第三話 在りし日を偲ぶ
最近ASMRを初めて買って聞いてみました。
音だけなんで細かい状況の説明をわざわざ口にしないといけないんですよね。
それがめちゃくちゃシュールで「普段の会話でそんなことしゃべらねーだろ!!」って思いながら聞いてました。
結論。めっちゃおもろかった。
あ、更新です。
よろしくお願いします
冒険者には死がつきものだ。だからいちいち葬儀などしない。
ギルドの裏に一つだけ大きな墓石があり、死んだ冒険者はみんなそこに名前が刻まれる。最強だろうとなんだろうと皆平等に。
「兄貴の武器を取りに来ました」
ギルドの中はいつも通りだ。兄の死で少しはざわついてると思ったが、一日も経てば皆日常に戻る。というのも普段一人で活動していた兄と関わりがある者がそもそもいないのだ。
3つ並んでいる受付の中から入り口から一番遠い受付にノアは声をかける。
まあ、近い受付は埋まっていてそこしか空いていなかったからだが。
「ノア様ですね。お待ちしておりました。マスターから話は聞いております。グラリス様の武器ですね。かなり重いですがお一人で大丈夫ですか?」
忘れていた。兄は魔法で強化してるから軽そうに持っていたが、本来は屈強な男二人がかりで持つのがやっとな重さだ。誰が作ったんだよまったく。
「そうでしたね。俺一人では無理ですね。また後日、人を連れて取りに来ます。今日はお墓に顔を出して帰ります」
「かしこまりました。お墓への行き方は大丈夫ですか?」
「あそこの扉の先ですよね」
ノアは受付の横の扉を指さす。
「はい、そうです。何かわからないことがあればまたお立ち寄りください」
「はい、また来ます」
ノアは受付に軽くお辞儀をして、扉の方に歩く。建物の端に階段があり、受付とその階段の間に扉がある。階段の上は上級冒険者用の仕事受付とギルドマスターの部屋がある。
「……?」
扉に手をかけた時、変な気配を感じたノアは振り返る。そこには、テーブルで酒盛りをしている冒険者や掲示板を眺めている人など、喧騒にまみれたいつものギルドの姿があった。
(気のせいか)
ノアは扉を開ける。それと同時にギルドのドアが開き三人の人影が入ってくる。
裏庭にある大木の前に人の名前が彫られた墓石がある。
大気には静寂が満ちあふれ、神秘的な雰囲気を醸し出している。
「来たよ。兄貴」
ノアは、墓石の前にしゃがみ目を細めて墓石に書かれた兄の名を探す。
まだ、冒険者という職業ができてから10年だ。魔物が出現し始めて10年ともいえる。
ノアがグラリスに拾われたころは、ちょうど世界に虫が湧いたころだ。
10年という月日はやはり長いのだ。ゆえに兄の名を探すのに少し時間がかかってしまった。
兄の名を指でなぞり、昔のことを思い出す。
兄が仕事に連れ出してくれた時のこと、当時のノアはまだ幼く見るものすべてが輝いて見え、つま先までわくわくして、とにかくはしゃいでいた。
がははと豪快に笑うところや、頭をボンボンとたたくように撫でてくる兄の姿が昨日のことのように蘇る。
何で今日は連れてきてくれたの?と質問したことをよく憶えている。
「今日はノアがうちに来てくれた日だろ?」
グラリスがノアを拾った日。
その時名前の無かったノアに名前が付いた日だ。
その日からちょうど一年。
「今までそういう経験が無くてな、記念日に何をしてあげたらいいかわからなくてな。国の外を見せようと思ったんだ。少し退屈だったか?」
グラリスは指で頬を掻きながら、はにかんだように笑う。
ノアは初めて見る景色に興奮していると同時に緊張もしていて、顔がこわばっていたのをグラリスはそんなノアが退屈そうに見えた。
「だが、ノアを俺の仕事に連れてきたことは間違いじゃないと思ってる。大事なのは――だ。いい言葉だろ? ノアも使っていいぞ」
言い訳みたいになっちまったな! と、がははと豪快に響く笑い声が遠ざかっていく。
時が急速に流れるように進み現実に戻ってくる。
(結局、俺が冒険者始めるまでは、毎年記念日は仕事に連れ出すだけだったな。他に何かなかったのかよ)
死人に口なしと言うが、遺された側も同じことだ。
何を言っても届かないし、もう、何もしてあげられない。
でも――
「俺、兄貴の仇をとるよ。兄貴ならそんなことしなくてもいいって言うかな?」
ノアはゆっくり立ち上がり、墓石を背に歩き出す。
「俺の仲間が手を引っ張ってくれてるんだ。兄貴は背中を押してくれるか?」
ノアは墓石を振り返る。そこには覚悟を決めた男の顔があった。
「故人の言葉を言い訳みたく使いたくないけど、大事なのは正しい選択をすることじゃない、選んだものを正しいものにする姿勢だって、俺を初めて仕事に連れ出してくれた日に兄貴が言ったんだよ」
この言葉使っていいって言われたしね。そうポツリと言い残し再び歩き出す。
「結果を報告しにまた来るよ」
扉を開けてガヤガヤうるさいギルドの中に戻ると、見慣れたというか、最近見たばっかの人たちがいた。
「おう、ノア待ってたぜ」
