第二十六話 魔法とは想像の具現化である
最終局面です!
少し長いですがよろしくお願いします。
作者が自分で考えた歌がでます。
響き渡るは美しき歌。
それは反撃の号令にして、約束された勝鬨。
その透き通った歌声は戦う者に力を、勇気を与える。
12人の英傑を含む200数十名。
その者たちに大量の魔力が注ぎ込まれる。
栄光の凱歌まであと一歩。
♪きっと誰もが夢見ている
笑顔で満たされた明るい世界を
きっと僕は頼りない
それでも誰かの力になりたい
その疲れは誰のためか
その痛みは誰のためか
この世には剣を持てぬ者もいるから
僕が剣を持とう ♪
ノアたちはいっせいに走り出す。
シュテルクストに向かう魔物の大群をかき分け白金の竜のもとに。
白金の竜の角が帯電し始める。
次またあれが撃たれたら、壁の壊されたシュテルクストは……。
そんな思考を遮るように無慈悲の雷が放たれる。
♪たとえどんな苦しいことがあろうとも
剣が盾があなたを支えるだろう
振り返るな 前だけを見ろ ♪
魔法とは《想像の具現化》である。
[不動の盾]リーリエが放たれた雷の前に立つ。
「この程度防げずに何が護衛騎士だ! この程度防げずに何が王の盾だ!!」
其は魔法使い。想像より創造が生ず。
自信に満ちた時こそ、その力を体に宿す。
命と繁栄。安全と民。名誉と平和。敵の手が届かぬよう全てを護ろう。
詠唱は不要。あるのは護る意志だけ。
創造するは絶対の盾。
想像により形作られた巨大な盾は全てから全てを護る。
轟音と共に雷が盾にぶつかり――離散した。
雷を1人で防ぎきったリーリエは膝から崩れ落ちる。
崩れ落ちた場所は盾を構えた場所と変わらず。
――まさに不動。
白金の竜はさらに角に雷を溜め始める。
魔法とは《想像の具現化》である。
眼を開け、耳を澄ませよ。
研ぎ澄まされた精神が不可能を可能にする。
白金の竜は初めて目を見開く。
目の前にあるは自身の体躯と同じ大きさの――大剣。
「穿て」
創造するは断絶の剣。
想像により形作られた巨大な剣は全てを断ち切る。
どこからともなく現れた巨大な大剣に白金の竜の角がスパッと断ち切られる。
少しでも避けるのが遅ければ竜の首を断ち切っていたであろう。
声が聞こえた方を見ると、セリクがリーリエに肩を貸し立ち上がらせていた。
セリクがノアたちに叫ぶ。
「俺たちはここでリタイアだ! 振り返るな!」
魔力を使い切ったセリクとリーリエは親指を立たせてニカっと笑う。
角を切られた怒りか、自分の死を悟っての焦りか、白金の竜が黒銀の死体を貪り始める。
血を滴らせた口で雄たけび上げたと同時に、雷によりそれは生み出される。
――最強が。
「弄びすぎです……!!!」
怒りに身をまかせジョーが1人突っ走る。
♪たとえ熱でまわりが見えなくなっても
その微笑みが熱を冷ましてくれるだろう
目を逸らすな その現実から ♪
ジョーの進行を阻むようにアイシーとカオエンが前に立ちふさがる。
「冷静に。ここは私たちが請け負いますわ。あなたはやるべきことがあるはずです」
そう語るアイシーの横でカオエンはニコニコしている。
「っ! ……すみませんでした。ここはお願いします」
冷静になったジョーが頭を下げる。
アイシーは頷き、カオエンと共に雷で創られた最強へと向かう。
完全に自我を持っていると言っていいその竜は、黒いモヤを発生させ魔法による魔物の大群を生みだす。
「……もう何されても驚きませんわ」
「女王様……口開きっぱだよ」
「カオエンさんも口開いてますけど?」
「喰べる準備さ、今なら何でも大量に喰えそうだ……あの雷のドラゴンはお願いしても?」
「もちろんですわ。凡事徹底。参りましょう」
魔法とは《想像の具現化》である。
喰らう、喰らう、腹満ちるまで。
貪る、貪る、世に命のある限り。
浮かべるは微笑み。
リートの歌による魔力増強。
それがカオエンの際限ない食欲を顕現させる。
想像するは最強の姿。
創造するは竜の咢。
「万食謳歌!!」
迫りくる魔物の大群を取り囲むように魔物がいる地面に黒い円形の影が生まれる。
