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第二十八話 2秒

 ◆


 その男はまるで雷のような動きで、悍ましい姿の神を圧倒しているように見えた。腕から伸びているらしい赤く尖った二つのラインが仄かに暗くなった肌寒いその空間を彩っていく。


 しかし、ダメージは募っているらしく、戦闘が始まって3分後、とうとう脇腹を太いミミズが貫いた。赤い血飛沫が地面に飛び散った。子供達はそれに目もくれないでマルベル神が発した【孤神の系譜】に当てられて、涙と鼻水とよだれを垂らしながら「ア・ア・ア」と呟きつづけている。


「ハァ、ハァー……」

「────ッァアアア!」


 マルベル神が発した理解不能の言葉に、血飛沫がまた飛ぶ。


「せやったらなんやねん……」

「────────」

「ハァー……センスないなァ、ワレェ……」

「────────」


 また戦闘が始まった。始まった。始まったが、いまの一幕はなんだ。まるで、会話でもしたみたいに。もし本当にマルベル神と会話をしたのなら、あのロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッドという男は神の言語が理解できるのか? それに、なぜあんな至近距離で【孤神の系譜】を浴びて正気を保っていられるんだ。


「ハァー……やっぱり、疲れる!」


 地面を転がりながら、ロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッドは漸く吐き出す様に言う。


「やっぱつれェな~!」

「ニューゴッド!」

「おん? あれ、お前正気保ってるやん。わら」

「僕は【神聖壁(ホーリーズ)】があるんだ。でも、あんたは違う筈だ」

「俺適応能力パネェから」

「神の領域に踏み込む適応能力なんてある訳ねェだろ腐れウンコ!」

「なんやお前。危ねーから離れてろや」

「だけど」


 胸倉を捕まれ、空に投げられた。地上を見てみれば、ロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッドの拳銃の前に弾けるミミズ。落っこちた僕を受け止めながら、ロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッドは笑った。いつのまにか上半身が裸だ。なんでだ。


「軽いね」

「お、お前……」


 その時、マルベル神が【孤神の系譜】を発した。ロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッドは疲弊からかさすがに一瞬白目を向き、すぐに踏ん張り戻ってきた。なんで踏ん張れるんだよ、という疑問はある。僕には【神聖壁】がある。神の力には神を根源とする能力で異常性を中和すれば良いけど……。神を根源とする力……?


「そのスキル、なんて名前なの」

「あ? ユニークシリーズ【学習能力】だがぁ?」

「なんだその……ユニークシリーズ……?」


 ユニークスキルなら、そんなものなんだろうか。


「そないな事聞いてどうするんや」

「気になっただけだよ……」

「そう? 聞きたい事はそれだけかいな。……にしてもあれやな、お前危機感っちゅーもんが欠如しとるんやろなぁ……周りはちゃんと見いや」

「…………ごめん。じゃあ、詫びに【神聖壁】と……その脇腹治すよ」


 僕は【神聖治癒(ホーリーヒール)】を発動させた。みるみる内に傷が治っていく。


「ありがとう!」

「ああ、うん……」

「ほなさっさと倒してやるわ! どのくらいかけよっか?」

「は? え? …………2……」


 ロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッドは「りょ」と言うと、恐らくまた【学習能力】を発動させた。すると、背中に十字架が浮かび上がった。


 次の瞬間に、マルベル神が弾けた。ロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッドの足元の影が一瞬消え、それと同時に赤い閃光がマルベル神の在った方へ伸びる。それが消えると同時に影も戻る。これに1秒がかかる。


「……いま、なにを?」

「内訳は……1秒で殺して、のこり1秒は」


 ロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッドは「こ」と口を開くとパンと弾けた。


「……………………………………………………ひっ……」



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