第二十一話 時代の分岐点
三章開幕だぁぁぁぁぁあぁぁぁあ!!!
ドラクエモンスターズたのちい
命は生まれた時から螺旋の中
儚き命は神のモノ
廻る廻る地獄の中であるかもわからない平和を望む
それはいったい何度目か
これはいったい何度目か
魔物っていなくなったんじゃないのか!!!
嘘ついてたってこと?
また、魔物のいる生活に戻っちまうのか?
メチャ・イ・イヒト王がシュテルクスト全体に現状を伝えると国民達が荒れに荒れる。
国民の反応は予想していた通りだが、何が起きているのかは誰も知る由が無いのだ。
かつて神だった者とその代行者を除いて。
ここシュテルクストは、かつてフリードとサ国との戦争時、国民の避難所にもなった堅牢な壁に囲まれた都市だ。
幸か不幸かこの場にはフリードの国民のそのほとんど集まっている 。
そして同時にフリードの最高戦力たちも集まっていると言ってもいい。
シュテルクスト南門前には総勢200数十人の今大会に参加した者がほとんど集まっている。
そして集まった者たちにメチャ・イ・イヒト王は厳粛な表情で告げる。
「勇敢な者達よ、我が国の護り手よ。今、ここシュテルクストに魔物の大群が迫っている。しかし、この国の未来をそんな魔物に委ねるわけにはいかない。敵は強大だが、君たちの団結と勇気こそが我が国の未来を切り開くカギだ。今この瞬間から、君たちの勇姿は後世に語り継がれる壮絶な物語の幕開けとなるだろう。私は今、君たちの中に熱き炎を感じる。その炎こそが我が国を導く灯火となるだろう。勇敢な者達よ、我が国の護り手よ我が国の民を! 我が国の誇りをどうか守ってくれ!」
国王は深々と頭を下げる。
「見えてきたぞ!」
その声はいったい誰のものか。集まった者たちはいっせいに散開し、各々戦闘態勢に入る。
それが国王への返事となる。
「俺、国王陛下あんなに近くで見たの初めてだわ」
鶏肉は暢気にしゃべっている。
これがノアたちの戦いのルーティンなのだ。
「国王陛下って頭下げるんですね。そんなイメージ無かったです」
「私、途中から話聞いてなかった~」
「俺らの中に炎を感じるって言ってた」
「え? トリ君だけじゃないのそれ」
「トリさんだけですよね」
「鶏肉に対してしゃべってんのかと思ったわ」
周りの視線が痛い。
こいつら魔物がすぐそこまで来てんのにふざけてんのかと目で訴えられてる。
これが、緊張をほぐすルーティンなのだからしょうがない。
「まさか、あの見えてるやつ全部魔物か?」
鶏肉はバンダナを締め直し、屈伸を始める。
言わずもがな襟はびんびんに立ってる。
戦ってる時絶対襟邪魔だと思うんだけどなあ。
「飛んでる魔物もいますね。飛んでる魔物なんて初めてですよね」
何故ドラゴンが空を飛ぶ魔物を生み出していなかったというと、あくまで人間の矛先を魔物に向けるという目的だったため、人間が対処しにくい魔物を出すことをフィクスが止めたのだ。
空を飛ぶ魔物がいたら、死者は今の何倍もいた事だろう。
「飛んでるやつ私パス~」
エニ……パスもくそも無いから、頑張ろうな。
エニはすごい嫌そうな顔をしているが、どうせエニならなんとかするだろと特に心配もしない英雄達。
「みんな気を抜かないで出来ることしっかりやっていこう」
「おう」
「はい」
「うん」
散開したといえ、ある程度守る場所は決まっている。
南門正面を上級冒険者のノアたち英雄組が前線に立ち、その後ろに中級冒険者たちが控えている。
南西に上級冒険者のアイシー率いる【氷晶の蝶】とこちらも上級冒険者のカオエン率いる【喰魔】が前線に立ち、その後ろにノアたちと同じく中級冒険者が控え、前線が取りこぼした魔物を仕留める役割を果たし、西門からの侵入を防ぐ手筈だ。
「もう、体は大丈夫ですの?」
アイシーは遠くに見える魔物から目を背けずに、隣に立つカオエンへ声をかける。
「【慈愛の恩寵】のおかげさまでね。まさか肺を凍らされるとは思わなかったよ。あんただってヴィントにやられた傷は大丈夫なの?」
「痕も残らず綺麗になりましたわ」
「それは良かった。じゃあお互いに負けた鬱憤をここで晴らそうか」
