第二十五話 使いすぎ!
林檎の木の長い森を抜けるとそこは砂浜と、赤く滲んだ青い海。海には肉塊がぷかぷかと浮かんでいる。虫型のモンスターがブヨブヨと太ったその肉を突いている。その度に欠片が辺りに飛び散っている。
「……」
弾を撃ち込んで外に送る。
すると餌を奪われた虫型モンスターがギチギチと顎を鳴らして此方に向かって来る。マシューの【水の弾】で紫色の血肉を撒き散らしながらイク。するとふたりの背後に「LEVEL UP」の文字。
「ずっりィ! なんでェ、ふざけやがって!」
「レベルが上がっただけでしょ。なに怒ってんの」
「やっぱさァ……! あのさァ……! レベル上がるのは、まぁさぁ、『経験値』が必要じゃん? じゃあさっきの考えてみろよ。なんでモンスターを倒してないトマスにまで経験値飛び火してんだよ。馬鹿じゃねぇの?」
「あんたには来てないの? 『経験値 +5万』とか書いてあるけど」
「経験値ってそもそもなんすか」
「レベルが上がる奴」
「なんで『経験値』なんていう同字の別の意味を持つ言葉が当たり前みたいに『たまるとレベルが上がるもの』として存在してんの? イテッ! あれ? ふたりともレベルアップしてんじゃん。ずっりィ! なんでェ、俺だけ仲間外れか!?」
「イカレてんのか?」
トマスが何かをコソコソとマシューに話している。しかし俺は地獄耳だぜ。聞こえる聞こえる。
「どうやら何かが作動して記憶が消えたらしいですね」
何かってなに。わら。なぐるよ。わら。殴った後に謝るよ。わら。殴っても殴れば許されるよ。わら。許される訳ね~だろハゲ。
「お話していい!?!!!?!?!?」
「うるさい」
「お話します!!!!!!!!!!」
「死ねッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!」
あれ、右耳から血ィ出てきた。なにこれ。ウォーターサーバー?
「トマスっち~。なんかある?」
「海の奥深くに、何かがありますねぇ」
「オッシャ! 〝ブルーインク〟げっつっつ~! 『俺が海に触れた瞬間〝ブルーインク〟が俺の手の中に──……」
手首が弾けた。
「オア!?」
「どうやら能力を使いすぎたら強いですねぇ」
「無駄遣いすっからだよ、腐れウンコ」
「足引っ張ってごめん」
「別に今に始まったことじゃないでしょ」
「足引っ張ったことないだろ、此処以外で」
「いやあ、そうでもないっすよ」
捨てないでって一瞬思っちまった。これ秘密ね。




