第十二話 乗り
「新しい朝が来たね。新しい門出だよ。腐れウンチ」
「嬉しそうだなあ。俺は背中が痛いし頭が痛い」
「痛めるほどの頭ないでしょ。ほら行くぞ」
用意された馬車に乗り込んで、そこからシャルベア王国に向かう。ダイヨウ造船所は西の方にある大きな城のような建物らしい。『船』と名のつく物は全て余すことなく取り扱っているらしい。
「直してもらってるんだ。最低限の修理だよ」
「身内に金持ちがいるとすぐ事が片付くなあ」
「身内?」
「うわ、ちょっとショック! 身内の定義知らない人おるんや」
「家族成員など血のつながりのある親族,あるいは血縁はなくても比較的近い親類や姻戚など,一族の中に含められる者をいう」
コトバンク調べ。
「……っすか!」
「じゃあ言うけど身内になる事が仮にあるとしたらどういうもんだろう」
「弟でしょ」
「あるいは家畜と飼い主か」
「マジ? お前ブタってより馬だぜ」
「あんたは人ってより蛙だな」
「へー。俺が蛙じゃあ、お前は蝿だよー?」
それから夕暮れの頃になって、シャルベア王国についた。テテレグ宿(職業冒険者等が使用する安値で宿泊できる宿屋)にチェックインしてから、ダイヨウ造船所に向かった。するとなにやら混乱の模様。
「どうしたの!?」
「カンナギのお嬢さん! いや、今朝になってうちの若いボブが殺されたんです。そいで、いま犯人探しっつってうちのボスが町中駆け回ってて」
「殺し!? そんな、ボブって言ったら、修理部門の……!?」
「はい」
どうにもヤバい方の混乱らしい。弾こうとしていたギターを背中に回して、懐中時計を持つ。時刻は7時と35分ほど。
「警察は動いてんのですか。部外者質問で恐縮やけど、警察動かん内にボスだけ動いとったら仇討ち言うとってもカンジンの仇見つからんでしょう」
「なんだい、君は……?」
「ロジオ・〝ホープ〟。」
「ホープはミドル」
「ファミリーネームは?」
「ない。でしょ?」
「ない?」
「破門にされた。生まれ実家は貴族。『キ爵』のハシブラです」
ぎょっとした。
「キ!?」
貴族最下層はダ爵。その上にハ爵。更にその上にラ爵。世界貴族。第五層カ爵。第四層ミ爵。第三層ス爵。そして第二層にキ爵がある。世界貴族はごまんとある貴族の中でも選りすぐり。ちんぽ一つで街ひとつ操れる大きな権力を持っている。
「でも縁なんぞ切ったからもうハシブラは捨てた。俺はそうだね、ニューゴッド」
「新しい神ってか。粋がりやがって……」
「そんな事よりボスはここに帰ってくるだろうか?」