「家に行ったらいなかったのでギルドに来てみたら当たりでしたね」
「ノア君もご飯一緒に食べない?」
扉を出てすぐの四人掛けの丸テーブルに座って、飯を食ってるパーティメンバーがいる。
「ああ、じゃあ食べようかな……ちょっと食べ終わった後手伝ってほしいことあるんだけど」
「じゃあ、食べながら話そうぜ。すいません、これと同じのもう一つ!」
ギルドの食堂の売りは速さと量だ。注文してほどなくして山盛りの料理がテーブルに運ばれてきた。唐揚げに照り焼きや他にも多種多様な鶏肉料理が積み重なってる。
「ふふっ」
「おい、何笑ってんだノア」
「いいや、なんでもないよ」
他の二人も察したのかクスクス笑ってる。
「まさか、共食いとか思ってないだろうな?」
「「「いやいや、全然」」」
鶏肉以外の三人はぶんぶんと首を横に振る。おいエニ首振りすぎだろ。
「嘘くさいな。俺の名前はトリフィムだからな? ――ところで手伝ってほしいことってなんだ?」
鶏肉が逸れた話題を無理やり元に戻す。
エニはまだニヤついている。
「お前らは何してんだ? この後、少し時間取れるか?」
ノアは他三人の顔を伺う。
「昨日の話のことをギルドの図書館で調べようと思ったんですけど」
ジョーが話始める。
「今日は休館日でさ。受付にドラゴンについて聞くわけにもいかねーし」
鶏肉が割り込む。
「ギルドに入った時に裏庭に行くノア君が見えたから、せっかくだし待ってたんだ~」
エニも割り込む。
「なので、この後はみんな暇ですよ」
ジョーがしめる。
話は伝わるんだけど、そんな打ち合わせしたみたいに三人で区切って話すことないだろ。
ずっとジョーに喋らせとけよ。
「なるほど、今日兄貴の武器を取りに来たんだけど、一人じゃ持てないことにここにきて気づいてさ、後日にしようと思ったんだけど、都合よくお前らがいたから手伝ってくれ」
「あれ? ジョー君重いもの持つの得意だっけ?」
「いいえ? トリさんが得意って言ってましたよ?」
「エニお前、この前重いものならまかせて! って言ってなかったか?」
「言ってないよ!!」
何で、押し付け合ってんだよ。
冒険者には、魔物出現以前から用心棒や兵士として戦っていたものが多い。
しかし、ノアたちが今に至るまでに魔法の研究が進み、魔法に頼った生活になってきている。
一言でいえばこいつらは非力なのだ。
彼らの得意な魔法の性質的に力仕事には向いていない。ノアも含めて。
「四人で持とうか……」
「おう」
「はい」
「うん」
「助かった。何か飲むか?」
ノアの家に斧を運び入れた面々はうなだれている。エニに関してはもうぶっ倒れてる。
「この斧を片手で振り回すの嘘だろ? この斧つくった鍛冶師殴りたくなってきたぜ」
鶏肉が荒い息を整えながら、斧を指さす。
「まあ、兄貴は魔法で強化してたからな。でも、魔法無くても一人で持てたと思うぞ」
「なんで、ノアさんはそんな平気なんですか」
犬のお座りみたいになってるジョーがノアを見上げる。汗すごいな。
「だって、みんなが持ち上げて俺持つところなくなっちゃって、手を添えてるだけだったからね」
「マジかよー!!」
ぶっ倒れてたエニがばねにはねられたかのように飛び起きる。
「いや、変わろうと思ったんだけどさ、鶏肉が一回下ろしちまったら、もう二度と持ち上げられない気がするって言って走るもんだから……ごめんなさい」
「今度、ノアが飯おごれよ」
「飲み放題も付きですよ」
「当然デザートもだからね」
「はい……今日はありがとうございました」
しばらくみんなノアの家で休んでからその日は解散となった。
エニはマジで怒ってた。「めっちゃ飯食ってやるからな」と言い残し帰っていった。
(そもそもドラゴンの見た目とか弱点何も知らないんだよなあ)
ノアは床に就きドラゴンについて考える。
(まあ、あいつらくそ強いし大丈夫か)
ギルドで感じた違和感も忘れ、水の中に沈んでいくように眠りについた。
布団の中がしんと冷えて、得体のしれない巨大な闇がじわじわと腹の底を這いずり回る。
そんな夜だった。
魔法について。
この世界の人たちに魔法の適性とかはありません。
なので、使おうと思えばどんな魔法も使うことができますがやはり向き不向きは存在します。
戦闘を普段しない人は今まで通り日常生活を少し楽にするくらいの魔法を幅広く覚えたり、逆に戦闘を生業にしてる人は一つか二つくらいの魔法を極めるという人が多いです。
使えぬ技術は技に非ず。
あれもこれも中途半端に覚え、どや顔で戦場に出た冒険者は帰ってこなかった。
まだ誰も魔法の神髄に気づいてるものはいない。
これから各々の魔法は出るけど、神髄に一番近い人はエニ。あとは竜。
普通に子供とかの方が魔法の神髄に近い。
昔からの言葉や教えに縛られ思考を放棄した人類の頭は固い。
ぶっちゃけ魔法研究所なんて金の無駄でしかない。どうせ誰も気づかない。
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