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第十六話 ドラゴンのビリビリ財布

 なーんて、アホっぽいやり取りのひと幕を挟みつつ、準備が完了した「船」が俺達の前にお出しされた。


 全長何十メートルなんだろう? そういう疑問すら些細なフウに思えてしまうくらい、その船はあまりにも大きかった。甲板に家5コ建てられるかもしれねー。ちっさい家ね。んで、個室やら操舵室やらの「船内部」が外に3階分突き出ている。


「いまから80年前。1720年に、現ハシブラ領の処刑場で処刑された世紀の大犯罪者〝渡り鳥〟のノア・H・オリゴ・フラーカスが乗っていた船っ!」

「金に物言わせるやり方嫌いじゃねーぜ」


 もしかしたらこの世にゃこれを正しく受けとるべき人間がいて、その人間は運命に導かれてるのかもしんねーけど俺からしてみりゃ知ったこっちゃねーよな。たまたま金持ちのコミュニティーで持て余されてたところを、俺が有意義に使ってやるんだから、むしろ俺は善人っすよ。


「でもこんだけ広けりゃ寂しくなっちまうな」

「仲間をいっぱい作るいい口実になりましたねぇ」

「獣人奴隷で一儲けできそう……」


 ものすごいクズおる。さすが商人の娘や。


「あっ、俺そういう嫌いやから二度と言うなや」

「ごめんなさい」

「ええよ。気ぃ付けてや」


 獣人なぁ。獣人っつーのは、先祖に獣を持ち、人としての体裁を持ちながら、獣みたいに全身を毛皮に包んだ、獣の性質を持ついわゆる亜人種。獣人といわゆる俺やマシュー、トマスみたいな「純人(じゅんじん)種」の混血は獣の特殊性が薄れて獣の耳と尻尾を持って生まれるらしい。俺の奴隷時代のダチに鳥の獣人がいんだけど、処女懐胎らしい。単為生殖みたいな特徴もおさえられてるのビビった。やたらと仲間意識向けてくるのエロかった。


「これで冒険開始できそうか?」

「まだ何か足りないわね」

「まだぁ!? もうええやん行こうや」

「なーに甘い事吐かしてんの! 耳に羅針盤ぶち込むぞ! 船旗を作ってないわよ。『私はこういうものです』っていう、簡単な自己紹介! これがなきゃ不審船としてしょっぴかれるわよ」

「普通にしなきゃいけないことだ。文句言ってごめん」

「いいよ。許したる」


 お宝探し野郎の「トカロマーク」という、「TM」を模したマークを入れることを考えて、「馬」「獅子」「鰐」が縦一列になってるエグい船旗のマークを完成させて、はつっつけた。


「さすがにもういいでしょ」

「あんたはもういいの?」

「いいよ。出発しようぜ」

「いいのかなあ、宿に数日分の衣類置きっぱだけど」


 急いでテテレグ宿に戻って衣服を取ってチェックアウト。


「グダグダですねぇ」

「ね。せっかくの旅立ちの日に」

「面目ねーっす」

「ニューゴッドくんは少々抜けてますからねぇ」

「抜けてるってより度を逸脱したアホなんだこいつ」

「申し開きの言葉ねーっす」

「あ、お前が宿行ってる隙にお前の財布から酒樽5コ買ったわ」

「お前おもしれー女だね、どうしよう、ほんと」


 やっぱりビリビリ割く財布だとセキュリティ面が危ないな。でもドラゴン描いてあってかっこいいしなんなら「ULTRA SUPER Dragon」って書いてあってエグいんだよな。かっこよさが。こうなりゃ俺が手作業でビリビリ財布をもっと厳重セキュリティの財布に改造しないといけない。

保存技術の拙い昔の船旅だとかは水が腐るからほとんどの場合が酒らしいっすね(ネット聞きかじり知識)

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