1/17
プロローグ
ひんやりとした細い指が、海水に濡れた俺の髪をそっと掻き上げる。
「……ああ、良かった」
誰かが、俺の顔を覗き込んでいる。
逆光のせいで細部が判別しにくいけれど、それが女の人で、青色の髪と二本の角を持っていることはすぐに分かった。
「もう、大丈夫だからね」
しっとりとした優しい声が、恐怖に打ち震えていた俺の身体と心に、慈雨のように心地良く染み込んでいく。
(きれい……)
晴れ渡った空の青に似た彼女の瞳に、収まりかけていた胸の鼓動がトクトクと早まるのを感じる。
俺を見つめるその瞳は、穏やかで優しくて、なのにどこか寂しげで。
その瞳に、俺は――