第七十話 イカレ
「いてェェェェ! いてェよォォォォ! 腹に穴開いたよォォ!! 内臓がないぞォォォォ!!」
「うまいこと言わんでええねんアホ」
「ロジィ……! 治らない! 【神聖治癒】なのに、治らない!」
「なんで……」
ロンギヌスが笑う。
「魂を同期したよォォ。その女がジャリィくんを治せば治す度に私が治るよ! 治ったらそこの初老を殺して後ろのふたりを殺そう。そうしたら次に女を殺すよ~」
「その前にお前を殺すよ」
「無理だよ」
「小規模な健忘症にでもかかったか?」
「君こそ! 小規模の健忘症にかかったか!? 魂を同期したって言ったろー!?」
ちなみに、僕の懐にはナイフがある。
沈黙が続く。
「お前を殺せば……」
「ああ! 君の好きなジャリィちゃんも死ぬ! かわいそうに! あはは!」
「テメェ……人間の屑がこの野郎あ……!」
「君たちは命を重く見すぎなのさ!」
◆
「あははは!」
ロンギヌスが高笑う。ギチギチに脳髄が振るえていく。
怒りがふつふつと沸いていく。脳汁が沸騰していく。
「ロジィ」
ユダが俺の名を呼ぶ。
「気にしなくていいのかい!?」
「ロジィ」
「なに……!」
「そいつ殺していいよ」
ユダと目が合って、ジャリィを見てから、頭を踏み潰した。
魂が地面に向かっていく。
死んだことを確認してからユダが【神聖治癒】を開始した。
「イカレてるぜジャリィ!」
自殺したのだ。最後の力を振り絞って心臓にナイフを突き立てたんだ。確実に死ぬために、確実にロンギヌスを殺すために、何度も抜いて刺して抜いて刺した。
「イカレてんだよ、そいつ」
シモンが言う。
「そいつ自身もわかってないし、みんなもわかってないけど、実は狂ってるんだよ。そいつ……『悪人なら殴られても仕方ないからなあ』って理由で何度も女子供も殴れる奴なんだよ……真顔で。だから冒険者に適してると思ったんだ。この学校に薦めたの俺なんだよ。いい奴なんだよ、そいつ……。だから……なあ、ニューゴッド先生。俺、そいつがこれからももっとそうなっていくなら、俺そいつ貼付けにしてでも俺のそばに置いておきたい」
シモンがジャリィに駆け寄って、頬を撫でている。
「これからもっとこうなるなら、これからもっと自決でもするような手段を取るなら、俺もうあんたのこと嫌いになりそうだ」
「悪い。巻き込む。……というより、俺とそいつが問題の中心だ」
「わかってるよ。わかってるけどさぁ……!」
「シモン。これから先、必ず胸張って大丈夫だって言えるようにする」
頭を下げると、マシューが小さく「かわったねえ」と言った。
「命を懸けて護り抜く。俺にとってこの少年は、大いなる友人であり、そして護るべき未来でもある! だからどうか君の親友、俺に預けてくれないか」
これまでにいろいろあった。頂点に連れていきたいと思った人を自分の手で殺した。此処に来るまでの旅路で、何回も間違えてきた。
自分の強さよりも自分の弱さを多く見てしまった。
「ロジオさん……」
「ジャリィ。初生き返りはどうだ?」
「すいません、わかんないです」
「ジャリィ。次はない。ユダの【神聖治癒】も絶対やない。二度とやらんでくれ。頼むから。二度やらないと約束してくれ」
「……すいません。これしかないと思ったのでやりました」
「そうか。……正解ではあったが……不正解だ。〝死んだらあかんし泣かせたらあかん〟……肝に銘じてくれたら嬉しい」
沈黙に堪えられないだろうな。頑張るしかないか。
「んじゃあ! とりあえずお前さんら飯行かん? てか反省してる?」
「えぐるなえぐるな、ナンパのノリで」
「んまぁどうでも良くね? 飯行こうや。いいでしょ。俺一番うまい飯知ってるから」
「どうせウンコだわ」
「違うが。わら。ウサギじゃないんだわ。無論、コアラでもないっす~」
いまは飯を食って忘れるべきだ。ただ疲れた身体に、エネルギーを。
裏S区読んでて「人を笑わせる芸人」と「恐怖を餌にする怪異」が戦う話思いつきました。異能力バトるものにするつもりで、芸人は「芸」を使います。
誰か使っていいですよ
俺はおもしろくできないので。




