第三十七話 ブラシム・〝ホープ〟・デルタモルス
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「ロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッドか」
ある暗がりの中。地下一階。そこにはいろいろな本が詰まれている。その山の中に一冊また加わる。「ニューゴッド船の連中」と乱雑にラベルが貼られている。その1ページ目。
「………………」
男の容姿はかぎりなく簡単なもの。黒髪に黒目。背丈は大きく6尺と5寸。黒髪黒目には呪いがかかっている。黒髪黒目に生まれる人間には生れつきに「成長性」というものが欠如しているとされている。たとえばロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッドも黒髪黒目だが、「膨大な量の経験値が必要になる」という制限がある。この男はそもそも経験値が入らない。レベルアップは秘匿された条件を満たすことで上がる仕組みになっている。
そのかわり、唯一持っているスキルはとても強力である。
その名もユニークシリーズのひとつ、【般化能力】という。「未学習の事柄においても的確あるいは限りなく正しい答えを導き出す」という能力であり、そして、その答えを行動に組み込み、実践する能力でもある。例えばボールが跳ねたとすれば「ボールを取る」あるいは「ボールを動かす」という様な、予測立てた行動デッキの構築をすることができるようになる。そんなものは誰もが勝手に出来る事だが、例えば反応できない速度でそれが来た場合、答えを導いてさえいれば、それは無尽蔵に飛び交う弾丸でさえ、適切に当然のように動ける様になる。拡大解釈的な使用も可能らしく、例えば「弾丸が肌に触れる瞬間だけ糞になる」という事柄が正しい答えだという暗示的な認識さえすれば、ただそれだけでそれを叶える事ができる。
「戦いは見た」
まるでふざけていたが、まるきり自分と同じ様な現象を起こしているではないか。男は眉間にシワを寄せた。
「元革命軍所属。〝風渡り〟のロジオ。奴隷経験もあるのか」
ふむ、と。唸ると立ち上がり、青いギターを背に負った。男の名前はブラシム・〝ホープ〟・デルタモルス。まるで昔の自分と全く同じ性格をしているから。もしかしたら、気が合うかもしれない。──そんなふうに思った。




