違うが……。君は本当に察しが悪いんだなあ……」
虚神兵団はいったいいつ来るのだろう。
奴らがくるまでに強くならないといけない。
身体を鍛えて、誰よりも強くならないといけない。
「うーん……あっ、美味しいねえ。こいつァ」
「っすねぇ……頭上がんねぇっす」
「だねぇ」
幽霊クロノがいつもより薄く現れた。水筒に口をつけながらその様子を見つづける。せつない顔をしてる。
「やっぱあんた誰が見てもわかるくらい疲れてんじゃないっすかねぇ……最近寝てます?」
「寝てる寝てる。それはもう21時間くらい」
「あんただけ1日45時間くらいなのかな。もう最年少だろ」
『ロジオ』
知り合いなんだなあ。
「とりあえず勝ちましょうね! 僕それはもう強くなるんで!」
「それは頼もしいな。じゃあ課題をあげよう」
「ウッス!」
「〝戦猫覚の閃技〟を習得してもらう」
「……なんすかそれ」
「俺達共通して【学習能力】のスキルを持ってるだろ? だからそいつを利用する。このままじゃあんまり学習してるって感覚がないもんね。肉体に……俺がこの数年で蓄えた戦闘経験やありとあらゆる経験の諸々を混ぜ合わせた『経験値』がある」
「っすね」
金色に光り輝いている。
「経験を共有する。俺は強いままで、君も強くなれる。共通して【学習能力】を持つからこそ継承できる……特別製だ。受け取ってくれるかい?」
迷いなく、それに触れる。身体の中に風が吹く。
身体の中で風のエネルギーが暴れている。
「でも、僕逆張り偏屈陰キャなんでちょっとやりたいこともやっていいですか?」
「構わない」
【学習能力】第一段階の拡大解釈──発動。
あまり簡単には発動できない能力だ。
ロンギヌスに魂を同期されてようやく使えるようになったものだ。
それで身体中の特別な経験値に触れる。
「僕の中のこのエネルギーは力を望む善良な者に必ず訪れるプレゼントであるべきだ……」
「君、そりゃあ……」
ロジオさんはとても嬉しそうにしていた。
「いかしてる」
んで。〝戦猫覚の閃技〟とは?
簡単に言うと、先ほどスキルに変化してしまったばかりの経験値群が持つ膨大なスキルをうまく使いこなせるようになれ、とのこと。
たぶん戦闘経験が大部分をしめてる。
僕めちゃくちゃ戦闘センスいい方だから、大丈夫大丈夫! 行ける行ける!
「まずは出力1%から行くべきだ」
「なら5%でいかせていただきます!」
「イカレてんのか……?」
発動。




