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第二十九話 ユダ・ジョーヌ

 ◆


 目を覚ますと、マシューとトマス、ハルクス村の面々が顔を覗き込んでいた。


「ありゃ、俺ァ一回死んじゃったかな」

「死ぬ一歩手前だったってよ」

「ありゃりゃ。でもなんで今生きてるんだろう?」


 マシューがある男を前に差し出してきた。男? 男だと思う。男っぽい声をしてたから勝手な憶測。中性的な面してらぁ。


「この人が【神聖治癒】で心臓を生かしながら飛び散ったあんたを集めて【神聖治癒】で治してくれたんだよ」

「いやあ、はは……でも、顔は損傷が激しく、傷痕が残ってしまった。いまは隠せているけれど、あんたの魔力に反応して顔の傷痕が現れてしまう」

「顔に傷のある男はカッケーって相場が決まってるからええよ。鏡ちょーだい」


 村のガキから借りた鏡を見てみる。【学習能力】を発動させてみると、2本の線が目の下から顎下にかけて伸びていた。


「かっけェ……」

「えぇ……」

「ま! っつー訳だから気にしなくていーよ! つかお前名前は? ダチにならん?」

「えぇ、いや……いいけど……」

「俺はロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッド。めっちゃ天才」

「僕は……ユダ。ユダ・ジョーヌ」

「この村の人間?」

「いや、僕は旅人だ。ある人間を捜している」

「うちのトマスと同じかな? 案外同じ奴捜してたりして。お似合いのふたり~!」

「ノリきしょ」


 マシューが病み上がりにちくちく言葉言ってる。最低だと思います。


「じゃあ、試しに聞いてみようか」

「俺顔広いから案外知ってっかもな。聞いてみ? 奴隷界隈と革命界隈に詳しいぜ」

「なんだそのディープスポット」

「イエス・キリスト? という男にかわる人間がこの世界に生まれているらしいんだ。それを見つけださなければいけない。僕はその役割を持っている」

「たいへんなお仕事ね。それなりの報酬は貰えんでしょ? モチンチン」

「30枚の銀貨だ」

「それマジ? 3万チェガって事になるけど。アホくさくね? いるかもわからない奴捜してあちこち歩き回って3万ってマジ?」

「ユダくんさぁ、それブラック企業だよ」

「…………」


 トマスは俺を見ている。なんすか。


「でも、教会の言うことは、絶対なんだ」

「腰抜け!」

「マシューちょっとセカンドパワハラすぎん?」

「〝パワハラ〟のマシューで有名よ」

「ウワ~! 社会に出ないで欲し~!」


 ユダっちはぼそっと。


「その通りだよ」と言っていた。

 なんか楽させてやりてェ。


「俺たちの船乗れよ」

「惚れた?」

「なんですか。ダチを船に誘っちゃ駄目なんですか! 船長差別です! 差別を取りやめてください! 船長に人権を!」

「脳みそ25グラムしかなさそう」


 怒られるからやめた方がいい。


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