――影が開く。
この世のすべてを呑み込むと錯覚させられるような竜の頭が現れ、その大口で黒いモヤから生み出された魔物――そのすべてを呑み込んだ。
「ごちそうさまでした」
残るは雷で出来た最強。相対するは氷の女王。
魔法とは《想像の具現化》である。
想像するは最強の姿。
創造するは氷塊。
意思持たぬ氷塊に、一夜限りの命が宿る。
アイシーは叫ぶ。
これが私の最強だと。
「絶凍竜!!」
氷の最強と雷の最強。
交わることのない2つの咆哮が重なり、やがて片方が潰える。
原理はわからない。
ただ、現実として雷の竜が凍りつき砕けた。
持ちうる魔力、そのすべてを使い切った絶凍の一撃。
アイシーは気を失い、倒れそうになるところをカオエンが受け止め、こっちは大丈夫と言わんばかりにノアたちに微笑む。
♪君が僕を必要としてくれるのなら
いつまでも歌うよ
ずっと先まで ♪
白金の竜はようやく人間を脅威と見做したのか、その翼を広げ空に飛び立つ。
人間とは言葉によって進歩した獣、ゆえに言葉の通じないものには極めて無力。
竜の咆哮は鼓膜を震わせ、雷の襲撃は戦意を砕く。
自然の粛清を前にして、人は恐れおののくことしかできない。
しかし、言葉とは偉大である。
それは人に勇気を、希望を与える魔法の力。
人間の特権である。
♪きっと誰もが夢見ている
希望で満たされた明るい未来を
きっといつか気づくだろう
誰かが誰かの力になってる
その覚悟は誰のためか
その想いは誰のためか
この世には、立ち上がれぬ者もいるから
僕が勇気になろう ♪
空を飛ぶ白金の竜が雄たけびを上げると、世界を覆ってる暗雲から雷の雨が降る。
♪たとえ絶望が降り注いできても
風が星があなたを見守るだろう
風を背負い 星に願いを ♪
ステラがヴィントに視線を向けると、全てを察したヴィントは頷き、ステラをお姫様抱っこして空に舞う。
ノアたちも察する。
ここはヴィントとステラが道を開いてくれると。
魔法とは《想像の具現化》である。
其は風の使い手。
生み出す風の原動力は、どこまでも続く飽くなき向上心。
漲る自信は壁知らず、今宵の風は100点を超える。
想像するは最強の姿。
創造するは暴風。
「暴風域・乱気竜」
生み出されし、風の竜。
向かう先は白金の竜――ではない。
風よ。風よ。双眸覆う暗雲をふきとばせ。
臆病風を吹き飛ばす、熱烈なる激励の飛翔。
風の竜は空に垂直に突き進み、世界を覆う暗雲を晴らす。
闇夜の世界に光が差し込む。――星の光が。
魔法とは《想像の具現化》である。
其が秘めし果てなき力は、決意と共に輝きを放つ。
それは己ではなく、この世に住まうすべての人々のために。
未来を見据え、星に願う。
想像するは最強の姿。
創造するは平和への道標。
「本物の夜。本物の星。あなたの未来は見えました」
暗雲去りて、星の水差しから注がれる光の奔流。
「命乞いはお早めに、3回言えたら見逃してあげてもいいですよ?」
ヴィントに抱えられてるステラは白金の竜を指さし魔法を唱える。
「竜星群」
星の輝きを背に、光の竜の軍勢は白金の竜を地面に叩きつけた。
その姿を覆うように砂埃が巻き上がる。
その一撃、天災を超える。
その技を見たものは後に語る。
眠らせる魔法を使うのは慈悲である。
弱さゆえの“殺せない”ではなく、その強さゆえの“殺さない”だと。
白金の竜が地に伏し。悲鳴にも似た咆哮を上げる。
「あら、ヴィントさん。前髪切った方がかっこいいですよ?」
お姫様抱っこされてるステラは風で髪がなびき、素顔があらわになったヴィントをみながらニヤニヤする。
ヴィントはステラを睨む。
「その翡翠の瞳……遥か昔に存在した[森の魔女]の末裔ですよね……。魔女狩りなんて昔の話ですよ? なんで隠すんです?」
森の魔女の伝説は大陸全土に伝わる。
遥か昔、魔女狩りがあった事。今は絵本にもなり、ハッピーエンドでその伝説が語られている。
正確には森の魔女に子孫は存在しない。
だが稀に、森の魔女と同じ瞳を持つ子が生まれる。その子らを末裔と呼んだ。
