第五十一話 〝閃技〟
ロジオさんは本物の強者である。魂が震えて、その余波が声になった。
「でもまぁ、そんな気張らんでええよ。俺そいつ嫌いだから殴っただけやし。でも学習できたやろ。できたよなあ。出来てなきゃおかしいよ……だって俺優しく教えてあげたもん。なんでわからんのやろ。まま、ええわ。お前らにまず学んで貰うことはひとぉーつ。最初のステップやからなあ。難しくしたらあかんわ」
ロジオさんはスケッチブックに筆で文字を書いた。それをばんと此方に見せて、その文字を読み上げる。
「〝群竜覚の閃技〟をおぼえよー。わかるか? 〝群竜覚の閃技〟……。……? あれ、わかんない? あの、シャーリー先生。ここってないんすか?」
「私も初めて聞きましたが……」
「あー……じゃあ俺の故郷特有のあれっすわ。でも役立つからおぼえといてな。マーカス・ウェリウッコくんにはあとで誰かが教えてやりなさい。いいですかー。そもそも〝閃技〟とは、閃きの技と書いて〝閃技〟と言います。えーっとですね。まぁ要するに『戦いに役立つ便利なライフハック』みたいな奴です。ライフハックや言うて侮ってると痛い目見んで。〝閃技〟にはふたつ有りますんで、メモっといてな。ひとつは魔力を地面や空気中に浅く広く硬く流して索敵をする〝深狼覚の閃技〟。暗い場所で目が利かない時に役立ちます。でも失敗すると魔力を辿って此方がばれます。危ないねー。んで、もうひとつは、この世にゃ【看破】っつーステータスを見てくるクソスキルあるやろ。それ対策の〝閃技〟。それが〝群竜覚の閃技〟や。〝群竜覚の閃技〟はステータスに魔力を流して表記を変える技術。今の俺のステータスはこれやけど……」
ロジオさんはステータスを出した。
ロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッド レベル5800
腕力 6700
脚力 6700
知力 30
器用 200
スキル
UR【学習能力】★★★★
「〝群竜覚の閃技〟を解除するとこうなります」
ロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッド レベルMAX
腕力 7777777777777777777
脚力 7777777777777777777
知力 30
器用 5000
スキル
UR【学習能力】★★★★
【孤神の系譜】★★
「えっ!」
その声をあげたのはシャーリー先生だった。僕たちは驚きすぎて声が出せなかったのだ。
「【孤神の系譜】って特別なスキルだからステータスに表示されないんじゃ」
「俺は神の子の転生体だから、去年から表示する様にしてるんすよ」
神の子の転生体?
「あの」
ステータスを見ていて、ふと不気味に思ったので手を挙げる。すると、ロジオさんは嬉しそうに微笑んでから「なんや」と不思議なイントネーションでこたえてくれた。
「腕力のところ……『7』がびっくりするほど流れてますけど、その値で殴ったら、マーカスは死ぬんじゃないですか。……でも、なんで」
「マーカスくんな。ああ、はずかったから言わんとこ思っとったんやけど、言わなあかんな。彼はすごいよ。才能の塊だ。普通の【神聖壁】見たやろ。対象を包むような円形のエネルギー層を作り出すスキル。でも、彼は俺の拳がテメェの【神聖壁】をちょっとばかし破ったのを見るや否や、それを解除して、『拳の軌道』を読んで、その軌道上に何回も何回も【神聖壁】を楕円形に広げて、層を作ることで、威力を殺しやがった。逸材なんやろなあ」
しみじみ、というフウに言う。
「あ、でもマーカスくん以外の4人は才能のかけらもないクズやから……恥、知ろな。フォローではないかも知れへんけど才能のないクズだってのもあんま気にするなよ。人間なんてたいてい才能ないクズだ。恥は知ろな。せやけど、才能よりも強いもんがあんねん。なんだかわかるか? カール・フルーカヌくん」
「……………………………わかりません」
「潔くてよし。才能よりも強いもん、それはなぁ。努力や。努力は他の何にも変えられない経験値になる。お前らが当たり前みたいに握って振るえる剣はお前らがこれまでに努力したからや。お前らが当たり前みたいにやってるすべての言動が努力の結果や。でも注意しとくけど、ステータスの数字の多さイコール努力量と違うで。ステータスは所詮ステータスや。『強さの最低値』を表示してるだけ。昔はそれで苦労したなあ。俺こんな髪と目やから親にも嫌われてていじめられてた。女の子もいるからあんま話せへんけどな」




