四.これを運命と言わずして何と言うんだ!(1/3)
およそ15年前、海洋型惑星ミアプラの原生生物・バージェスが突如として日本の海に出没した。
鞭のように撓る触手や鋭く尖った棘、獰猛な鋭い牙を備えた最大50mにも達する未確認生物たちの跳梁跋扈に、四方を海に囲まれ貿易物資の99%以上を海上輸送に頼る我が国は、瞬く間に国家存亡の危機に陥ってしまう。
そこに現れたのが、ミアプラに住む海洋型知的生命体・ミアプラ人である。地球の海洋生物に似た特徴を併せ持つミアプラ人たちは、未知の技術と驚異的な身体能力でバージェスたちを難なく捻じ伏せて見せると、日本政府に対して取引を持ち掛けてきた。
要するに、バージェス討伐のための人員や技術を提供する代わりに、ミアプラでは入手困難な地球の資源を提供しろというわけである。
かくして、一時は混迷を極めていた海事行政はミアプラ人たちの協力により対バージェス体制を確立、一定の秩序を取り戻すことができたというわけだった。
ちなみに、バージェスたちが日本の海に出没するようになった原因は、多次元宇宙の加速膨張に伴う衝突と変形によって異なる宇宙に存在する惑星ミアプラの海が地球の海と接続したからということになるらしい。
まあ、そういう難解な物理学だかの話は、俺にはよく分からない。
それよりも重要なのは、それによって決して出会うはずのないふたりが出会ったという事実なのである。