時代の流れに逆らったとある国では、その瞳を持つ者は異端とされている。
ヴィントはその重い口を開く。
「俺はこの国の人間じゃない。魔法を拒絶した国ラトラードの生まれなんだ……」
ステラはまあ、そうだろうなと驚きもせずに納得し、そして諭すように言葉を紡ぐ。
「ヴィントさん……。ここラトラードじゃないですよ?」
――それに。
「[森の魔女]なら本物がいるじゃないですか」
ヴィントはそれもそうだなと地面を駆ける冒険者たちを目を細めながら眺める。
「笑う顔もいいですね」
「……うるさい」
「うわすげえ!! やったか!?」
うるさいと言えばこの漢。
砂埃が舞う中、バンダナ襟おっ立て男は嬉々として騒ぎ出す。
「トリさん! その言葉禁句です!」
「なんでだよ」
「そのセリフを言うと、敵がパワーアップしてくるんです! もう蘇生魔法みたいなもんですよ!」
「蘇生魔法なんてこの世にねーよ!」
「これで強くなって起き上がってきたらトリさんのせいですからね!!」
……この男たちに訂正。
「こんな状況なのに元気だねえ」
「こんな状況だからだろ?」
ノアとエニは、まるで子の喧嘩を見守る親のように頷きながら走っている。
すぐ後ろを走っている運動音痴の死神をおぶった傭兵の視線が痛い。
魔法とは《想像の具現化》である。
それは人間のモノだけに非ず。
砂埃の中、かつてないほどの咆哮が放たれる。
ジョーが鶏肉を睨みつける。
「これほんとに俺のせいか!?」
砂埃から現れる竜喰らう竜。
自身を襲った黒銀の竜を貪り喰った竜。
半身が黒銀となり風を纏い、もう半身が白金となり雷を纏った異形の竜となりて、顕現する。
黒銀を喰らえば、その体躯を。
最強を喰らえば、その魔法を。
異形の竜は形を変え、涎にまみれたその口は今も餌を探している。
「……だから禁句って言ったじゃないですか!」
「言うの遅いだろ!」
大いなるものは、己の行動に理由を持たない。
在りたいように在り続けることは、強者の証である。
「……弱点聞いたら教えてくれるかな?」
「試しに聞いて見たら?」
「おい! ドラゴンさんよぉ! ちょっとそれやりすぎだから弱点教えろよ!」
異形の竜は吼える。
雷が降り注ぎ、炎のブレスが吐き出され、岩の塊が降り注ぐ。
「……うん。教えてくれなかったわ!」
「避けて避けて!!」
鶏肉とエニがワタワタ駆け回る。
こいつらこんなんで英雄とか呼ばれてんの?みたいな目で見ないでグレイブ……。
おぶさってるヒカリはクツクツと笑っている。
異形の竜の雄たけびを聞いて、シュテルクストに向かっている魔物の大群が急に引き返し、ノアたちに迫りくる。
「行け大将」
「行ってノア君」
その声は同時だった。
鶏肉とエニは異形の竜に背を向け、魔物の大群と向き合う。
ノアたちは異形の竜を、鶏肉とエニは魔物の大群を互いに背を預け、立ち向かう。
そこに言葉など必要ない。
今まで積み上げてきた信頼が互いの背中を押す。
♪たとえ見据える方向が違くとも
お互いの背中を守れるだろう
その想いは 灯火となる
君が僕を必要としてくれるのなら
いつまでも歌うよ
ずっと先まで ♪
「勝てると思うか?」
「勝たなきゃ……漢でしょ?」
「ああ、そうだな……」
何度も挫けた。死んだと思った時もあった。
あの時も。あの時も。あの時も。
誰よりも惨めな気持ちになったのは俺だ。
誰よりも悔しい気持ちになったのは俺だ。
惚れた女に助けてもらってばっかりじゃ漢が廃るだろうがよ。
「かかってこいやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
魔法とは《想像の具現化》である。
戦えないと誰が決めた。
臆病だと誰が決めた。
想像するはただの男が漢になったあの日。
創造するは灼熱の劫火。
「ファイアー襟トカゲ!!!」
その叫びは異形の竜に駆ける者達にも聞こえ、あまりのネーミングセンスに全員が吹き出した。
変な技名だろうが、変な服を来てようが、お前が誰よりも強いのは知ってる。
