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第五十話 平人類共

 翌日になって5時間目の授業は戦闘訓練だった。

 戦闘訓練の授業の副担当になったロジオさんが自己紹介をすると、受講している生徒の内の何人かがにやにやとした。

 ロジオさんは僕と同じ黒髪に黒目。人間として出来損ないと言われる人間はだいたい黒髪黒目だ。

 それに、それでなくとも、ロジオさんは覇気のない顔をしている。心なしかテンションが低い様な気がする。もとのテンション知らないけど。

 あとは体格も関係していると思う。

 長身だけれど細身で、多少筋肉はあるけれど、多少だ。


「それでは、ニューゴッド先生から挨拶を」


 ロジオさんがひとつお辞儀をしてから、話を始める。


「マーカス・ウェリウッコくん。ジャック・タンカスくん。カール・フルーカヌくん。キリコ・アカラースくん。リリィ・マーリングスさん。ここが戦場だったら君達は死んでるね」


 名指しされた5人は眉間にシワを寄せた。


「一見して得られた浅い情報だけで対面する人間の力量を推し量れたと思ってニヤニヤしていて大変興味深い反応だ、と思った。そうだなあ。マーカス・ウェリウッコくん。君は右利きだ。朝食はパン。2分50秒焼いたパンを左の手で持って食べた。右手にはきっとフォークがあった。普段君は左手に腕時計をかけている。微細ながら左手首に凹みがあるし、手首の回し方を見てみても、君は左手に腕時計。だから右利きだと推測する。最近背骨を痛めている。恐らく捻れているからはやく医者に見てもらえ。視力は右がわずかに悪い。恐らく夜間光の下で読み物をする際に左目を閉じる癖がある」

「だからなんすか~?」

「こういうフウに人を観察しないといけない」

「善処しまーす」

「善処はしなくていいよ」

「は?」

「どうせ大成できないだろ。才能ないもん」

「アァ!? 黙って聞いてりゃテメェ」

「じゃあさ、いまから全力に戻るから察してみて」


 その途端に、誰も呼吸が出来なくなった。まるで自分はすべての脚をもがれたダニで、ロジオさんはレベル1000のドラゴンであるように思えた。

 訂正する。先ほど「誰も」と言ったが、違った。ロジオさんが名前を挙げた5人は今だへらへらとしていた。実力を知ってなお、というフウではなく、まるきり力量を計れないマヌケの図……!


「全力出せよ~」

「今から殴るね」

「【神聖壁】使いまーす」


 マーカスの【神聖壁】は発動しなかった。そして、マーカスは頭から血を流して倒れ込んだ。たちまち血の池が出来上がる大怪我を負った。


「やりすぎですよニューゴッドさん!!」

「やりすぎやって。それお前らが信用されてへん証拠やないか。ええか? 俺はお前らのこと信用したいねん。わかるかァ? 俺はお前らの事信用するからァ……全力で殴るし、小賢しいガキはぶっ殺す」

「犯罪者だ!」


 リリィ・マーリングスが叫んだ。


「ようわかったなぁ。俺の懸賞金見てみィ」


 手配書が落ちる。世界連合政府が発行する偽造不可能の実物。


 ロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッド

 懸賞金────────99兆9800億。


「ええかァ。ガキ共。校長先生の許可は得てるからナァ。文句吐かしたら殴るし蹴るしぶっ殺すゥ……校長先生泣いとったで。冒険者育成専門学校なのに誰一人強い奴が強い奴がおらんらしいやんけ。せやから拠点にする恩返しに強者を少しでも増やしとく事にしたんや。わかったらひざまづけや……平人類共」

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