最終章エピローグ 日常は英雄譚より長く綴られる
これにて完結です。
短い間でしたが、本当にありがとうございました。
初めての長編でしたがいかがでしたでしょうか?
楽しんで読んでいただいたなら幸いです。
それでは、エピローグです。どうぞ
季節が廻るのを感じるのは、きっとこの花が咲くからだ。
時の流れを感じるのは、このアナウンスが聞こえるからだ。
『今年も始まるぞぉ!! 第二回!フリード最強決定戦! さっそく選手たちの入場だぁ!!』
「やべ! もう入場始まったぞ!!」
「走って走って~!」
決闘都市シュテルクスト。南側の草原。
一年前、人間が平和をつかんだ場所。
名を【フィクス草原】
誰よりも平和を望んだ男の名を冠した草原に複数の人影がポツリ。
鶏肉とエニが闘技場に向かって走り出す。
「今年はヒカリさんも出るの?」
「うん。みんなをボコれる魔法を覚えてきた」
強制的にオセロさせる魔法じゃないよね?
「え、それいいね」
心読むな。
心を読まれたノアが振り向き、そこにある小さな墓標を眺める男に声をかける。
「行くぞジョー」
「今行きます。これ……入場間に合いますかね」
「とにかく走ろう」
あ、誰かヒカリさんおんぶしてあげて!
早歩きくらいの速度しかでてないから!
ノアたちが走り出す少し前。
シュテルクスト中央闘技場。
『あの大事件からちょうど一年。大陸には再び魔物が蔓延るようになりました』
スルヨは語り始める。
『魔物との戦いに特化した冒険者や傭兵を養成し、大陸面積の約6割を占める【入らずの森】の調査など、彼らを派遣して魔物の巣窟や危険地域に侵入し、排除することが求められます』
スルヨはニコッと笑う。
『じゃあ、その戦う者の中で誰が一番強いか、みんな知りたいよなぁぁ!!』
寝ている猫が飛び上がり、壁の上で羽を休めている鳥たちが一斉に飛び立つほどの大歓声。
『今年も始まるぞぉ!! 第二回! フリード最強決定戦! さっそく選手たちの入場だぁ!!』
会場のテンションが雲を突き抜ける中、選手の入場が始まる。
『半年前に実装された冒険者パーティランキングはみんな当然知ってるよな!? 強さ、実績を鑑みてそのパーティのランキングが決まるシステムだ!』
上級、中級冒険者といったシステムはそのまま、あくまでパーティでのランキングが実装された。
冒険者のモチベーションアップの効果を期待してのことだ。
ランキング上位になるとギルドから特別な特典が得られる。
2つの人影が闘技場に歩を進める。
闘技場の中心に竜巻が巻き起こり、シュテルクスト全体が暗闇に包まれ、星が流れる。
『きたぞきたぞぉ! 暗くてよく見えないが、ソロ活動者だった[白疾風]ヴィント・ブリーズと謎の占い師[星詠み]ステラ・セイルズだぁ! 一年前結成された新しい冒険者パーティーにしてランキング第2位! 【星幽薫風】だぁ!』
「ヴィントさん! 今日の風も100点です!」
「――そりゃどうも」
黄色い歓声が巻き起こる。
髪を切ったヴィントがイケメン過ぎて、すれ違った男はみんな舌打ちし、すれ違った女は誰しもが振り返り、そのたびステラに微笑まれすれ違った者はそそくさと逃げ出すのだ。
夜が明け、続々と出場者が入場してくる。
『すごい歓声だぁ! さぁ続々来たぞぉ!』
やる気のなさそうなぼさぼさの髪を掻きむしっている男を先頭に団体が入場してくる。
その中に特徴的なマスクを身に着けた大男が。
『来た来たぁ! 新たなるギルドマスター。セリク・フォンとその職員たちだぁ! その中にはあの[宙舞の大熊]グレイブがいるぞぉ! 傭兵だった彼がギルドに入ったぞぉ!』
「俺、仕事しなきゃなんだけどな」
「嘘つくな。ギルマスになっても仕事してくれないって職員がよく愚痴ってるぞ」
「……俺、書類とか苦手なんだよ」
そこに同じ鎧を身に纏った団体が入場してきて、先頭に立つ女性が近づいてくる。
「【ガーデン】に戻ってくれば、書類見なくて済むぞ?働かないおっさん」
『今年も出場してきたぞぉ! 国王直属護衛騎士団【ガーデン】の騎士たちだぁ!』
「やだよ」
セリクは指でした瞼を引き下げる。
「こいつは早々に負かして、ギルドに送り返した方が良さそうだ」
「同意だ」
リーリエとグレイブは頷きあう。
『おおっと! 2つの冒険者パーティが同時に入場してきたぞぉ!』
坊主頭の青年と空色の髪をなびかせた女性が先頭に立ち悠々と入場してくる。
『冒険者パーティランキング第3位【喰魔】と第4位の【氷晶の蝶】の入場だぁ! 今日はどんな魔法が見られるんだぁ!?』
「負けないよ、女王様」
「こちらのセリフですわ。今回勝ってランキング3位に返り咲かせていただきます」