ノア達は振り返ることなく走り続ける。
ヒカリはツボってる。
顕現するは地を這う巨大なトカゲ。
頸部に襟を纏うそのトカゲは迫りくる魔物たちを踏み潰し消し炭にした。
「かっこいい~。私も頑張んないと……」
エニはその漢をみてつぶやく。
魔法とは《想像の具現化》である。
遥か昔の[森の魔女]の記録にはこう綴られている。
魔女は木々の中に身を隠した。
そして木々は森の中に身を隠した。
身を隠すことができない森はどうしたか。
――魔女に仇名すものを踏み潰した。
想像するは原初の魔女。
創造するは森の化身。
「グロウアップ。森林竜!」
それはほぼ全身を生い茂る森に包まれ、木の幹を思わせるドラゴンの頭部が覗き、大樹の根のような四本の足でその巨大な体を支える。
その一歩一歩は重く、足が地面につくと同時に先の尖った根が地面から大量に突き出す。
2体の怪物が悪しきものの命を刈り取り続ける。
「ねえ! トリ君! 森が燃えるんだけど!」
「エニがもうちょいあっちで戦えよ!」
空を飛ぶヴィントはそれを見て驚愕する。
[森の魔女]の魔法――ではなく、こんな状況で喧嘩してる二人に。
♪誰もが夢見た世界を
目指すあなたは
誰もが夢見た未来を
願うあなたは
――何者ですか? ♪
異形の竜は自分が追い詰められている事にようやく気付く。
そして聞こえる死神の足音が。
異形の竜は巨大な岩の壁を生成する。
その大きさはシュテルクストの壁に匹敵する。
♪たとえどんな壁が立ちはだかっても
宙を舞い優雅に飛び越えてしまえ
忘れるな 君は独りじゃない ♪
「!? ……これ壊せるか!?」
「さすがにデカすぎます!」
「壊さなくていい……」
グレイブはその場にヒカリを下ろすと、ノアとジョーにそっと触れる。
「勝てよ英雄」
重力の向きが反対になり、空に向かって落下する。
ヒカリが叫ぶ。
「思い出してジョー君!! 初めて会った時のこと!!」
端的に伝えられた言葉を呑み込み二人の英雄は壁を超える。
タイミングよく解除された魔法によりノアとジョーは壁の上に立ち、異形の竜と対峙する。
♪纏えその身に目指した憧れを
はるか遠くからあなたを見ている
託された 想いを胸に
纏えその身に差し伸べられた手を
前世から繋がる優しき希望
思い出せ 君は主人公
君が選んだ道が正しくあるように
いつまでも願うよ
ずっと先まで ♪
作詞作曲:リート・モーテット(作者)
きっと誰もが夢見ている
笑顔で満たされた明るい世界を
きっと僕は頼りない
それでも誰かの力になりたい
その疲れは誰のためか
その痛みは誰のためか
この世には剣を持てぬ者もいるから
僕が剣を持とう
たとえどんな苦しいことがあろうとも
剣が盾があなたを支えるだろう
振り返るな 前だけを見ろ
たとえ熱でまわりが見えなくなっても
その微笑みが熱を冷ましてくれるだろう
目を逸らすな その現実から
君が僕を必要としてくれるのなら
いつまでも歌うよ
ずっと先まで
きっと誰もが夢見ている
希望で満たされた明るい未来を
きっといつか気づくだろう
誰かが誰かの力になってる
その覚悟は誰のためか
その想いは誰のためか
この世には、立ち上がれぬ者もいるから
僕が勇気になろう
たとえ絶望が降り注いできても
風が星があなたを見守るだろう
風を背負い 星に願いを
たとえ見据える方向が違くとも
お互いの背中を守れるだろう
その想いは 灯火となる
君が僕を必要としてくれるのなら
いつまでも歌うよ
ずっと先まで
誰もが夢見た世界を
目指すあなたは
誰もが夢見た未来を
願うあなたは
――何者ですか?
たとえどんな壁が立ちはだかっても
宙を舞い優雅に飛び越えてしまえ
忘れるな 君は独りじゃない
纏えその身に目指した憧れを
はるか遠くからあなたを見ている
託された 想いを胸に
纏えその身に差し伸べられた手を
前世から繋がる優しき希望
思い出せ 君は主人公
君が選んだ道が正しくあるように
いつまでも願うよ
ずっと先まで
結構がっつり歌つくった。
次回、最終話!!!!!!!!




