第五十二話 一型と二型
というわけで、僕たち学生は〝閃技〟を覚えることになった。
ロジオさんは他の時間割でも「〝閃技〟を覚えろ」と言った。〝閃技〟は索敵やステータス偽造だけが利点じゃない。
〝閃技〟はスキルではなくいわゆる技術。片手でタマゴを割れたり、ケーキを6等分できたり、そういう技術の最上位。
だから、ステータスの「スキル欄」には表示されない。
つまり、隠し手になる。
魔力を操作しなければいけない。魔力操作なんて考えたことがなかった。
魔力といえば、「スキルを使うときに消費するエネルギー」という認識。
だから扱おうなんて考えたことがなかった。
考えてみればそうなんだ。モンスターは魔力で身体能力を強化してる。
モンスターは魔力を操作しているんだ。
つまり、魔力は操作できるものなんだ。
だから、扱おうと思えば人間でも魔力は扱える。
だけど……!
17年間扱おうなんて事考えてなかった!
いきなり「扱えるようになってろ」なんて言われてもわからない!
「痛い……!」
魔力を体の中で練ろうとする度に体の中に悪いエネルギーが蓄積されて身体が軋んで傷んでいく!
「身体が追いつかない……!」
魔力の練り方を変えろ。僕は黒髪黒目。他の人とは持っている色素が違う。身体の作りがわずかに違う。どう変わっている。把握しろ。身体の根底。身体の根底。身体の根底。身体の──……。
『ジャリィ』
女の子の声。クロノと名乗る少女の幽霊。
『【学習能力】、第一段階にしなよ』
ドクン! と心臓が高鳴り、ステータスの【学習能力】の横には星がひとつ加わっていく。ジワジワと色が濃くなる。能力が使えるようになる。【学習能力】の表記が変わっていく。
「なんだ、これ……」
というところに、ロジオさんがやってきた。
「ジャリィ! おかしなことないか!?」
「ロジオさん! あの、【学習能力】の表記がかわりました!」
「俺もっす~」
ロジオさんの【学習能力】は【学習能力支配一型】 に。そして、僕の【学習能力】は【学習能力秩序二型】に。【学習能力秩序二型】の能力──……。
「は、アァッ!?」
「どうした?」
「第五段階になりました! 僕のスキル!」
「なんだって?」
結果、ロジオさんの【学習能力支配一型】も第五段階に上っていた。
それに伴って派生し得た能力はそれぞれ同じ。
「スキルの学習……」
ロジオさんが呟く。
スキルの学習。学習したスキルは「模倣」することができる。
見て触れ感じたスキルにのみ。段階がないから本物よりは劣る。一度に複数のスキルを模倣することもできて、一度に両立できる模倣は3つまで。
模倣したスキルは一度の学習で「30回」まで使える。
模倣したスキルがステータスに表記されることはない。
これも隠し手に使える。
『大きくなったなあ、ロジオ』
「あっ、待てよ! 第五段階になったって事は……ジャリィ! ポーズとってみて! こんな感じの!」
ロジオさんの真似をすると、フルフェイスのヘルメットが落ちた。それを拾う前に幽霊クロノがそれに触れる。すると黒かったヘルメットが真っ白になる。金色の十字は銀色になった。
「これ、十字架のところマジックミラーみたいになってます!」
「………………」
ロジオさんは少し困惑したような、泣きそうな顔を上げて笑顔を作る。
「よっ! マジックミラーマン!」
「いじめですか?」
「ロージロジロジ」
だから、一体なんなんだその笑い方は。




