第二十九話 ユダ・ジョーヌ
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目を覚ますと、マシューとトマス、ハルクス村の面々が顔を覗き込んでいた。
「ありゃ、俺ァ一回死んじゃったかな」
「死ぬ一歩手前だったってよ」
「ありゃりゃ。でもなんで今生きてるんだろう?」
マシューがある男を前に差し出してきた。男? 男だと思う。男っぽい声をしてたから勝手な憶測。中性的な面してらぁ。
「この人が【神聖治癒】で心臓を生かしながら飛び散ったあんたを集めて【神聖治癒】で治してくれたんだよ」
「いやあ、はは……でも、顔は損傷が激しく、傷痕が残ってしまった。いまは隠せているけれど、あんたの魔力に反応して顔の傷痕が現れてしまう」
「顔に傷のある男はカッケーって相場が決まってるからええよ。鏡ちょーだい」
村のガキから借りた鏡を見てみる。【学習能力】を発動させてみると、2本の線が目の下から顎下にかけて伸びていた。
「かっけェ……」
「えぇ……」
「ま! っつー訳だから気にしなくていーよ! つかお前名前は? ダチにならん?」
「えぇ、いや……いいけど……」
「俺はロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッド。めっちゃ天才」
「僕は……ユダ。ユダ・ジョーヌ」
「この村の人間?」
「いや、僕は旅人だ。ある人間を捜している」
「うちのトマスと同じかな? 案外同じ奴捜してたりして。お似合いのふたり~!」
「ノリきしょ」
マシューが病み上がりにちくちく言葉言ってる。最低だと思います。
「じゃあ、試しに聞いてみようか」
「俺顔広いから案外知ってっかもな。聞いてみ? 奴隷界隈と革命界隈に詳しいぜ」
「なんだそのディープスポット」
「イエス・キリスト? という男にかわる人間がこの世界に生まれているらしいんだ。それを見つけださなければいけない。僕はその役割を持っている」
「たいへんなお仕事ね。それなりの報酬は貰えんでしょ? モチンチン」
「30枚の銀貨だ」
「それマジ? 3万チェガって事になるけど。アホくさくね? いるかもわからない奴捜してあちこち歩き回って3万ってマジ?」
「ユダくんさぁ、それブラック企業だよ」
「…………」
トマスは俺を見ている。なんすか。
「でも、教会の言うことは、絶対なんだ」
「腰抜け!」
「マシューちょっとセカンドパワハラすぎん?」
「〝パワハラ〟のマシューで有名よ」
「ウワ~! 社会に出ないで欲し~!」
ユダっちはぼそっと。
「その通りだよ」と言っていた。
なんか楽させてやりてェ。
「俺たちの船乗れよ」
「惚れた?」
「なんですか。ダチを船に誘っちゃ駄目なんですか! 船長差別です! 差別を取りやめてください! 船長に人権を!」
「脳みそ25グラムしかなさそう」
怒られるからやめた方がいい。




