第十四話 ドン引き
男はぐぬぬ、と唸ったすぐ後に、すんと無表情になった。異様な雰囲気が辺りに立ち込めていく。
「殺したよ。何が問題ですか。ニューゴッドくん。ロジオ・〝ホープ〟・ニューゴッドくん。特に君だ。世界貴族が何をしているのかわかっているだろ。頭の悪そうな君も。世界貴族はやたらと平民を奴隷扱い。この世界はさ、生きづらいんだよなあ。だからさあ、俺が生きやすくしないとって思うんだ。これ、『プルペンポポス教』が教えてくれたライフハック。俺に仇為す存在は、悪魔だから、スーパーハッピーワールドにいけないように、殺すんだよね。ボブさあ、悪魔なんだよね。俺の仕事に文句つけてきたんだよね。スーパーハッピーワールドにあいつが入り込まないようにする必要、あるだろ? だから殺したよー。でも、悪いことかな」
スーパーハッピーワールドってなんだよ……。
「そういえば、ボスもよく俺のこと叱ってくれたっけな。怪我でもしたらどうせるんだとか言い訳していたけれど、あんなに強く言わなくても良いはずだから、それにボブの死にやたらと反応して、やっぱり悪魔は仲間意識が強いんだなぁ」
「ボブは、俺の息子だぞ」
「悪魔の父!」
「おい!」
ボスっちの前に立つ。
「何の真似だよ。ニューゴッド」
「悪魔はいない。お前の思い込みで……なんちゃらかんちゃら教の刷り込みだ」
「プルペンポポス教を侮辱したか? 悪魔だ。確定。殺します」
普通の人間だと思ってたけど、そうじゃなかったか。
「愛娘っち」
「マシューだよ」
「じゃあマシュー。船の受け取り契約を済ませておいて」
「この状況で!?」
「察する事って出来るか?」
「あぁ?」
「レディにゃ見せらんない戦い方、すっから」
ユニークシリーズ【学習能力】の擬似発動。両手首に、貫くようなエネルギーの集合体が現れた。
「いってェ」
「おやおや。乱暴な能力ですねぇ……何かを打ち止めておくみたいな……」
「いってェし呼吸が出来ないっす」
「ほんとに大丈夫ですか?」
「3分以上は戦えないっす。かっこつけとかプロパガンダ度外視にさっさと終わらせるっす。いっすか?」
「かまわないよ」
眼帯野郎が微笑んだ。
じゃあこうしよう。
「『お前が俺に攻撃した途端、攻撃は俺には通じず、そしてお前の四肢は粉々に砕け散る。それこそが正解だ』」
「何を意味のわからん事を! 脅す前に殺せよ! こういうふうに! やあ死ね!」
男が拳銃を取りだし、放った。次の瞬間、男の四肢がぐにゃぐにゃになり、男は叫びながら地面でうごめいた。
「えぇ……」
ドン引き。まさか本当に効くとは……。
「まさしくチート的なスキル……チートスキル……」
「絵物語のタイトル回収みたいな言い方っすね。でもそれをいまこのタイミングであんたが言っちまうと俺が主人公になっちまうけど大丈夫そ?」
「君はどうやら主人公に相応しいらしいからねぇ」
「お! 見ろよマシュー! やっぱ大人は俺の魅力がわかるらしい!」
「寝言は寝て言え! 二度と目を覚ますな!」
「おーん(泣)」
「ふふふ」
造船所の野郎どもが男を取り押さえる。
「マーカス! 仲間だと思っていたのに!」
マーカスっつー名前らしい。
「マーカスの中の『カス』の部分」
「ニューゴッド」
「なんすか?」
「いつかお前を絶対にころしてやる。むごたらしくころしてやる」
「へー。んで? いきなり殺すの連呼はNG。それを出来なかったのがお前なんだから。いまさら何? マジきっしょ。人の子ひとり殺したんだからちゃんと反省しろや」