「譲らないよ。3位の特典はギルドの食堂割引だからね」
【喰魔】と【氷晶の蝶】は頻繁に順位が入れ替わる。
実力も実績もほぼ同じのこの2つのパーティは最大のライバル関係でもあり、共同作戦の時は誰よりも纏まったチームワークを見せる戦友なのだ。
『まだまだ来るぞぉ!』
中級冒険者を始め、傭兵集団やあの魔法研究所の所長のシーバー・ブランまでもが参加している。
『当然、最後はこいつらだよなぁ! 新たに1人メンバーに加え盤石の布陣でランキングトップを走り続ける冒険者パーティ【ノアと愉快な仲間たち】だぁ! 【入らずの森】の調査から直接参加してくれたぞぉ!』
音をどこかに持ち出されたような沈黙。
なんだなんだと会場中にどよめきが広がる。
闘技場中心に巨大な影が映る。
見上げるとそこには黒銀の竜が、そしてその背に4人の人影が。
『あいつらは派手に入場しないと死ぬのか?』
ヴィントが空を見上げ、その表情は笑っている。
「私たちももっと派手に入場すれば良かったかしら」
「どんだけ派手に入場してもあれには勝てないでしょ、女王様」
「まあ、それもそうですわね」
アイシーとカオエンは顔を見合わせ微笑みを交わす。
セリクはかつてのギルドマスターを思い出し、ふいに寂しさを感じる。
「おいみろ」
リーリエがグレイブの背中を小突く。
「どれをだ」
「セリクに決まってるだろう」
「決まってない」
「あれは寂しいふりをして、かまってほしいという顔だ。ほら行ってこい」
「あんたが行けよ」
「ギルド職員になったんだろ?いいから行ってこい」
「あんただって前同じ騎士団にいたんだろ?ほら行けよ」
「ねえ、なんなのお前ら」
セリクが呆れた顔でグレイブとリーリエを見ると二人は互いを指さし、こいつが悪いみたいな顔をする。そして、さらに喧嘩を始める。
「おいおいおい、どうせこれから試合するんだ。決着はそこで決めろよ」
『まさかの空からの入場だぁ! 今年も派手だな!』
黒銀の竜が着地すると、順番に背から降りていく。
『新しく加入した新メンバー[死神]ヒカリ・ベルウッドが来たぞぉ! その魔法は未知数! 試合が楽しみだぜぇ!』
「やばい……ちょっと酔った」
『次に降りてきたのは、フリードで最も熱い漢! [ファイアードミニオン]トリフィム・グランバトンだぁ! 雪かきにお困りなら彼を頼れぇ!』
「魔物討伐も頼れや」
『現代に現れた[森の魔女]エニ・クラシスも降りてきたぞ! みんな気をつけろよ! その魔女を怒らせたら国が亡ぶぞぉ!』
「間に合った~ギリギリセーフ!」
『そして、我らが大将ノアも来たぞぉ!』
……おい! 俺にもなんか一言くれや!
黒銀の竜から黒いモヤが湧きだす。
『受け継がれた黒銀の翼を纏い全裸おとk……失礼。[千の手]ジョー・ベルウッドも派手に登場だぁ!』
黒いモヤの中から全裸の男が現れ、それを隠すように他の出場者たちが群がってくる。
この観客の中でポロリはまずいって!!
『今大会の実況は俺スルヨ・ジキョウでお送りするぜ! 解説はもちろんこの人!』
『リート・モーテットです♪ お願いします!』
『さあ! 例のごとく国王陛下からの一言は無視して、予選を始めるから各自、事前に伝えられた闘技場へ移動してくれ!』
…………………………。
「おいおいこれって」
「ほんとにちゃんと抽選したんですかね?」
「こんなことあるんだね~」
「神様も一緒かよ」
「よろしくねみんな」
まあ、パーティメンバーが一緒までは100歩譲って許したけどさ、これは無くない?
「この組み合わせ……0点」
「これは私でも未来がどうなるか楽しみです」
「大集合だな~」
「カオエンさん余裕そうですわね」
「こんなに早く決着の場が用意されるなんてな」
「泣いて詫びるなら今だぞ」
「お前らいつまで喧嘩してるんだよ」
ここ第12闘技場には、一年前、最強を殺したドラゴンに立ち向かった12人の英雄が集結していた。
『これは波乱の展開間違いなしだ! じゃあリートさん試合開始の合図をお願いします!』
『はーい♪ じゃあ行きますよ?』
『試合開始♪』
観客の皆々様、これで物語は終わりではありません。
これから紡がれるは平和な日常。
どうか瞬きなしでお願いします。
【入らずの森】とか他の国とか、話の広げようはたくさんありましたが、それもこれも全部タイトルのせい。もう竜なんて出てこないの!!!!
気が向いたら、EXストーリー書くかもね。
質問等いつでも受け付けてます~。
これにて「最強を殺したドラゴンを倒したいと思います」完結です。
本当にありがとうございました!!
あなたは次の世界を見に行くんですか?
そうですか……ポロリがあるといいですね




