第四話 漢気を持つのは男だけに非ず
カスタムロボ生まれ、ダンボール戦記育ちの作者アーマードコアに挑戦するもアクションゲーム下手過ぎてチュートリアルクリアできない模様。
ドラクエモンスターズ3まだかなあ。
更新です。
約束の当日。
ノアは普段仕事に行く時間に北門に向かった。
町には花が咲いており、春の暖かい風も相まって町を穏やかな雰囲気にしている。
子供たちは鳥のように駆け回り、笑い声が風に乗ってどこまでも飛んでいく。
平和の象徴が死んでも、冒険者界隈が少しざわついただけで、住民は依然として通常通りだ。
冒険者のことを気にしなくても生きていけるってことはそれはそれで平和な証拠だ。
ノアが北門に着くと、すでにみんな集まってた。
鶏肉はものすごいどや顔で腰に手を当て仁王立ちしている。
「あれ、俺が最後か」
「そうだぜ! ノア! お前が最後だ!!」
「みんな今来たばっかりですよ」
「トリ君なんてほんとに今来たばっかりだからね~」
ノアは鶏肉をジトっと見つめる。
鶏肉はなんだよと言いながら目をそらす。
和やかな雰囲気の中、ノアは真面目な顔で話し始める。
「あらためて、今日は来てくれてありがとう。最後に確認だけど、ほんとに死ぬかもしれないし、仕事でも何でもないただの俺個人の問題だ。報酬も出ない。それでも来てくれるか?」
ノアは他の三人の顔を不安そうに見渡す。
「何をいまさら、ほら早くいくぞ。今日中にはメルの森近くまでは行きたいからな」
「仲間じゃないですか僕たち」
「行こっノア君。早く帰ってきてノア君には斧運んだ分のご飯おごってもらわなくちゃ」
ノアの胸には喜びが降り注ぎ、やがて確固たる覚悟が根付く。
「ああ、行こうか。絶対に帰ってこよう」
北門を出ると、草原が横たわっている。
そこには風が踊っているかのように吹き、草を揺らし波のような動きをしている。
「見た感じ、魔物いないな」
鶏肉が先頭に立ち辺りを見渡している。障害物もないため魔物がいればすぐにわかる。
「しかし、あの山まで日帰りで行けるってノアの兄貴はすごいな」
「めっちゃ足早くなるからね」
そんなたわいもない雑談をしながらノアたちはメルの森を目指す。
この国の北側は霊峰ラコンがそびえたっているだけで村や町はない。そのため、舗装された道は無く道なき道を進むことになる。
夕日が空を橙色に染め、山々は巨大な寝台のように横たわっている。
その頂上には雲が軽やかにかかり、綿で出来た布団を被ってるように見える。
「ついたなメルの森」
「ここまで魔物と出会わないことあるんですね」
ジョーの疑問にノアが答える。
「ここ1週間くらい魔物の目撃情報めっちゃ少ないらしいよ」
「順調なのは良いんじゃない? 今日はここまでにしようノア君」
「そうだね」
キャンプの準備が終わるころには日が落ち、月明りが大地を照らし夜空の星はまるで数えきれない兵士からなる軍団のようだ。
「鶏肉焚火つけてくれよ」
「だから俺はトリフィムな。焚火な、任せろ」
鶏肉は、指先に火をともし森で拾ってきた木に火をつける。
「私、家からいいお肉持ってきたんだ~。腐っちゃうから今日のうちに食べよ!!」
エニが嬉々としてカバンの中から肉を取り出す。ってかそのカバン肉しか入ってないじゃん。
「水汲んできました~」
近くの川に水汲みに行っていたジョーが帰ってくる。
「見てよジョー君! いい肉!」
「僕もいただいていいんですか?」
「みんなの分あるからみんなで食べよ~」
「じゃあ、さっそく焼くか!!」
鶏肉が平たい石を焚火の上にセットして、腕まくりして待っている。
やる気とんでもないな。
「おいこれって」
「どうしましょう」
鶏肉とジョーが悩んでいる。なんであんなに目がギラギラしてるんだ。
ノアは石の上を見ると理由がすぐにわかった。
「なるほどこれはまずいね」
「ねえ、一回落ち着いて話し合おう?」
鶏肉は魔物との戦闘中かのような剣幕で声を張り上げる。
「エニ! おまっこの馬鹿野郎!! 話し合いなんてしてたら最後の一枚のこの肉が焦げちまうだろうが!!」
「ここは公平に漢気じゃんけんで行きましょう。勝った一人だけがこの肉を食べれるということで」
ジョーが腕をまくり始めた。よだれ出てますよジョーさん。
「私女だけど……」
「おいおいエニさんよお、こんな美味い肉の前でいつまで女の子やってんだあ? 腹くくれや」
「絶対泣かす!!」
鶏肉がやっかいなおっさんみたいになってきた。
エニの目にやる気が満ち溢れている。いやこれは……殺る気!?
だが、ノアも最後の一枚は食べたい。気づいたらノアも腕をまくっている。
「おお! やる気だな大将!」
鶏肉がまじでダルくなってきた。
「じゃあ、漢気じゃんけんで決めますよ? いいですね?」
ジョーが握りこぶしを前に突き出す。
エニも、鶏肉も続く。
じゃんけんで決めてる時点で漢気もくそもあったもんじゃないと思うけど。
「よし」
ノアも腕を突き出す。握りこぶしの中にジワリと汗が染みる。この独特な緊張感がそうさせている。
「では、いきますよ。漢気じゃんけん!」
「「「「じゃんけんぽん!!」」」」
「おいひー!」
エニが最後の一枚をほおばりこっち見てピースしてくる。
俺は、少し悔しいくらいで済んだが、見ろあっち。
ジョーは地面に膝をつき天を仰いでるし、そのすぐ隣では鶏肉がしゃがみ込み嗚咽を漏らしている。マジで泣かされてるのかよ。
「おいエニあいつらどうにかしろよ」
「あいつらは漢気が足りなかったんだよ。もちろんノア君もね」
唯一の女性に漢気を諭されるなんて……
あ、ジョーが倒れた。言葉とは時にどんな剣や魔法よりも高威力で人を傷つけるのである。
おいまてまて、草を食うな鶏肉!
「今日の見張りは俺とエニで組もうか」
「うん。ごちそうさまでした。おいしかったあ!」
その夜、見張り中の鶏肉とジョーはお互いを慰め合いながら、漢気を磨く方法を話し合っていたそうな(夜中に目が覚めてしまったエニ談)。
漢気じゃんけんって勝った人が不利益被るみたいなイメージあるけど、今回はただのじゃんけんですね。ただのじゃんけんに漢気がくっついただけ。