「試合ではなく相手は魔物だから本気を出してもいいんですのよ?カオエンさん」
「本気を出すのはお互い様でしょ女王様」
カオエンは振り向き自身のパーティメンバーを鼓舞する。
「一年ぶりの食事だ! しかも食べ放題! お前ら残すなよ!」
【喰魔】のメンバーは雄たけびを上げる。
こいつらならほんとに食いかねないなとアイシーは引き気味にそれを見る。
でも、味方を鼓舞するのは大事と思い、アイシーも自身のパーティメンバーに声をかける。
「戦闘……特に魔物との戦闘は久しぶりです。凡事徹底。参りましょう」
「はい!」
女性だけで構成された【氷晶の蝶】のメンバーもやる気十分だ。
女性にいいとこ見せようと【喰魔】のメンバーや後ろで控えてる中級冒険者たちのやる気も上限突破し雲を突き抜ける。
前髪を整えてるやつもいるが、アイシーの冷たい視線で凍り付いてしまった。
南東には国王直属護衛騎士団【ガーデン】と、セリクを先頭に冒険者ギルドの職員たちが前線に立っている。
「あんた陛下守らなくていいのかよ?」
セリクはへらへらとリーリエに声をかける。
顔は笑っているが、目は笑っていない。
「……護衛騎士として情けないが、私たちより強い奴が国王陛下を護衛してる」
リーリエは苦虫を噛み潰したような顔で、斧をクルクル回して遊んでいる。
「ああ、マスターが陛下についてんのか」
「……そうだ」
戦闘前なのに気分が落ちては普段の実力なんて出るわけがない。
ましてや、騎士団の団長ともあろう者がこの調子では、団員の気持ちも落ちるだろう。
それを察したセリクは先ほどまでのへらへらした感じとは打って変わり、まじめな声でリーリエに告げる。
「まあ、でもよ? よく考えてみろよ。ここであんたが魔物を食い止めたらよ、陛下に危険が及んでないんだから実質陛下を護衛したってことになるだろ? そして、この戦い終わったら陛下の傍で話し相手になってただけのマスターに飯でもおごらせようぜ」
セリクは高笑いを上げる。
それを見てつられてリーリエもふふっと笑う。
「ああ、そうだな。団長の私がこの調子ではいかんな。――聞いたか! 団員たちよ! ここに陛下はおらずとも、魔物を食い止めれば護ったも同義! 気を引き締めていくぞ!」
セリクはさすが団長様だなと感心して、自分の後ろにいるギルド職員たちをちらっと見ると、目を輝かせた職員たちが目に入る。
「いやいや、俺にああいうの求めるなよ」
セリクはぼさぼさの髪を掻きむしると一言だけ。
「誰も死ぬな」
それを聞いた職員たちは無言で頷く。
シュテルクスト南側の壁の上には、夜のローブを着た女性と、前髪の隙間から翡翠の瞳を覗かせ魔物を凝視する男が。
「これが、あんたが言ってた先の未来の災厄か?」
「ええ、占い当たってしまいましたね」
「あんたはこれからどうするんだ?」
「私の魔法は、夜限定ですからね。ここで未来の行く末を見てようかと」
ステラはフードを脱ぎ、日が傾き終末のような夕陽を見つめる。
「どうせすぐに日が沈む」
ヴィントが何を言いたいのかを察するとステラは微笑みながら答える。
「その時はもちろん手伝いますよ――ほら、ギルドマスターは陛下の護衛をしてるので今の段階だと空飛べるのヴィントさんだけなんですから、飛んでる魔物お願いしますよ」
「いや、もう一人いる」
「へ?」
「どこで何してるのかな[宙舞の大熊]は」
ヴィントは背に翼を模した風を背負い空に浮く。
本日呼べた風は勢い良し、鋭さ良し、素直な風だ。
風よどうか勝利を運びたまえ。
「――ヴィントさんってそういうこと言うんですね」
「気にするな……独り言だ」
「もしもし傭兵の大熊さん」
南門に向かおうとするグレイブにとある少女が話しかける。
グレイブが無言で振り返る。
「ちょっと私に雇われない?」
グレイブは目を細め無視して去ろうとするが、興味深い少女の話を聞き、2.3やり取りを交わすとグレイブは少女と主に歩き出す。
ここは時代の分岐点。
始まる。今を生きる命達の戦い。
これは長い螺旋のその一部分である。
国王めっちゃしゃべるじゃん……
最終章は10話前後の予定。




