第十五話 いやむしろ
それからしばらくあった。ムルカド──砂の魔女が作ったパンにスパイスをふんだんに使ったソースを染み込ませて肉を挟んだ奇っ怪な食い物。両手が汚れる──を食べながら。
「しかし、それはそうと船は何処なのだよ」
「いま用意してもらってるって。私たちの船だ」
「だからなんすか? マウントっすか」
「何処に抵触したんですかあ? やっぱ大脳半球壊れてるだろあんた」
「経験者の勘って奴か? 外れることもあるんすね~」
取っ掴み合いの喧嘩をしていると、眼帯野郎が声を上げた。
「ニューゴッドくん」
「なんすか?」
「ここに200万がある」
「おう。くれや」
「無論、そのつもりだ。そこでだ。この200万の代わりに、私を君達の船に乗せてはくれまいか」
「何かしらの事情がありそっすねー。俺は別にいーよー」
「では自己紹介と行こう。私はトマス。ある男を探している」
いずれかにして人生は巡り合わせだっていうだろ? そういうこと。俺とこうして出会ったこの眼帯野郎トマスは、いつかきっと、いま言ったような探している男と出会うし、世界のてっぺんに立つ男を見る。あるいは女かも。俺は「塔のてっぺんに連れていく」って約束しただけだから。
「船の船長は俺だけど」
「何のアピール? あんたが船長だってのに誰も別に不満は抱いちゃいないよ」
「へー珍しい。突っ掛かってくるかと思った」
たった数日の仲だけど多分嫌悪の相互関係って奴だ。ぶっちゃけ俺こいつ嫌いだもん。誰だって性格に一致不一致がある。
「あんたの人柄が気に入った。今日日なかなか見ない善良な心を持っている人間だ」
「おっと。ラブかな? 散々ひどい事を言ったじゃない。何処をどう見てそんな高評価を?」
「ニューゴッドくん。人からの『好き』は素直に受けとるべきだ」
「そうは言うけどね」
まずひとつ、とマシュー。
「あなたは常に迷ってる。それに決断もする」
「ふん……。じゃあ、そりゃあ……ラベンダーみたいに?」
「むしろ、ジルバ・ジタバーグのスタンダード」
■ニューゴッド船
●ロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッド
17歳
イメージ動物:フリージアン・ホース
●マシュー・H・カンナギ
23歳
イメージ動物:バーバリライオン
●トマス・H・ゾナジーズ
35歳
イメージ動物:イリエワニ




