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第四十話 君だったんだ

 処刑台がある。その上には〝蛇息〟の異名をつけられたブラシム・〝ホープ〟・デルタモルスという男がいる。ムライクラ王国を襲い、国民の8割を犠牲に国家転覆の罪を犯した大犯罪者。国際平等主義警察がやってくると、ムライクラとカンラーの国境で公開処刑が行われる。船長──ロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッドは処刑台の上のブラシムと睨み合っていた。


「そこからの景色はどうだい、ブラシム」

「君がちっぽけに見えるなあ」

「最後にまた一つ聞いていいか」

「なんだ」

「疑問なんだ。お前、本当にカンラーの為だけにムライクラを潰したのか?」

「ああそうだ。ムライクラの悪意ある政治は話が故郷カンラーを……」

「お前の故郷、俺と同じだよな」


 ブラシムが黙る。


「お前の故郷、俺と同じだよな」

「……そこまで調べたか。探偵か? 君は」

「俺の仲間が教えてくれた。……お前、ある男に唆されたろ」

「どうだったかなあ」


 ふたりの処刑人は威圧を放っている二人の会話を止めることをせずに、刀を持って、口を縫い合わせたように継ぐんでいる。


「その男は、ある罪人が『イエス・キリスト』なのではないかと勘繰っていたらしい。実際に証拠もあった。恐らくそうなのだろう。」


 横目で此方を見ながら、彼はまた語り出す。


「遥か昔に生まれ、そして昔々に殺された罪人はありとあらゆる世界に存在し生まれ出る男であった。その罪人を信仰していた男は、処刑の日に、罪人が死ぬと同時に生まれたふたりの黒髪黒目の赤子が、罪人の生まれ変わりでは無いのかと思い込んだ。黒髪黒目は昔から不遇の病。しかし一方はどうやら『レベルアップに必要な経験値が圧倒的に多すぎる』という有り触れた欠乏症。世界貴族である自らの息子と言うには余りにも神秘性の無い、たかだか糞の様な分際……そんでもって、罪人の生まれ変わりでもないであろう、と。故に息子を強く拒絶した。その一方、もうひとりの赤子は『レベルアップ条件が隠されユニークシリーズのひとつのスキルを持っている』という稀有な赤子。恐らくこれが罪人の生まれ変わりだと思った。では此方を育てよう。そうした。血の繋がった息子は森に放った。幼馴染と呼べる少女と仲良くなれば、拒絶の延長でいたぶり殺し、そして息子の前で犯した。息子の飯炊きの才を見て、少女の死体を調理させ、息子に食うよう促した。息子が盗賊にさらわれようともそれを構わないと言った。また別の者にさらわれて奴隷になっても。革命軍に拾われて、戦場から帰れど冷たい目は変わらない。俺がのうのうと生きていれどお前は年齢偽称で革命ごっこ。道理で腹が立つわけだ。そのくせテメェが俺より濃い人生を送ってるだなんて勘違い……! ただ屑に育てられただけだテメェは!」


 顔に傷痕が浮かんでいる。強い怒りをスイッチにして、傷痕が浮かんでしまう!


「もう一度聞く! お前の革命ごっこは『カンラーの為だけ』か!?」

「ああ! 大義だ!」

「大義じゃ人は殺せんやろがボケクソ野郎ォ!!」

「やかましいわダボハゼ野郎ォ!!」


 両者の脇に、二つの十字架のビジョンがあらわれた。ニューゴッドには金色のものが。ブラシムには真っ黒のものが。


 ふたりはそれを掴むと跳躍し、空中でぶつけ合った。


 ニューゴッドの新しいスキルかと考えて、すぐに「違う」とわかった。第三段階だ。ユニークシリーズ【学習能力】の第三段階。それは自らの運命を浮き彫りにさせるものである。ニューゴッドだけでなく、ぼくの運命も。大犯罪者の処刑は全世界に配信されている。通信(パイプ)を通る色を持つ魔力の粒子がガラス管と黒色のシートに映像を届ける。それはたいてい、何処にでもある。僕の生まれた故郷にも。言ってしまえば彼を裏切らなくてはいけなくなる。加入から最速で裏切ったんじゃ笑い話にもならなくなる。


 ああ、でも、恐らく。みんなが気づいてる。

 故郷のみんなが気づいてる。


「ニューゴッド……」


 君だったんだ、と。

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