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第五十六話 帰路へ

 肩で呼吸をする彼のヘルメットはバラバラになって床に落っこちた。彼は両手首から赤い光を漏らしながら、膝に手を突いている。


「どうして此処に来てるってわかったの」

「ロジオさんに聞いた。何か様子がおかしいって。本当はロジオさんが来ればよかったんだろうけれど……あの人、孤独感故の発作とかでパニック症状起こしちゃったから、医務室に預けて僕だけで来た……! もうひとつ言うけどね、ナタナエル! 本当に……間に合ってよかった……!」


 彼の黒髪が月明かりに照らされる。見惚れていると、下から声がした。シモン・H・フルリエイタの声だ。ふたりで覗いてみると、ロジオさんに抱えられていた。


「心配で見に来たけど、大丈夫そうでよかった」

「おかげさまで。そいつどうしたんですか?」

「君の心配さ! さすがに領主殴りに行った訳だからね。何かあったら気が気でないから事の顛末を見に行くとかいってたから連れてきた」

「あんたは大丈夫なんですか?」

「ああ! 大丈夫!」

「彼なにかあるのか? 心の病気とか」

「仲間とはぐれて此処に行き着いたんだよ。あの人多分仲間が大好きなんだなあ。早く会えるといいよねー。海で遭難だから……生きてるか怪しいけど」

「そうだね」


 しばらく黙ってから、私たちは下におりた。

 彼はシモン・H・フルリエイタと漫才じみた会話をして、それをロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッドが笑って宥める。

 私はそれを後ろからついてあるいた。


「ふーっ、夜は本当に周りが見えなくていけないや」

「奇遇。僕もです」


 黒髪黒目のふたりは懐から眼鏡を出すそぶりをして、ボロボロのゴミを取り出した。


「なんでぇそいつは。ゴミかな?」

「多分パニックになってた時だなぁ……」

「僕は多分天井蹴り飛ばしたときだ……」


 かわいそうに。


「まぁ〝深狼覚の閃技〟があるからいいわ」

「僕は〝閃技〟まだ習得してねンだわ」

「は? お前まだなの? 時間あったよね。何してたのんだよ?」

「おっとシモン。イキってはいけない」

「でも割と簡単だったろ〝閃技〟覚えるの」

「ほんとかぁ? 苦戦中だぜ?」

「ウンコの捻り調節する感覚で行けや」

「なんだその例えは」

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