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第二十三話 終焉へ導く光の雨


 最近牛乳に凝ってる。


 更新


 □□□

 かつてない命の奔流。

 それによる特異な命の誕生。

 さあ、人間よ選べ。

 最後の地は此処か、それとも何処でもない場所か?


 どうです? 神様みたいでしょ?

 まあ、神様ですけどね。


 ほら見てください。

 あれが特異な魔物です。

 

 この先どうなるか一緒に見届けましょう。


『最後の魔物が倒され魔物の大群は全滅だぁ! フリードの冒険者たちがやってくれたぞぉ!』


 スルヨが叫ぶと、中央闘技場だけでなく、それを取り囲む12の闘技場からも歓声が上がる。

 その地面が揺れるような歓声を聞き、メチャ・イ・イヒト王も安堵の表情を浮かべる。



 日が落ち世界は闇に包まれる。

 南門付近はところどころ冒険者たちの魔法により照らされている。


 今回襲ってきた魔物たちが、かつてフィクスとドラゴンが生み出していた魔物と違うところは大きく2つ。


 1つはその強さ。

 人間がギリギリ対応できる強さに調整して生み出していた魔物に対して、今回の魔物たちはかなり弱い。

 この世界に生まれて一年しかたっていないのだ、まだ完全に成長しきっていないというのもあるだろう。


 もう1つは死体だ。


 魔法で生み出した魔物と違って、当然だが死体が残る。

 それもこの大群の死体が。


 むせかえるような血の匂い。

 焼けただれた皮膚や肉の匂い。

 足の踏み場もないような死体の山々。


「……終わったか。結構余裕だったな」


 その発言にジョーが食いつく。


「余裕だったのトリさんだけですよ……見てくださいよあれ」


 ジョーはすぐそこに倒れてるものを指さす。

 

「ほんとだな。ほらエニ、大将もぶっ倒れてないで帰るぞ」


 鶏肉は魔力切れを起こして倒れているノアとエニに声をかける。

 鶏肉が元気なのは言わずもがな、ジョーは一度出した千手観音がずっと残っていたためそこまで魔力を消費していない。


「この魔力おばけ!」


 エニがぎゃいぎゃい騒いでるのを他所に帰り支度を始める鶏肉。

 ジョーは魔物が来た【入らずの森】の方角をぼーっと眺める。


(ほんとにこれだけで終わりなんですかね?)


 その考えも一瞬、自分を呼ぶ声に思考を止められる。


「帰るぞジョー」

「今行きますノアさん」


 ジョーは帰り足のノア達を小走りで追いかける。

 ぬぐい切れない、一抹の不安を胸に。


 


「終わりましたわね……」

 

 アイシーはため息をつき、自分が凍らせた魔物をいまだ喰らい続けているカオエンをみてさらにため息が出る。

 カオエンから目を逸らしアイシーは自身のパーティメンバーに声をかける。


「お疲れさまでした。みなさん大きな怪我も無くなによりです。早く帰って治療してもらいましょう」

「「「はい!」」」


 ちらっと【喰魔】のメンバーの方を見るとみんなカオエンにドン引きしていた。

 魔法で出来た魔物とはわけが違う。

 魔物の死体を貪り、血まみれになった球体がフヨフヨ浮いている。

 口から血が滴り、ぐじゅぐじゅ、バキっと音をたてる。

 戦闘中は気にならなかったが、改めて見ると惨い魔法だなとアイシーは思った。

 



「はあ~、おっさんには結構辛い仕事だったな」


 セリクは地面にどっこいしょと座り、血まみれになった剣を眺める。


(これが本物の魔物か……強さはともかく、死体が厄介だな。残った死体や、この血の匂いはメンタルに来るな)


「皆ご苦労だった。少し休んだら戻るぞ」


 リーリエが団員たちに声をかけ、セリクに近づく。


「結構働いたんじゃないか?」

「これでもう仕事しないおっさんとは言わせねえよ」

「あんたが仕事したらただの髭面のおっさんだな」

「……働くのやめちゃうよ?」


 セリクは差し出されたリーリエの手を取り立ち上がり、死体の処理について考えてるギルド職員たちに声をかける。


「一旦帰ろうぜ」





「いたなら手伝えよ」


 壁の上、ステラの横に着地したヴィントがグレイブに詰め寄る。


「今は雇われの身なんでな……あんたならあれくらいの魔物余裕だろ」


「雇われ?」


 ヴィントはグレイブの横にいる少女に目をやる。


「あんたが雇い主か? なんたってこんな場所に」


「それは、私から説明しましょう」


 ステラが一歩前に出て、ヴィントにヒカリが話したことすべてを事細かに伝える。


 ヴィントは驚きもせず眉を顰める。

 前髪に隠れてその表情はステラ達にはわからないが。

 

「……それを信じろって?」

「警戒するに越したことはないでしょう?」

「それもそうだが……」


 簡単信じることができない突拍子のない話。

 ヴィントはしばらく思考し、頷く。


「わかった。他のやつらにもまだ魔物が襲ってくるかもしれないと伝えてくる」


 ヴィントは風を背負い飛び出す。


「お願いしますね」


 ――それにしても。


「星が見えない……」


 世界すべてを覆っているかのような暗雲。

 不気味な雲だ。まるで世界が何かから身を守ろうとしているような、あるいは――人間をここから出さないようにしているような。

 

 

 ヴィントから話を聞いた者達は、壁の内側に待機していた【慈愛の恩寵】に治療を受け、来るかもわからない更なる脅威に対応すべく休息をとっている。

 

