第二十三話 なにもない
とうとう到着した林檎の木の森。
「奥に何かある?」と尋ねてみると、トマスは不思議そうな顔で「なにもない」と言う。どうも、有り得ないほど何もないのだとか。恐らくは神聖な力で隠されてしまっているのだろう、という見解を話してくれた。
「じゃあビンゴか」
「ビンゴって?」
「馬鹿だなあ、お前。マヌケシューに改名したら?」
「死なすぞ。何があるんだよ」
「話の流れで分かれよ。秘宝だよ、ひ・ほ・う」
「あっ、そっかあ」
本当に馬鹿だなあと思いながら、木々の間を歩いていく。
「なんかここジメジメしてますねぇ……」
「湿ったい夜だよね……嫌になるなあ……」
「野宿の準備する?」
「だね。行くのは明日が良いよ。飯食お~」
野宿の準備を始めることにした。背嚢を下ろして、道具を出してみる。
「オョ……」
斧がカクカクしている。ドットになったのだ。よく見れば、背嚢の底もドットになりはじめている。
「…………」
「そろそろ限界らしいな……」
「もう休む暇もなさそうですねぇ……行きますか」
「だな。あ、干し肉はまだ無事だ。あぶって食おうぜ」
干し肉を小腹に吸い込ませてから、トマスの言う「無」の方へ歩いていく。近づくにつれて、どぎつい黄色やどぎついピンク、どぎつい青色の乱れが現れはじめた。左右に揺れる度に「ビジビジ」という音が溢れた。
「なんだこれ」
「先を急ごう」




