第四話 落ちてたから
でもマジなレスしちまうと、ナラナビって割と盗賊向いてないんだよな。なんかチマチマ働く気質があるから無理にやるとなんか失敗しちまう。
「苦労人だねえ」
「親への労いか?」
「それは昨日の夜に済ませたよ。お前さ! お前、ぶっちゃけ自分が盗賊としてデカくなれるとか考えてないっしょ。40にもなってヒャッハーってバカじゃね? そういう歳でもないんだからそろそろ真面目に生きてみたら?」
「へー。お前転職うまいな。花火屋さんから職業安定所の職員さんか? 俺は社会からあぶれた根なし草よ。社会っつーのはカスだぜ。たまたま上手く生きていける造りに生まれた奴等がデケー顔してる。俺みたいなはみ出しモンにゃ目もくれない」
ぐいと顔を寄せられる。近いよー。
「まったく、はみ出しモンだからってより、みんながやってる努力をちょこっとやったくらいで誰かが認めてくれると思ってるような甘ちゃんだからじゃない? んだんだ言ってくれるお友達かこんでさ。あとお前根なし草っつってるけどマングローブよりデカい根をここに張ってんじゃん」
「死ね」
「え?」
「死ね」
そうしていると、パカラパカラと蹄の音が響いてきた。
「あーあ、〝来〟ちゃったねぇ。これでシャバとはおさらばだ」
「だったらてめーを巻き込んで死んでやろうか」
「犯罪者からいきなり英雄に昇格かな? レディ、手錠外してあげるからこっちおいで」
「鍵は俺の手の中だぜ!?」
ほんとにそうかな。
「俺をお前だと仮定すりゃ、そうかもね」
鍵は俺の手の中にある。
「いつの間に!?」
「落ちてたから拾った」
「糞が!」
「ハハハ」