 特にやることもない冒険者たちは、カオエンが死体を掃除してるのをあの魔法キモいな~と眺めている。

 

 もうすぐ日が昇ろうとする時間。

 

 その時、それは来た。


 空からまるで雨のように光が降り注ぐ。

 刹那、轟音が鳴り響く。


「なんだあれは!!!!!」


 冒険者の一人が大声を上げる。

 降り続ける雷は暗雲の中にいる巨大なそれの影を映し出す。

 

 雲の上からそれは降りてくる。

 翼をはためかせ、体に雷を纏いし白金色の――竜が。


「あれは……ドラゴン……!?」


 ノアはそれを見上げ声を漏らす。

 鶏肉たちは絶句し、かつて戦った竜の記憶が蘇る。



「あ、あんなの勝てるわけねえ」

「まだ死にたくねえ!俺は逃げるぞ」

「逃げるったってどこへ!?」


 中級の冒険者たちやギルド職員たちは続々とシュテルクストの強固な壁の中に走っていく。


 残ったのはノアたち英雄組。

 アイシーとカオエン。【ガーデン】のリーリエ、冒険者ギルドサブマスターのセリク。

 壁の上にはヴィントとステラ、グレイブとヒカリのたったの12人だ。


 それの咆哮は鼓膜を震わせる。


 それを前にして逃げ出してしまった者を咎めることなど誰にもできはしない。



「なんなんだあのでけえのは」


 ヴィントが壁の上から降りてきてノアに話しかける。

 

「……ドラゴンだよ」


「!? ……ってことは、あんたらなら倒せるのか?」


「……わからない。前に戦ったドラゴンと違いすぎる。大きさも何もかも」


 ――けど。


「ここで戦って死ぬか、諦めて死ぬしかないなら、死ぬ時まで戦うよ。それが冒険者でしょ?」


「そうか……そうだったな」


 ヴィントは白金の竜を向かい撃つため背に風を纏い飛翔する。


 しかし現実は残酷なのだ。

 さらなる絶望が地面を揺らすほどの足音と共に襲い掛かる。



「……まじか。まだいんのかよ」

「やっぱりあれで終わりなわけないですよね」

「もう疲れてるんだけど~」


 英雄達の額に汗がにじむ。

 しかし、その表情に絶望の色は無い。



 懺悔など後ででいい

 今はただ絶叫を

 

 先ほどまで祭りのようにはしゃいでいた国民達の様子が一変する。


 もう終わりだと泣き叫ぶ者。

 神頼みを始める者。

 国王に向かって罵声を浴びせる集団。

 最後の時間を楽しむかのように様々な行動を取る者。

 

 国王はフィクスに目を向ける。

 言葉はださない。

 しかし、国王のその目は確かに訴えていた。

 

 ――頼んだぞと。


 フィクスは頷き闘技場を後にする。



 白金の竜は雄たけびを上げる。

 壮烈な咆哮は空を揺るがし 聞くものに畏怖の念を抱かせる。


「おいおい……俺も逃げていいか?」

「せめて最後は仕事をしたおっさんとして死ね」

「死ぬこと前提かよ!?」


 ――まあ、あんたは死ぬなよ。


 セリクがそうつぶやくと、よっこらせと立ち上がる。

 リーリエの返答は頷き1つ。

 その表情は、覚悟は決まったと言っているようだった。

 


「カオエンさんはどちらに行きますか?」

「さすがにあれには届かない。あれと戦う人の邪魔をする魔物を喰べるよ」

「では、わたくしもそうしますわ」


 多くは語らない。

 

 アイシーもカオエンも上級冒険者だ。

 この国の人々の尊い希望を守るため命を燃やす覚悟はとっくにできている。




 

「……夜になりました。私も行ってきます」


 ――未来をつかみに。


 ステラは深く息を吐き、フードを被り天に叫ぶ。


 ヴィントさーん! 下に降ろしてくださーい!




「どうする依頼主さん」

「当然行きます」

「死ぬかもしれないぞ」

「死ぬことを考えて行動する人がどこにいるんですか」

「……まあいい、これも依頼の範囲内だ。地獄まで一緒に行くとしよう」


「死後の世界に天国も地獄も無いですけどね」

 

 空を舞う大熊に抱えられ、満を持して死神は地に降り立つ。


 あ、グレイブさんにおろしてもらえばよかった。

 ステラの声はヴィントに届かず、壁の上に取り残される。


「いいですよ! 普通に階段で降りますから!」


 一人で騒いでるステラの上空を何かが通り過ぎる。

 その余波でせっかく被ったフードが脱げ、髪がなびく。


 闇夜の中それは現れる。

 降り注ぐ雷に照らされるは黒銀の翼。

 

「な!? 二体目!? ――いや、あれは……そうですか」


 ステラはなびく髪を押さえながら目を見開くが、その体から黒いモヤが出てるのを見てすぐに察して、目を瞑る。


 ――お願いします。最強。



 黒銀の翼はノア達の目にも映る。


「ギルマス!?」

「やっと出張ったかよ」

「師匠。お願いします」

「やっちゃえ~!」


 人を捨て、鱗を。翼を得た黒銀の最強が白金の竜と相対する。



 決して交わらぬ、2つの咆哮。

 それは開戦の合図となった。


 まあ、敵としてドラゴンだすよねそりゃ。

 だってタイトルが……ねえ?

 やべ!ネタバレか!!


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